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SUS304の特性とは?設計上の考慮点や他のステンレス材との比較も紹介

2026/08/30

SUS304は、耐食性と加工性のバランスが良く、入手性も高いため、機械部品の材質として広く使われています。

とはいえ、SUS304Lとの違いや、SUS316・SUS430といった他のステンレス材との使い分け、加工や設計上の注意点まで理解している方は意外と多くありません。本記事では、SUS304の基本的な成分・特性から、設計時に押さえておきたい選定ポイント、加工上の注意点までを網羅的に解説します。

SUS304の基本概要

SUS304とは

SUS304は、JIS(日本産業規格)に規定されているステンレス鋼の一種で、正式にはJIS G 4303(鋼棒)やJIS G 4304/4305(鋼板)などの規格の中で定義されています。ステンレス鋼は金属組織の違いによって大きく3系統に分類され、SUS304はそのうち「オーステナイト系」の代表的な鋼種です。

系統 主な鋼種 特徴
マルテンサイト系 SUS410、SUS403、SUS630 など 焼入れで硬化できる。刃物・軸類に使用
オーステナイト系 SUS304、SUS316 など 耐食性・加工性・溶接性のバランスが良い。非磁性
フェライト系 SUS430 など ニッケルを含まず安価。磁性がある

SUS304は「18-8(じゅうはち・はち)ステンレス」という通称でも知られています。これはクロム(Cr)を18%前後、ニッケル(Ni)を8%前後含むことに由来する呼び方です。

ステンレスの語源はstainlessであり、錆びにくい理由は鉄を主成分としてクロム(Cr)を10.5%以上含むためです。クロムが鉄より先に酸化して不動態被膜と呼ばれる膜を表面に形成します。この膜が表面を守るため、高い耐腐食性を実現しているのです。

▼ステンレス鋼(SUS)について詳しく知りたい方はこちらから
https://jp.meviy.misumi-ec.com/info/ja/howto/15166/

SUS304の化学成分

種類の記号 C Si Mn P S Ni Cr Mo Cu N
SUS304 0.08以下 1.00以下 2.00以下 0.045以下 0.030以下 8.00~10.50 18.00~20.00
SUS304L 0.030以下 1.00以下 2.00以下 0.045以下 0.030以下 9.00~13.00 18.00~20.00

単位%

オーステナイト系ステンレスの特徴

オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304、SUS316など)は、耐食性に優れ、基本的に非磁性で、加工性・溶接性が良好な点が特徴です。ニッケルを含むことで組織が安定し、低温から高温まで靭性を保ちやすく、極低温環境でも脆性破壊が起こりにくい性質を持ちます。一方で、切削や塑性加工では加工硬化が起こりやすく、加工条件や工具選定には注意が必要です。

フェライト系やマルテンサイト系ステンレスでも加工による硬化は生じますが、オーステナイト系ほど顕著ではありません。

SUS304の特徴

SUS304の特性

SUS304の代表的な物性値を以下にまとめました。

物性 単位
比重 7.93
熱膨張係数 ×10⁻⁶/K 17.3
熱伝導率 W/m・K 16.7
導電率 106 S/m 1.4
縦弾性係数

(ヤング率)

GPa 193
硬度(ビッカース硬さ) HV 200
破壊靭性 MPa・m1/2 350
磁性 原則非磁性

SUS304のメリット

優れた耐食性

クロム(Cr)の作用で表面に緻密な不動態被膜が形成されるため錆びにくく、日常環境での耐食性が高い材料です。淡水や食品、一般的な薬液環境で幅広く使用できます。

広範な温度域で使用可能

高温でも強度・靭性を保ちやすく、700℃から800℃までの高温でも使用可能です。同時にオーステナイト系特有の高靭性により極低温でも脆性破壊しにくく、-196℃前後のクライオ技術分野でも使用実績があります。このため、真空容器から高温機器まで温度条件を問わず幅広い用途に適しています。

加工・溶接がしやすい

延性・靭性が高く、曲げ加工や深絞り加工といった冷間成形性に優れています。また溶接性も非常に良好で、余熱を必要とせず、一般的な溶接手法で接合できます。複雑形状部品や大型構造物にも適用しやすい材料です。

食品・厨房用途に最適

耐食性が高く衛生的で、食品・厨房設備、食品加工装置などで長年の実績があります。表面仕上げ次第で光沢のある美観も得られ、清掃もしやすいため食品分野で安心して使える標準素材です。

このように、SUS304は総合的に見て信頼性の高い汎用ステンレス材と言えます。設計時にはその特性を正しく理解し、使用環境に応じた適切なグレード選定を行うことが重要です。

SUS304のデメリット

一部の特性に絞って考えると他のステンレス材にメリットがある場合もあります。たとえば、海水など、より条件の悪い環境には同じオーステナイト系のSUS316の方が向いています。これは、SUS316にはモリブデン(Mo)が添加されており、塩化物イオンによる孔食(点腐食)やすきま腐食に対する耐性がSUS304より高いためです。沿岸部設備、屋外設置部品、洗浄工程を伴う装置、半導体・電子部品製造プロセスなど、腐食リスクが高い用途ではSUS304よりSUS316が適していると判断されることが多くなります。

