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ステンレス鋼(SUS)とは?種類や特徴と注意点

ステンレス(SUS)はその名のとおり、錆び(ステン)が起こりにくい(レス)材料で、一般的に多種多様な用途で利用されています。しかし機構設計者から見ると要注意材料で、何度か痛い思いをした経験も多いのではないでしょうか。問題を避けるには、ステンレスの各種類について、その特徴を理解した上で扱うことが必要です。

ステンレス鋼(SUS)とは?種類や特徴と注意点

ステンレス鋼(SUS)とは

ステンレス鋼は、炭素含有量1.2%以下、クロム含有量10.5%以上の鋼で、腐食に対する耐性を持つ合金鋼です。一般的に「ステンレス」とも呼ばれます。
英語名は「Stainless steel」といい、錆びない(Stainless)が語源となっています。

ステンレス鋼の歴史はまだ浅く、発明から100年程度しかたっていません。金属業界ではSUS(Steel special Use Stainless)といい、JIS規格だけでも100以上の種類があります。

ステンレス鋼は錆びにくいのが最大の特徴で機械部品の材料としてさまざまな製品に使われています。
例えば車の部品や家電、産業機械でもよく使われています。身近な製品としては、スプーンなどの食器類もステンレス製のものがあります。

ステンレス鋼(SUS)の主な種類

ステンレス鋼は含有している材質の比率や熱処理の違いによってさまざまな種類があります。主なステンレス鋼の種類を3つ紹介します。

マルテンサイト系

マルテンサイト系は、カーボン0.1~0.4%、クロム12~18%を含んでいるステンレス鋼です。
熱処理(焼入れ)によってマルテンサイト組織を形成し、硬度が高いステンレスです。
デメリットは、炭素が少なく耐食性に劣るため、表面に鉄などが付着していると、もらい錆びが発生することです。
マルテンサイト系はステンレス鋼の中でも特に硬い材料なので、主に硬度が求められる機械部品に使用されます。また、高温にさらされる部品にも使用されます。
例えば、タッピンネジや刃物、シャフトなどの材料はマルテンサイト系が多いです。
SUS4**(SUS410、SUS403)およびSUS630がマルテンサイト系の鋼種です。

オーステナイト系

オーステナイト系は、カーボン0.15%以下、クロム16~20%、ニッケル8%以上を含むステンレス鋼です。
オーステナイト系はクロムとニッケルを含んでおり、錆びに強く耐熱性も高いステンレスです。
しかしながら、焼入れしても硬化しないため、硬度はマルテンサイト系に劣ります。また、塩化物イオンにさらされると応力腐食割れを発生します。
オーステナイト系は、電気機器の部品や産業設備など、さまざまな製品に広く使われているステンレス鋼といえます。
SUS3**(SUS303、SUS304、SUS316)がオーステナイト系の鋼種です。

フェライト系

フェライト系は基本的にはニッケルを含んでおらず、硫黄を含むガスに対して腐食しにくいステンレス鋼です。
フェライト系は、オーステナイト系のように塩化物イオンに対する応力腐食割れが発生しにくいです。また一般的な鉄と同じように磁性を持っています。
しかしながら、耐食性はオーステナイト系に劣ります。
フェライト系は材料の価格が安く、溶接性も悪くはないため、建具や家庭用品などさまざまな箇所で使われています。
SUS4**(SUS430)がフェライト系の鋼種です。

ステンレス鋼(SUS)のメリット

錆びなどに強い

鉄は酸素が結合して酸化すると錆びになります。
ステンレス鋼は、クロムを含んでいるため鉄よりも早くクロムが酸化して薄い皮膜を作ります。この皮膜は不動態皮膜といい、錆びの発生を防ぐことができます。
何かとぶつかったりして傷がつき皮膜が破壊された場合にも、瞬時に再生するので錆びません。
他には、耐候性もあり、汚染空気に強いという特徴があります。

熱に強い

ステンレス鋼は熱に強く、500℃までは引っ張り強度が大きく落ちません。しかしながら、500℃を超えると機械的強度が落ちます。特に、マルテンサイト系とフェライト系は大きく強度が落ちます。
また、ステンレス鋼は熱伝導率が低いです。そのため、飲み物を保温するために水筒に使われます。

