設計者の方からの“ものづくり”への熱い想いに、板金加工による部品製作で応えているA社様。受注から出荷までに社内で発生する「課題」を、「デジタル化」によって改善を推進している様子をお伺いしました。
過去・現在・未来が「見える」現場の一部を、下の工程に沿ってご紹介します。
【デジタル化が進んだA社様の社内。機械の稼働状況や、加工の進捗状況が常に「見える」様子】
※1 板金を抜く(切断)加工。外形形状や穴の切断を行う工程のこと
目次
【受注】“過去”の対応内容も簡単に「見える」!
前回と同じ加工内容で注文したのに、仕上がりや価格に違いがあった。統一してほしい…
加工屋さんの課題と解決方法
- 過去の加工記録を詳細まで全て残していないから、前回の仕上がりがわからない…
- 詳細を確認するにはかなり時間がかかる…でも設計者さんとの打ち合わせや問い合わせ対応を、スムーズに行いたい…
全てシステムへ登録・蓄積し、データをデジタル化
過去の注文内容や加工などの詳細な対応内容を、システムへ登録・蓄積する
安定したサービス品質・価格の提供、確認する「時間」の短縮を実現
これまで人の加工技術によって差があった加工作業も、登録されている「前回の加工作業内容など」を確認することで、加工技術が異なっている人でも対応ができる状態を実現。
さらに繁忙期に左右される価格変動を解消、常に適正価格の提示を可能に。
またその登録された情報を営業担当も簡単に照会できるため、設計者さんとの打ち合わせもスムーズになり、ものづくり現場の改善に繋がりました。
ここまで登録している!
製作にかかる各工程の加工機、加工データなど様々な情報が登録されていますが、作業担当者や加工時間までも登録しており、特に加工時間の前回実績は、正確な納期管理に繋がっているそうです。
また、これらの様々な情報蓄積は、不具合発生時のトレーサビリティの確保(追跡可能な状態)にもなっているそうです。
【加工準備】”現在”のネスティング(※2)状況が「見える」!
※2 規定サイズの板金素材から、より多くの板金部品の展開形状を切り取れるようにレイアウト検討すること
製作部品のコストを削減したい。
同じ部品でも、注文タイミングで価格変動があるのは困る…
加工屋さんの課題と解決方法
- その時の注文状況でネスティングするから、材料に無駄が出た場合は前回よりも価格を上げざる負えない…だから、無駄なくネスティングして歩留まりを向上させたい…
- ネスティング作業も注文部品の各展開形状を人が確認し、人の頭で考えながら配置するには時間がかかってしまう…
3D CADデータと自動ネスティングソフトの活用
3D CADデータから展開図を作成、板材の切り取りパターンを自動で配置する
材料ロスを減少、考える「時間」の短縮を実現
ソフトによる自動ネスティングと、人による最終チェックを組み合わせることで、より無駄のない配置を可能に。
歩留まりを向上させ、お客様へ適正価格の提示を実現しました。
展開図形の配置状況が
画面で「見える」
こんな作業も自動化している!
全て手動で行っていた「データの取り込み作業」さえも、今はRPA(Robotic Process Automation)にて自動で対応。
決まった作業の自動化を行うことで、ものづくりの業務コスト削減や生産性向上に繋がったそうです。
【ブランク加工後の仕分け】”現在”の注文データ照合結果が「見える」!
部品量が多いと、仕分け作業を間違ったり時間がかりそう…どのように対応しているの?
加工屋さんの課題と解決方法
ブランク加工後は似た形状の部品が多いため、人の目で仕分けするのは時間がかかってしまうし、間違いの発生リスクが高い…
製品識別装置の活用
装置で製品の部品形状と、注文データを自動照合する
間違いの防止、迷う「時間」の短縮を実現
装置で部品識別を行うことで、該当する注文データの自動照合が容易に。
装置からの提示情報を踏まえた上で、人が仕分けを行うため、間違いの防止にも繋がっています。
特にとても似ている形状の場合は、複数の注文データ候補が自動で提示され、さらに音声でも注意喚起の案内が流れるためより注意して仕分けを行えるようになりました。
照合した注文データが
画面で「見える」
アナログな改善も行っている!
部品と注文データの自動照合後、注文伝票が印刷されますがここにもアナログな工夫が。
印刷機から出力される注文伝票の用紙には、仕分けルールにのっとった色が印刷されています。文字から色に変わったことで人の視覚による仕分けがしやすくなり、その結果さらなる時間短縮を実現、納期短縮に繋げているそうです。
【曲げ加工】”未来”の加工手順のシュミレーションが「見える」!
依頼した加工の仕上がりが、時々異なる…いつも一緒にならない理由が知りたい…
加工屋さんの課題と解決方法
- 加工技術が人によって異なるため、加工の仕上がりが変わってしまうことがある…誰が加工を行っても、短時間で高い品質を維持させたい…
- また人によっては、加工順序を考える、金型を選ぶなど、段取りに時間がかかってしまうことや、加工ミスが起こってしまうことも…材料ロスにもつながるので避けたい…
最新加工機の活用
加工機が加工手順を提示、金型を自動でセッティング
高い品質の維持、考え、迷う「時間」の短縮を実現
加工機で事前に加工シミュレーションが可能になり、担当者の加工技術に関わらず、高い加工品質の提供が可能に。
さらに最適な加工手順も提示されるため、段取り時間の削減も実現し、材料ロスに繋がりやすいヒューマンエラーの防止にもなっています。
曲げの順番や干渉具合が
事前に「見える」
デジタルで時間の有効活用も出来ている!
最新加工機の活用によって、加工未経験の人でも約1ヶ月で基本的な加工が可能に。
その分、加工経験がある人の時間を難しい加工作業へ注ぐことができ、限りある時間を有効活用できているそうです。
【出荷前検査】”現在”の立体形状が簡単に「見える」!
一つずつ部品を検査する作業は大変そう…どのように対応しているの?
加工屋さんの課題と解決方法
- 完成した部品の加工漏れが無いか、最終検査をする時間や加工漏れの見逃しを減らしたい…
- 立体形状の完成品と平面の2D図面を比べる目視検査には、時間がかかってしまう…
3D CADデータを活用
3D CADデータによる立体形状と完成品を簡単に照合する
検品の精度向上、考え、迷う「時間」の短縮を実現
完成品の目視検査を行う際、3D CADデータを利用することで立体形状を360度から確認することができるようになり、検査がスムーズになりました。製品不備を防ぎ、検査精度の向上に繋げています。
タブレット端末で
立体形状が「見える」
作業時間を1秒でも短縮することに挑んでいる!
出荷前検査作業だけでなく各工程で発生する「作業時間」は、開始から完了までをスマートフォンなどで測定。作業時間の差が「見える」ことで改善可能なポイントが可視化でき、それを業務改善の材料としてさらなる時間短縮に繋げているそうです。
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