また、価格はフェライト系のSUS430の方が安価です。

▼ステンレスSUS316について詳しく知りたい方はこちらから
https://jp.meviy.misumi-ec.com/info/ja/howto/33948/

SUS304には用途に応じて代替候補となる材質があるだけでなく、同じ304系でも特性が少し異なる派生材が存在します。

SUS304とSUS304Lの違い

違いは炭素量

SUS304とSUS304Lの違いは、炭素(C)の含有量です。SUS304は炭素0.08%以下であるのに対し、SUS304Lは0.030%以下に抑えられています。「L」は「Low Carbon(低炭素)」の意味です。

この炭素量の差は、主に次の2点に影響します。

  • 高温での使用限界温度
  • 鋭敏化への強さ

鋭敏化とは

鋭敏化とは、結晶粒界(結晶と結晶の境目)に存在する炭素がクロムと結合して炭化物を作り、その周囲のクロム濃度が局所的に低下することで、耐食性が急激に落ちてしまう現象です。溶接や高温での使用によって、鋼材がおおよそ500〜800℃程度の温度域に長くさらされると発生しやすくなるとされています。

鋭敏化には炭素が反応相手として必要になるため、炭素量の少ないSUS304Lは、SUS304に比べて鋭敏化が起こりにくく、溶接後熱処理(固溶化熱処理)を行わなくても耐粒界腐食性を確保しやすいという利点があります。そのため、溶接後に十分な熱処理ができない配管・容器などの部品では、SUS304LがSUS304の代わりに選ばれることがあります。

高温での使用限界

炭素量が多いほど高温側での強度を保ちやすい傾向があり、一般に、SUS304の方がSUS304Lよりも高温での使用限界温度が高いとされています。ただし、具体的な上限温度は採用する規格(圧力容器規格など)や設計基準によって扱いが異なるため、高温用途で使用する場合は該当する規格の許容応力表を確認した上で採否を判断することが重要です。

どちらを選ぶべきか

一般的な機械部品や治具など、常温付近で使う分にはSUS304で十分な性能が得られるケースが多く、価格・入手性の面でもSUS304が扱いやすい材料です。一方、次のような場合はSUS304Lの採用を検討する価値があります。

  • 溶接後に固溶化熱処理を行うのが難しい構造・工程である
  • 化学薬品やプロセス配管など、粒界腐食のリスクが高い環境で使う
  • 溶接部を含む部品全体で高い耐食性を長期間維持したい

SUS304と他のステンレス材との違い

SUS304単体の特性を理解したら、他の代表的なステンレス材との違いも押さえておくと材料選定がスムーズになります。

鋼種 系統 Ni Cr・その他 特徴
SUS304 オーステナイト系 8.00~10.50 Cr 18.00~20.00 汎用的でバランスが良い標準材
SUS304L オーステナイト系 9.00~13.00 Cr 18.00~20.00 低炭素で鋭敏化しにくい
SUS316 オーステナイト系 10.00~14.00 Cr 16.00~18.00、Mo 2.00~3.00 モリブデン添加で耐孔食性がさらに高い
SUS430 フェライト系 含まず Cr 16.00~18.00 ニッケルを含まず安価。磁性あり
SUS303 オーステナイト系 8.00~10.00 Cr 17.00~19.00、S多め 硫黄を多く含み快削性に優れる(耐食性はやや劣る)

※各鋼種の成分値はJIS規格を基にした概略値です。用途に応じた最終的な材質選定は、必ず最新の規格値・材料証明書で確認してください。

SUS304とSUS316の比較

どちらもオーステナイト系で見た目や基本特性は似ていますが、SUS316はモリブデンの添加により塩化物イオンへの耐性が高く、沿岸部の設備や洗浄工程を伴う装置、化学薬品を扱うプロセス機器など、より厳しい腐食環境に向いています。その分、SUS304よりも価格は高くなる傾向があります。

SUS304とSUS430の比較

SUS430はニッケルを含まないフェライト系ステンレスで、磁性を持つ点がSUS304との大きな違いです。耐食性・耐熱性はSUS304に一歩譲りますが、価格が安く、意匠部品や磁石を使う機構部品などで代替材として選ばれることがあります。磁石に付くかどうかは、現場で材質を簡易的に見分ける際の目安にもなります(ただし、SUS304も冷間加工により弱い磁性を帯びる場合があるため、判別の際は注意が必要です)。

SUS304とSUS303の比較

SUS303はSUS304に硫黄(S)を多く添加し、被削性(切削のしやすさ)を高めた鋼種です。自動旋盤で大量生産する小物部品などに向いていますが、硫化物の介在により耐食性・耐溶接性はSUS304よりも劣ります。溶接を伴う部品や高い耐食性が必要な用途にはあまり向いていません。

