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公差とは? 公差の定義や種類をまとめて解説

機械部品を設計したり、図面を書いたりする際には、公差に対する知識が欠かせません。ここでは公差とは何かや、公差について学ぶ際に必要な情報をまとめて紹介します。

公差の種類や、板金・切削加工の許容公差範囲について解説

公差とは

公差とは

公差とは、加工において避けることができない誤差に対し、許容される数値の上限と下限との差(許容範囲)を示したものです。

例えば切削などの機械加工で50mmの円柱を削ろうとした場合、ちょうど50mmに仕上げることはできません。ハサミでまっすぐな線の上を切ろうと思っても、微妙な歪みが出てしまうのと同じように、機械にも微妙な誤差が発生するからです。また、温度による素材や機械の膨張、材料の固定の誤差なども関わってきます。そのため「50mmを目指して」加工することはできますが、50mmちょうどに仕上げるのは非常に難しいのです。
そこで設計においては、どこまでの誤差ならば許容できるかを決めています。そして設計図面や加工図面では、設計上許可できる誤差の範囲を「公差」として指定しています。

基本的に誤差は、公差の範囲内で正規分布の形で現れます。加工された製品の寸法をチェックし、この分布のピークが公差の範囲内のどの位置にあるかや、分布の裾野がどのように広がっているかを分析するのは、品質管理を行うためにとても大切です。
公差を定める際には、このような分布から、適切な公差を求めるケースもあります。さらに複数の部品を組み合わせる際には、誤差が積み上がります。しかし公差をそのまま積み上げたのでは、十分な精度が得られなくなってしまいます。そのため誤差の分布を利用し、計算によって新たに公差を求めるのが一般的です。

また、材料を3mmに切ろうとしていれば1mmの誤差は大きく感じますが、3mの材料を切ろうとしている場合には1mmの誤差はあまり気になりません。したがって、材料が大きくなればなるほど、誤差の値も大きくなるのが一般的です。
公差は長さだけでなく、角度や形にも設けられます。

公差の種類

公差の種類

図面における寸法や形状の指示には、さまざまな種類があります。それにともない、公差にも次の4種類があります。

  • 一般公差 – 個々の寸法を一括して指定する許容差
  • 寸法公差 – 長さなどのサイズに関わる許容差(サイズ公差)
  • 幾何公差 – 形状を規定する許容差
  • はめあい公差 – 穴と対応する軸に対してセットで指定する寸法公差

公差の種類について説明しましょう。

  • 一般公差
    一般公差とは加工方法や材料の大きさにより「だいたいこれくらいが標準」といわれる誤差の範囲で、JISによって定められています。普通公差とも呼ばれています。一般公差は加工法と加工される部位の寸法によって変わります。
    一般公差は、図面中の寸法に付属させて表記する必要はありません。図枠内の注釈などに「指示なき部位は一般公差とする」などの文言を加えることで、JIS B 0405:1991などに定められた指示なき加工寸法の普通許容差標準が適用されます。また、加工方法や材料によっては一般公差に等級が適用されるケースもあります。詳しくは、一般公差の解説ページをご覧ください。
  • 寸法公差(サイズ公差)
    寸法公差とは、図面の中で指示される寸法に適用される公差で、長さ、距離、位置、角度、大きさ、穴径、角の丸みや面取り寸法などがこれに該当します。一般公差とは異なる許容差を指示したい場合に使用します。一般公差と異なって明確な基準がなく、設計者の意図に合わせて任意の数値を指定できますが、加工方法などにより実現可能な範囲があります。
    寸法公差には、両側公差と片側公差があります。詳しくは、寸法公差についての解説ページをご覧ください。
    また、図面における寸法公差の表記・記入方法についてもご参照ください。
  • 幾何公差
    寸法だけでは定義できない誤差の範囲を定めるものに幾何公差があります。例えば2つの穴の中心の位置に誤差の範囲を定めたい場合などに使用します。図面上に寸法などと併せて記載します。詳しくは、幾何公差の解説ページをご覧ください。
  • はめあい公差
    はめあい公差とは、軸と穴に対する精度です。機械では穴と軸の関係は頻繁に使われますが、例えば回転する軸とそれを支える穴や、回転する軸と共に回転するように取り付ける部品など、穴と軸のきつさの関係はそれぞれです。このような関係を「はめあい」といい、目的とするはめあいに応じた公差をはめあい公差とよびます。
    はめあいには次の3つの種類があります。
    すきまばめ: 軸と穴の間にすき間がある関係。鉄板にポルトを通すときのように、簡単に外せるようにする場合や、ピストンなどのように軸が穴の中をスライドする場合に用いられます。
    しまりばめ: 穴の径よりも軸の径の方がほんの少し大きい関係。穴のある部品を加熱して膨張により穴を広げ、そこに軸を押し込む「焼きばめ」などのように、かなり強い機械的な力を使わなければ、はめることができません。そのためしまりばめの場合、基本的に「圧入」が必要になります。
    中間ばめ: すきまばめとしまりばめの中間にあたるはめあいです。ガタつきのない精密な関係になります。

詳しくは、はめあい公差の解説ページをご覧ください。

公差と製造コストの関係性

公差と製造コストの関係性

それでは、このような公差は加工や製造コストにどう影響するのでしょうか。
機械部品を組み合わせる際には、部品同士がガタつきなく組み合わさることや、片方に部品を押し込むなど、より高い精度が求められるケースも少なくありません。このような精度は一般公差では得られません。そのため寸法に対して個別に公差を指示する必要があります。
公差を指示した場合、加工後の寸法が公差内に入っているかどうか確認する必要があります。また、当たり前ですが、高い精度の公差を指示すれば、それだけ加工も難しくなりますし、細かい寸法をチェックするためには、細かい目盛りまで読める測定器具が必要になります。そのため高い精度で公差を求めれば、加工や検査に関わるコストは高くなります。ですから、公差を指示する際には、本当にその公差や精度が必要なのかをしっかりと考えなければいけません。また指示した公差に対する検査方法も併せて考えておく必要があります。

公差設計のメリット

部品個々の公差を厳しくすると、それだけコストは上がります。一方で公差を過度にゆるめると、不具合が発生する可能性が高まります。製品の品質やコストなどを総合的に考えて公差を設定することを、公差設計といいます。
公差設計・公差計算を習得することで、コスト増を最小限に抑えた品質改善、品質を維持したコスト削減を図ることができます。

詳しくは、公差設計のメリット/計算事例に関するページをご覧ください。

材料、加工と寸法公差

寸法公差は、材料が加工方法によって大きく変わります。

詳しくは、材料や加工方法による寸法公差の設定についての解説ページをご覧ください。

機械要素と公差

ねじやベアリングなど、機械要素ごとに独自の公差等級を持っているものもあります。このような機械要素には、一般公差とは異なる公差が適用されます。

まとめ

公差とは、加工において避けることができない誤差に対し、許容できる範囲を定めたものです。
公差には一般公差、寸法公差、幾何公差、はめあい公差があります。
設計担当者は、機能に必要な公差を指示するよう意識しましょう。必要があって厳しい公差指示をする場合には、加工担当者に確認を行なってみるといいでしょう。

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