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「FC200」とは? 鋳鉄材FC200の特性・用途・加工上の注意点を徹底解説

FC200は、機械設計や部品調達の現場で広く使われる鋳鉄材料の一種です。エンジンブロック、ブレーキディスク、内燃エンジン・油圧機器の部品、工作機械のベッドなど、身近な産業製品にも用いられており、特性の理解は材料選定に欠かせません。

本記事ではFC200の基本から、特性やメリット・デメリットについて解説します。また、代表的な用途や加工上の注意点と設計のコツにも触れるので、短時間でFC200のポイントを把握し、材料選定に活用したい方は最後までご覧ください。

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FC200とは?

FC200とは、日本産業規格(JIS G5501)で規定された「ねずみ鋳鉄(普通鋳鉄)」の一種で、引張強さが200MPa以上の鋳鉄材料を指します。名称の「FC」はねずみ鋳鉄を表し、後ろに続く「200」は最低引張強さを示しています。JISでは引張強さの違いでFC100からFC350まで6種類のねずみ鋳鉄品が分類されており、FC200はその中間に位置するグレードです。

ねずみ鋳鉄(灰色鋳鉄)と呼ばれるのは、破断面が灰色を帯びているからです。組織中に含まれる片状黒鉛(フレーク状の黒鉛)が光を吸収し灰色に見えるため、黒鉛の存在がFC200の性質に影響を与えています。FC200は炭素含有量が高い鋳鉄で、炭素が約2.5〜4.0%、ケイ素が約0.8〜3.0%程度含有されるのが一般的です。

エンジン部品や工作機械の土台など振動・摩耗が関わる部位によく利用される一方で、塑性加工(鍛造や曲げ加工)や溶接には不向きであるため、加工に万能な材料ではありません。

FC200とFC250の違い

FC200とFC250はいずれもJIS G5501で規定されたねずみ鋳鉄です。両者の主な違いは以下のとおりです。

項目 FC200 FC250
引張強さ 200MPa以上 250MPa以上
硬さ(HB) 目安:〜223 目安:〜241

両材質とも黒鉛を多く含むため靭性や延性は低く、衝撃や引張に弱い脆性材である点は変わりません。加工面ではどちらも切削加工性は良好ですが、溶接や塑性加工には不向きで、設計上は「鋳造で形を作り、切削で仕上げる」ことが前提となります。

用途としては、エンジンやブレーキディスク、機械ベースといった摩耗や振動を伴う部位に広く利用され、特に高負荷条件ではFC250が選ばれます。コスト差はほぼないため、必要な強度・硬度を満たすかどうかが選定基準です。

FC200とSS400の違い

SS400はJIS G3101の一般構造用鋼(熱間圧延材)で、ねずみ鋳鉄であるFC200とは、材質系と製造法が根本的に異なります。主な違いは以下のとおりです。

項目 FC200 SS400
規格・製造法 JIS G5501/鋳造 JIS G3101/熱間圧延
組織・特徴 片状黒鉛を含む(振動減衰◎) フェライト/パーライト主体(均質で靭性◎)
引張強さ 200MPa以上 400〜510MPa
硬さ(HB) 目安:〜223 130〜160
加工性 切削:良好

溶接・塑性:不可〜困難

切削:可

溶接・塑性:容易

振動・摩耗 減衰性・耐摩耗:高い 減衰性:低め

機械的性質はSS400が優位である一方で、硬さと機能特性はFC200の方が優れています。また、加工はFC200が切削良好であるものの溶接・曲げ・成形は基本不適です。SS400は溶接・曲げ・成形が容易で加工自由度が高いのが特徴です。

用途はFC200がエンジンブロック、ブレーキディスク、機械ベースなど摩耗・振動用途、SS400がフレーム、梁、製缶、配管など溶接構造に広く使われます。

選定の基本は、複雑形状を一体鋳造し耐摩耗・減衰を重視するならFC200、溶接組立や試作・小ロットで汎用性と入手性を重視するならSS400です。

FC200の特性

ここからは、FC200の機械的な性質と物理的・化学的な性質に分けて見ていきましょう。

FC200の機械的特性

FC200の主な機械的特性の代表値は以下のとおりです。

項目 単位
引張強さ MPa 200MPa以上
硬さ HB 〜223

一般的な構造用炭素鋼と比べると強度は半分程度ですが、硬さはむしろ高い水準です。硬い分だけ脆さも併せ持ち、衝撃荷重に弱い点に注意が必要です。

なお、FC200の圧縮強度は引張強さより高く、圧縮荷重には比較的強いという特性もあります。総じてFC200は機械的には圧縮荷重や据え付け用途に向き、引張や衝撃を受ける用途には不向きと言えるでしょう。

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FC200の物理的・化学的特性

次に、FC200の主な物理的特性を示します。

項目 単位
比重 7.2
ヤング率 GPa 100
線膨張係数 ×10–6/℃ 10.0〜11.0
熱伝導率 W/m·K 43
比熱 J/kg・℃ 530

比重は7.2で鋼よりやや低くなっているため、同形状でも鋼より若干軽量化が可能です。一方、比熱は鋼より1割ほど高く、熱伝導率も比較的良好です。そのため、FC200製の部品は熱がこもりにくく高温になりにくい利点があり、エンジンやブレーキ部品など発熱する用途でも温度上昇を抑える効果が期待できます。

化学的な組成については、前述のとおり炭素Cが2.5〜4.0%、ケイ素Siが0.8〜3.0%程度含有されるほか、マンガンMnやリンP、硫黄Sなどが数%以下ずつ含まれます。JIS規格では化学成分の厳密な範囲は定められていないため、鋳造メーカーが調整しているのが実情です。

