3D CAD推進プロジェクト

3D CADトレンド情報~PTC社記者発表より

前回からサプライチェーンの話の続きの予定でしたが・・・

CADソフトウェアPTCの新製品『Creo 7.0』記者説明会”(2020年4月22日オンラインで開催)に参加することができました。

最近、話題になっているDX(デジタルトランスフォーメーション)を感じる話があったので、今回はこの話をします。

ご存知の方も多いと思いますが、PTC社(正式にはParametric Technology Corporation(パラメトリック・テクノロジー・コーポレーション)は米国マサチューセッツ州に本社があるCAD/CAM/CAE、PLM※関連のソフトウェアとサービスを提供する企業です。

私も、同社のハイエンド3DCADのPro/E(Pro/Engineer)と関わった経験があります。

PTC社は、フランスのDassault Systèmes(ダッソー・システムズ)や米国のSiemens PLM Software(シーメンスPLMソフトウェア)と共に、世界3大PLMベンダーとして有名です。
日本企業では、富士通やNECが有名です。

そんなPTC社が発表したものは、3DCAD Creo® の次世代版となる Creo 7.0でした。

※PTCの社名、Creoおよびすべての PTC製品の名称は、PTC Inc.(米国および他国 の子会社を含む)の商標または登録商標です。その他、記載している会社名、製品名は、各社の 商標または登録商標です。

Creo7.0(出典:PTC 社)

今回記者会見から感じたキーワードは、

  • MBD(Model Based Design/Model Based Definition)モデルベースの定義
  • ジェネレーティブデザイン(Generative Design)
  • リアルタイム シミュレーション(Real-time Simulation)
  • マルチボディ(Multi body)
  • クラウドコンピューティング(Cloud Computing)

です。

MBD

MBDは3DCADモデルに情報を盛り込む仕組みです。
3Dモデルデータに製品・製造情報を定義することができます。
この情報のことを、製品製造情報 (PMI: Product Manufacturing Information)といいます。

2D図面レスが叫ばれて久しいのですが、未だに図面はなくなりません。私は3D推進者ですが、2D図面が持っている情報の多さには、3DCADを単なる可視化“ツール”として見るのなら、勝てません。
MBDによって、3Dモデルは2D図面以上のデータを持って社内で共有されることになるでしょう。

私は、3DCADを社内のインフラにするということから、このMBDには注目しています。

ジェネレーティブデザイン

ジェネレーティブデザインは、設計者がコンピュータに一定の設計仕様を入力するだけで、その制約に応じた設計案を自動で生成してくれる仕組みです。
PTC社は2018年にジェネレーティブデザインの技術開発を行う米国Frustum(フラスタム)社を買収しています。

欧米系のCADベンダーの新規分野への事業強化のやり方はすごいですね。

今回は、「Creo Generative Topology Optimization Extension」の解説が行われました。
「トポロジー最適化(位相最適化)※もジェネレーティブデザインのひとつの手法です。」とのことで、Frustumのジェネレーティブデザイン技術をコアに行う解析計算は、ローカルマシンでのCPU/GPUとのこと。
同じようなトポロジー解析を行う他社製品よりも進化しているようにも思えます。

3DCADと統合されたこのシステムでは、最適形状化された解析結果の形状のCADモデルに再構築化が出来ていました。
私の他社システムの経験では、これが出来ていません。
トポロジー解析結果を参考に、CADモデルを新規に作成し直しています。

制約条件も魅力的な内容があったので、ぜひ試してみたいな・・・。

トポロジー最適化(ジェネレーティブデザイン)の理想的なフロー

このジェネレーティブデザインは、20020年秋ごろにリリース予定の『Creo 7.0.2』で、クラウドのコンピューティングで、複数の最適形状案を提示してくれる「Creo Generative Design Extension」を提供予定ということです。目が離せませんね。

リアルタイムシミュレーション

リアルタイム シミュレーションでは、Creo Simulation Live」をCreoに統合したとのこと。
ベースになっている技術は、ANSYS社の「ANSYS Discovery Live」です。
ANSYS Discovery Liveは私も評価したことがあって、GPUコンピューティングによって、瞬間的に解析計算結果を表示するのを目の当たりにした時には、びっくりしました。

この時の評価では、技術的にはジオメトリによる計算結果への特性などあるものの、「設計者が当たりをつける」という目的では、「設計者CAEとしていいね!!」と感じています。

3DCADと統合されたこのシステムの運用は、設計者CAEをより便利にすることでしょう。

さらに、このシステムはANSYSの高性能ソルバーをCreoに組み込んで「Creo ANSYS Simulation Extension」として進化するようです。
これもまた目が離せませんね。

マルチボディ

マルチボディでは、これまでも1つの製品形状を複数のボディで作成する方法ですが、経験的にその使用用途もピンとこなかったので、これまであまり興味がなかったのですが、
今回の説明では、このマルチボディとジェネレーティブデザインの連携の話がありました。
最適化単位をこのマルチボディ単位で行う」ということです。

私の経験では、ひとつの部品単位で最適化を行ってきました。
制約条件として形状維持を行う面などの指示は行ってきていますが、このボディ単位の最適化というのはマルチボディの用途を広げてくれるような気がします。

マルチボディ設計(出典:PTC社)

クラウドコンピューティング

クラウドコンピューティングは、ローカルマシン(デスクトップ)では得られないスペックを得ることが可能です。
私もANSYS Discovery Liveでその体験をしています。

また今年開催されたダッソーシステムズ・ソリッドワークス社の「3DExperiece World2020」でも「デスクトップ戦略の継続とクラウド戦略の強化」が発表されました。
やはり、クラウド戦略というのは、「欧米系CAD(PLM)ベンダーが考える共通的な戦略」だと言えるようです。

 

私は最近、「PTC社はIoT色が強いな」と感じていたのですが、今回の記者発表から、IoTはPTC社のデジタルツインの仕組みの一部だということと、デジタルツインを支えるCADやCAEの技術の進歩と、製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を感じるものとなりました。

ひとりのエンジニア、3DCAD推進者として、様々な3DCADで共通なトレンドともいえる新しい仕組みを使えるのなら、
どんな設計ができるのだろう?どんなに効率化が図れるのだろう・・・?
とワクワクします。

そう、meviyも3DCADデータだけで、ものづくりを行える革新的なサービス、製造業のDXのひとつです。

次回はサプライチェーンのテーマに戻ることにしましょう。お楽しみに。