剛性が高い

ステンレス鋼は炭素を加えているため、一般的には鉄より強度が高いです。ただし、熱処理(焼入れ)の有無や構成元素によって多少異なります。機械部品の設計では、強度が必要な箇所にはステンレス鋼を用いる場合もあります。

清潔である

ステンレスは錆びにくいため、塗装やメッキを行わなくても、水を多く使う場所でも清潔に利用できます。食品工場の規格にも準じる材料なので、家庭で身近な流し台にも使用されています。食品の生産設備、化学プラントなどの特殊用途にも対応できる材料です。
さらにバフ研磨を行うことで表面の凹凸をなくし、汚れ(コンタミ)が付着しにくくなります。

ステンレス鋼(SUS)のデメリット

靭性(ねばり)がある設計者感覚で表現すると、ステンレスは靱性がある粘っこい材料だといえます。そのため外力をかけても変形から破壊まで、長く耐えられます。

摩擦係数が高い

ステンレスは他の金属と摺動する場合に滑りにくい性質を持っています。鋼板同士の場合に比べ、鋼板とステンレスでは約2倍の摺動抵抗になります。そのため、バネの付勢力が不足して機構が成立しない場合があります。

加工硬化の性質を持つ

ステンレスで板金部品を試作する場合、曲げ加工を行うとかなり硬くなります。原因は加工硬化ですが、その指標であるn値が鋼板の約2倍で特に注意が必要となります。そのため再加工性はなく一発勝負で加工する必要があります。

放熱性に劣る

ステンレス鋼は熱伝導率が低く熱が移動しづらいです。そのため、放熱性が求められる駆動部周辺などではステンレス鋼ではなくアルミを使う場合が多いでしょう。
また、ステンレス鋼を切削加工する時に、工具先端の熱が逃げにくく工具の寿命が短くなるというデメリットもあります。
また薄肉の切削加工品や薄板を溶接する場合には、逃げずに残った熱の影響で反りが発生する可能性もあります。

設計者が考えるステンレス鋼(SUS)の特徴

設計者(特に機構設計)としての感覚でステンレスを話すと、『困った時のSUS』と『くせもののSUS』という特徴が思い浮かびます。
『ステンレスの長所』の例として強度が高い事が挙げられます。具体的には板金部品の板厚をどうしても1mm以下にする必要がある場合に通常の鋼板だと手で簡単に変形してしまいますが、ステンレスでは機構部品として十分な強度を持ちますので0.6mmの板厚の部品も成立してしまいます。しかしSUSを利用して痛い思いをする場合も多く、ステンレスは使いにくいというイメージもあり利用方法で悩まされます。

ステンレス鋼(SUS)の注意点

ステンレス鋼の噛み込み現象

ステンレスで最も注意が必要なことは、噛み込み(焼き付き)現象です。
SUSのネジなどは現象が顕著に現れ、電動ドライバーで締め込むと雄ねじと、雌ネジが密着して2度と緩まなくなってしまいますので、メンテナンスでネジが外せず致命的になります。最悪の場合、関連部品を全て交換する必要があります。

摩擦係数が高い 熱伝導率が低い 熱膨張率が高い
摩擦熱が発生 摩擦熱が逃げない ネジが密着する

噛み込み現象の回避方法

SUSネジの場合はコーティングすることで噛み込みを低減できます。また締め付けトルクを適切に管理する事や、電動ドライバーを使わない事でも低減できます。

絶対に錆びないというわけではない

ステンレス鋼は錆びないことが特徴ですが、条件によっては錆びる場合もあります。
強い酸やアルカリにさらされたり、湿度が高いと腐食したりします。また、鉄成分が不動態皮膜の上に付着して錆びたように見える、もらい錆びが発生する場合もあります。
他には、不動態皮膜を傷つけてしまい再生する前に酸化してしまう場合もあります。

まとめ

ステンレス鋼はさまざまな機械部品や家庭用品、建設用品などで使われています。最大の特徴は錆びない点です。また、強度が高く熱伝導率が低いという特徴もあります。
一方、摺動性が悪かったり、曲げ加工時に硬化してしまったりするなど設計や加工に注意が必要です。
メリット、デメリットをよく理解して使用しましょう。ステンレス鋼は広く使われており、試作品や量産品どちらにも適した材料です。

meviyでは、今回ご紹介したステンレスの加工に対応しています!ぜひお見積もりください。

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