FC200のメリットとデメリット

ここでは、FC200のメリットとデメリットについて解説します。

メリット:耐摩耗性・加工性・振動減衰性

FC200には以下のようなメリットがあります。

  • 高い耐摩耗性
    炭素(黒鉛)を多く含むFC200は硬度が高く摩耗しにくい素材です。黒鉛が潤滑剤の役割を果たし、摩擦による減耗を抑えるため、摺動部品や摩耗が激しい箇所に適しています。
  • 優れた切削加工性
    FC200は切削しやすい材料として知られています。組織中の片状黒鉛が切りくずを細かく砕き、さらに黒鉛自体が工具の潤滑剤となるため、切削抵抗の低減が可能です。
  • 高い振動減衰性(制振性)
    FC200は振動を素早く吸収・減衰させる能力に優れます。片状黒鉛の存在が材料内部で振動エネルギーを分散・吸収するため、機械稼働時の振動や作動音を低減します。精密加工機械の据付剛性や精度安定性にも効果的です。 
  • 耐熱性
    FC200は耐熱性にも優れる点がメリットです。実際にエンジンのシリンダーブロックやブレーキディスクなど高温環境下で使用される部品にもFC200が使われます。

デメリット:溶接不可・衝撃に弱い

一方、FC200には次のようなデメリットもあります。

  • 溶接が困難(溶接性が低い)
    FC200は溶接に向かない材料です。高炭素の鋳鉄は溶接時の熱で部分的に硬化しやすく、熱影響部にひび割れ(溶接割れ)が生じやすい傾向があります。基本的にFC200を用いる際は溶接構造を避けるべきです。
  • 脆くて衝撃に弱い
    FC200は靭性(粘り強さ)が低く、衝撃荷重や曲げに弱い点が欠点です。伸び(破断ひずみ)はわずか数%程度しかなく、粘りのある鋼のように大きく変形する前に割れてしまう性質があります。鍛造やプレス曲げなど塑性変形を伴う加工には適用できません。

FC200の代表的な用途と採用理由

特性とメリット・デメリットを踏まえ、FC200が実際にどのような用途で採用されているかを見ていきましょう。

用途 採用理由
工作機械のベッド・フレーム 高い振動減衰性で切削時の振動を抑え、機械剛性を安定させるため
内燃エンジン・油圧機器の主要部品 耐熱性と熱伝導率のバランスが良く、冷却水やオイルの流路を含む複雑な形状を一体成形できるため
歯車・軸受・摺動部品 高硬度で摩擦に強く、自己潤滑性によりかじり付きにくいため
ブレーキディスク・ブレーキドラム 高い硬度による耐摩耗性と、優れた熱的特性から、繰り返しの制動に耐えられるため
産業用インフラ部品 圧縮荷重や摩耗への強さと、安価に大量生産できる鋳造性が求められるため

FC200加工の注意点と設計のコツ

FC200は加工現場でも扱われる機会が多い素材です。その加工上の注意点と、設計段階で知っておきたいコツについて解説します。

切削加工

FC200は内部の黒鉛の働きで削りやすい材料ですが、設計時には切りくずの処理までイメージしなければなりません。切りくずは微粉末となり、深穴や複雑形状では詰まりやすく加工不良の原因になります。

FC200の削りやすさはコストダウンにつながる大きなメリットなので、利点を最大限に活かすためにも、切りくずが排出されやすい、シンプルな形状を心がけた設計をおすすめします。

塑性加工

設計の大前提として、FC200は「曲げられない、溶接できない」と考えてください。FC200は硬い反面、ガラスのように脆い性質を持っているため、鋼材のようにプレスで曲げたり、部品同士を溶接で接合したりできません。もしそのような加工をすれば、簡単に割れてしまいます。

したがって、部品同士の結合には必ずボルト締結などを採用し、形状は一体で鋳造するか、ブロック材からの削り出しを前提に設計を進める必要があります。

設計のポイント

FC200の設計で最も重要なのは「割れを防ぐ形状」です。FC200は衝撃に弱く、力が一点に集中すると、そこを起点に破壊されやすいためです。

設計でできる対策は2種類です。ひとつ目は、角という角に必ず丸み(R)をつけることです。特にリブの付け根など、力が集中しやすい箇所に求められます。ふたつ目は、肉厚をできるだけ均一にすることです。鋳造時の冷却ムラによる内部欠陥を防ぎます。

「大きなR」と「均一な肉厚」の2点を守れば、信頼性の高い部品につながります。

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まとめ

FC200は「硬くて摩耗に強く、振動吸収性に優れる」という長所と、「脆くて衝撃や引張に弱い」という短所が明確な材料です。特性を理解し、適材適所で活用することが設計の鍵となります。

優れた耐摩耗性や振動減衰性は、工作機械のベッドやエンジン部品のように、高い寸法安定性や摺動性能が求められる用途で真価を発揮します。鋳造性の高さを活かせば、複雑形状の部品を一体で、かつ経済的に製造可能です。

一方で、靭性が低いため、大きな衝撃荷重がかかる安全部品や、溶接を前提とした構造物への使用は絶対に避けなければなりません。もし強度や粘り強さが不足する場合には、より鋼に近い性質を持つ球状黒鉛鋳鉄(FCD材)への変更が有効です。また、曲げや溶接が不可欠な設計であれば、鋳鉄ではなくSS400などの鋼材を検討するのが基本です。

部品に求められる性能と製造方法を見極め、FC200の長所を最大限に引き出す設計を心がけましょう。

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