SUS304の加工法と使用例

SUS304は材料特性の高さが特徴ですが、それぞれの加工については注意すべきポイントがあります。

溶接

SUS304は鉄を含む材料なので溶接可能です。ただし、溶接時に使用する材料(溶接棒や溶接ワイヤ)について注意が必要です。SUS304の溶接では、母材名と同じ「304」という呼び方の溶加材は用いられず、規格上は「308系」の溶接材料が一般的に使用されます。

具体的には、アーク溶接棒にはNC-38、溶接ワイヤにはSW-308、TIG棒にはTG-S308と、38あるいは308と数字がついたものを使用します(いずれも神戸製鋼所の製品型番)。たとえばSUS316では、36あるいは316の数字がついたものを使用しますが、SUS304では、34あるいは304といった名称の溶加材は存在せず、308系が対応材料となります。

溶接を施したSUS304は各種厨房設備や家庭用シンク、ガス容器(ガスボンベ)など耐食性と衛生性が求められる用途に広く使用されています。

これは、SUS304が溶接後も不動態被膜による耐食性を維持しやすく、水分や食品に接する環境でも錆びにくいことに加え、表面を平滑に仕上げやすく、汚れや細菌が付着しにくいという特性を持つためです。

また、溶接性が良好で継ぎ目の少ない構造を実現しやすいことから、液体やガス漏れリスクを低減できる点も、これらの用途で採用される理由の一つです。

溶接した面は、元の状態ほどきれいではありません。そのため、一定方向にヘアラインと呼ばれる髪の毛のような細い線がついた表面処理を行います。ちなみにヘアライン加工を施したSUS304のことを「SUS304-HL」(HLとはヘアラインのこと)と表記します。

▼SUS304-HL(ヘアライン材)について詳しく知りたい方はこちらから
https://jp.meviy.misumi-ec.com/info/ja/howto/materials/28600/

切削

切削加工については、SUS304は硬く粘り気(靭性)があるため、切削性はあまり良くありません。しかし、フライス盤やマシニングセンタによる加工は可能です。ただし、オーステナイト系ステンレスの特徴である加工硬化に注意が必要です。

切削加工されたSUS304は、生産設備の複雑な形状をした部品や精密な加工が必要なベースプレートなどに使用されます。

表面処理

ステンレス材の表面処理にはさまざまなものがありますが、SUS304の代表的なものとして次の三つが挙げられます。

SUS304-2B

表面が処理されていない状態のため、生産設備のステーなど意匠性が必要ない部品に使用します。

SUS304-HL

ヘアライン加工されて多少の光沢があるため、生産設備のアウターパネルや厨房設備などに使用されます。

SUS304 #400

片面をバフ研磨で鏡面に仕上げて非常に意匠性を高くしてあるため、建築材料や高級シンクなどに使用されます。

SUS304の設計上の考慮点

SUS304を用いて設計する場合、適切な材料選定やコスト効率、そして環境への配慮に気を付ける必要があります。

材料選定

SUS304は特性のバランスの良い材料ですが、SUS316に比べて耐食性が劣り、また硬度は200HV程度と、焼入れにより600HV 以上まで硬化可能なマルテンサイト系ステンレス材に比べると低めです。そのため、設計でステンレス材を使用する場合は、使用環境において何を優先するのかをよく考える必要があります。

コスト効率

SUS304は耐久性が高いため、長期間使用でき、コスト効率が高い傾向にあります。ただ、使用環境によっては塗装を施したSS400でも耐えられる場合もあります。SUS304を使用するとコスト効率が高くなりますが、コストを抑える必要がある場合はSUS304以外の材料でも使用できるか検討しても良いかもしれません。

環境への配慮

金属材料は一般的にリサイクル性に優れており、ステンレス材も例外ではありません。SUS304は長期使用に耐える材料ですが、装置の寿命や生産ラインの仕様変更により廃棄されることもあります。このような場合でも、リサイクル性の高いSUS304を使用することで環境負荷の低減に貢献できます。

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加工事例 

 

写真 
サービス名  板金加工  切削丸物 
材質  SUS304(2B)片面保護シート付  SUS304 
サイズ  W50×D50×H50  Ø80×L40 
板厚  3.0mm   
出荷日  4日目~  8日目~ 
参考価格  2,810  13,487 

※表中は20262月時点の情報 

 

まとめ

SUS304とは、ステンレス鋼の中で最も広く使用されているオーステナイト系材料で、耐食性・加工性・溶接性のバランスに優れた汎用的な素材です。クロムによる不動態被膜により錆びにくく、日常環境や食品・薬液用途で安定した耐食性を示します。また、広い温度域で強度と靭性を維持でき、高温機器から極低温設備まで幅広く使用できます。代表的な用途としては、食品設備、厨房機器、真空容器、配管部品、フランジ、ブラケット、治具類などが挙げられ、設計現場で最初に検討される標準ステンレス材として信頼されています。

しかし、耐腐食性や硬度、切削性など局所的な特性だけを考えるとSUS304以外のステンレス材の方が優れている場合もあります。

装置の設計に求められていることや、使用環境で求められていることを整理し、適切なステンレス材を使用するようにしましょう。

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