機械設計 機構設計

板金、樹脂、棒材など加工の寸法公差を解説

加工可能な公差は、切削や板金、旋盤などの機械加工の方法によって異なります。設計、加工、資材の担当者は、各加工法によって加工可能な公差の目安について、知識として持っておいて損はありません。
今回は、主な3つの加工法別に加工可能な公差を紹介します。

樹脂・板金・棒材の加工可能な公差はどのくらい?加工法別に解説

樹脂の加工可能な公差

樹脂の加工可能な公差

樹脂のおもな加工方法は切削加工と射出成型です。切削は刃物を使って樹脂を削っていく加工方法です。射出成型は、熱で溶かした樹脂を金型に流しこみ、冷やしてかためる加工方法です。切削加工のほうが射出成型よりも高い精度で加工可能です。そのため、公差指示も厳しくできます。
どちらの加工法にもいえることですが、熱膨張があるため、あくまで測定時の温度での寸法であることに注意しましょう。また、材質や設備、金型の精度によっても加工可能な公差は、多少異なります。

  • 切削加工の穴径の公差
    例えば、樹脂に穴をあける例では、直径10㎜程度であれば0~+0.03程度の公差が可能です。穴をあける工具の大きさにならうため、高い精度で加工できます。
  • 切削加工の穴~穴の中心間距離の公差
    高精度加工に対応できる材質は、±0.01程度の公差指示が可能です。一方、摩耗しにくい材料でよくしられるPOM(ポリアセタール)は、そこまで精度よく加工するのはむずかしく、±0.05程度が限界でしょう。
  • 射出成型の穴径の公差
    直径10㎜程度の穴径を指示する場合、穴の深さが10㎜程度ならば0~+0.05程度に指示できるでしょう。射出成型の金型は抜き勾配をつけることが多いため、穴が深くなるほど公差を大きくする必要があります。
  • 射出成型の穴~穴の中心間距離の公差
    POM(ポリアセタール)の加工可能な公差は、±0.1程度でしょう。また、PPSのような精度をだしやすい材質であっても±0.03が限界でしょう。

板金加工の公差

板金加工の公差

板金の主な加工法は曲げ加工とカットです。曲げ加工はプレスブレーキという機械で金属の板を曲げることです。直角に曲げることが多いですが、ほかの角度も可能です。カットは、レーザー加工機でおこないます。外形のカットや丸穴、長穴などをあけます。

  • 板金加工の穴径の公差
    レーザー加工でカットする場合、穴径は0~+0.05の公差指示が可能です。φ10の位置決め用の穴の場合にはφ10 +0.05/0のように指示します。
  • 板金加工の穴~穴の中心間距離の公差
    中心間距離は±0.05程度の公差指示が可能です。
  • 曲げ加工の公差
    基準穴中心~曲げの根本までの寸法公差は±0.15程度が限界でしょう。また、曲げ角度の公差指示も必要です。
    例えば90°で曲げたとしても、±1.0°程度の公差が必要です。そのため、曲げの根本で±0.15㎜であったとしても、曲げ先端ではさらにずれます。
    曲げの先端にも基準穴中心からの寸法を指示したい場合は、角度公差を考慮して根本よりも大きな公差にする必要があります。

切削加工の公差

切削加工における許容範囲の公差

切削加工の公差は、大きく分けて軸の直径と部品の長手方向の寸法で定義されます。切削は刃物を使って削っていくため、公差指示も厳しくできます。

    • 切削加工の穴径の公差
      例えば、樹脂に穴をあける例では、直径10㎜程度であれば0~+0.03程度の公差が可能です。穴をあける工具の大きさにならうため、高い精度で加工できます。
    • 切削加工の穴~穴の中心間距離の公差
      高精度加工に対応できる材質は、±0.01程度の公差指示が可能です。一方、摩耗しにくい材料でよくしられるPOM(ポリアセタール)は、そこまで精度よく加工するのはむずかしく、±0.05程度が限界でしょう。

旋盤で加工される棒材の公差

旋盤で加工される棒材の公差

金属の棒材は旋盤で加工されます。旋盤は、高速で回転している棒材に刃物をあてて表面を削る加工方法です。主に直径と軸方向の寸法を指示します。

  • SUM材の直径公差
    快削鋼であるSUM材は、SUSよりもコストがやすいため量産でよく使われます。SUM材は、錆がでないように防錆油を塗布したり、めっき処理をしたりします。めっきの厚みにもばらつきがあるため、めっき込みであれば公差幅は0.03程度が限界でしょう。φ10 0/-0.03のように指示します。
  • SUS材の直径公差
    SUS材であればめっきが必要なく、もう少し厳しい公差指示が可能です。φ10 0/-0.01程度、公差幅0.01程度を指示できるでしょう。
  • 長手方向の公差
    長手方向の寸法公差は、±0.03程度に指示できるでしょう。

まとめ

機械加工の代表的な加工法の限界となる公差を紹介しました。これらをまとめると下記の表のようになります。

樹脂 金属
切削 射出成形 板金 旋盤加工
穴径 0~+0.03 0~+0.05 0~+0.05
穴の中心間距離 ±0.01
POMは±0.05程度
±0.1 ±0.05
基準穴中心~曲げの根本 ±0.15
軸直径 ±0.03
長さ ±0.03

材質や歩留まり、使用する設備などで多少かわりますが、目安にできるでしょう。
設計担当者は、機能に必要な公差を指示するよう意識しましょう。厳しい公差指示をする場合には、必要に応じて加工担当者に確認が必要です。また、受注を担当する方は、自社で加工可能な公差か意識するといいでしょう。

お役立ち資料ダウンロード