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製缶加工とは?加工手順、用途や板金加工との違い

金属板を加工し、大きな構造物や機械の架台、タンクなどを作る方法として製缶加工があります。製加工の手順や用途、板金加工との違いは何かについて解説します。

製缶加工とは?加工手順、用途や板金加工との違い

製缶加工とは?

製缶加工(製罐加工)は、製缶板金ともよばれる金属加工で、簡単に言えば「缶」を造ることです。容器だけでなく、機械のカバーや骨組みなどを作るために欠かせない技術です。色々な日用品やビルの設備など、数多くの身近なものが製缶で作られています。

製缶加工の概要

製缶加工とは、鉄やステンレスなどの金属板やパイプ、アングル材などを切断し、溶接加工などを行って立体的な製品を作る加工です。製缶というと、スプレーや缶詰めの容器をイメージするかもしれませんが、、一般的な「缶」だけでなく、大きなタンクや装置から大型の機械のカバーや、構造物の骨組みなどの製造も含まれています。切断や曲げ、穴開けや溶接などを行うため、どちらかというと板金加工に近い加工ですが、板金加工とは異なり、金属板だけでなく、形鋼やパイプアングル材を使用します。また、金属板を使用する際には、板金加工よりも厚い材料が使われるケースが多いです。さらに板金加工とは異なり、カバーやケースよりはフレームなどを作るために使われるケースが多くなります。金属加工の一種で、ものづくりにおいては欠かせない加工方法の一つなのです。

製缶に適した材料と適さない材料

製缶加工では、板金加工よりも高い強度が求められる製品を作るケースが多いです。そのため高い強度をもった、鉄やステンレスが適しています。一方でアルミや銅などのように素材の強度が低いものは、適していません。

製缶加工を用いる製品の例

製缶加工で作られる製品には、次のようなものがあります。
工作機械を置く架台や、工作機械のフレーム。工作機械をはじめとした大きな機械の筐体。産業用のタンクやダクト、貯蔵設備などです。また、私たちの身近では集合住宅の貯水槽などが挙げられます。
これだけの例でも、さまざまな形状が作られることが分かるでしょう。板金加工に比べ、高い強度や耐久性が求められるものに製缶加工が用いられる場合が多いです。

製缶加工のメリットとデメリット

比較的大型の構造物を作るのに向いています。また高い強度をもった製品が作りやすい加工法です。一方で板金加工やプレス加工のように量産に向いた加工法ではありません。そのため製作コストが高くなりがちです。また、基本的に手作業になるため、熟練工の高い技術が必要になります。

製缶加工の作業手順

続いて製缶加工の加工手順について紹介していきます。

(1)図面作成

どのような加工についても同じですが、まずは図面を作成します。図面を用意することにより、設計者と加工者、使用者の意思疎通がスムーズに行われ、ミスのない作業が可能になるからです。
また設計の段階から、作業工程を意識してコストを抑えられるよう考慮するのも大切です。コストを抑えつつ、製品の品質は向上できるよう、設計と作図を行う必要があります。コストを抑える工夫としては、溶接個所を減らしたり、小さな部品を増やさないようにしたり、二次加工をできるだけ必要としないような加工を行ったりするなどの方法が挙げられます。

(2)切断・溶断

図面を元に、決められたサイズや配置で金属板などの材料の切断を行います。金属板の切断は、板金加工と同じように、レーザーカットや抜き加工で行います。また厚い金属板を加工する場合は、レーザーや抜き加工では対応できないため、溶断が選択されるケースもあります。溶断とはガスの燃焼やアークなどの熱を使って切断したい部分の金属を溶かしながら除去する方法です。

(3)穴あけ・曲げ加工

製品が完成したときに他の部品やボルトを通せるようにするため、切断された金属板に穴あけ加工を施し、キリ穴やタップ穴を開けます。また金属を決められた形状に折り曲げる「曲げ加工」を行います。
曲げ加工では、板金加工やプレス加工と同じように、パンチとダイが用いられます。しかし製缶加工の場合、汎用金型とプレスブレーキによる曲げだけでなく、折り曲げや型曲げ、送り曲げ、ロール曲げなどによりさまざまな形状が作られます。

(4)溶接

曲げの合わせ部や複数の部品を接合するために、溶接を行ないます。溶接とは、複数の金属を熱で溶かして融合させ、冷やして固める加工です。製缶の溶接ではアルゴン溶接やアーク溶接を用いるのが一般的です。また、精度の高い組み合わせや組立てを行う際には、工作機械を用いて溶接部の二次加工を行う場合もあります。

(5)処理・組み立て

製品を使用する環境により、耐食性や耐熱性、導電性などが求められるケースもあります。例えば屋外のタンクであれば耐食性が必要ですし、高温の気体や液体が通るダクトでは耐熱性が求められます。そのため、必要に応じて表面処理などを施します。また製缶はハンドツールなどの機械の力を借りつつも手作業で組立てることも多く、高度な技術が必要です。

(6)検査・納品

最後に、製品に問題がないか検査を行ないます。また製品によっては、完成後に特殊な加工を施すケースもあります。全ての作業が終わったら、発注者に納品され、必要に応じて設置などが行われます。

製缶加工と板金加工の違い

前述の通り、金属板を加工するという意味では、製缶加工と板金加工はとてもよく似ています。しかし大きく分けて次のような違いがあります。

製造される製品

板金加工では、機械の筐体やボックスなどが主に作られますが、製缶加工ではフレームや架台などが作られます。また板金加工に比べ、大きなものが作られるケースが多いです。

材料

板金加工では金属板が使用されますが、製缶加工では形鋼が多く用いられます。

板厚

製缶加工は板金加工に比べ、高い強度や耐久性が求められる製品を作る際に行われることが多く、厚い金属板を使用するケースが多いです。
一般的に、板金加工で使用されるのは7mm以下の金属板ですが、製缶加工では7mm以上の板を使用します。

まとめ

製缶加工とは、板金加工よりも厚い金属板を使用し、板を切ったり曲げたり、溶接したりして製品形状を作る加工です。一般的に7mm以上の金属板が使われ、タンクやダクト、架台やフレームなどを作ります。製缶というと「缶」のような容器を作るのをイメージしますが、容器だけでなくさまざまな製品が作られます。
製缶加工では、図面作成、金属板の切断、穴開け、曲げ、溶接などの工程を経て、表面処理や組立て、検査の順に工程が進みます。
製缶加工と板金加工の差は板の厚さで、製缶加工のほうが、強度や耐久性が求められる製品や大型の製品が作られます。