デジタルトランスフォーメーションの先をよむ - 今、そこにある未来 -プロフェッショナル連載記事

3DEXPERIENCE WORLD 2023レポート第4弾‐変化し続ける製造業の未来

3DEXPERIENCE WORLD 2023レポートの最終回になります。
待望の対面式のカンファレンスとなった3DEXPERIENCE WORLD 2023でしたが、数年先には日本でもその流れを見せるだろう情報発信がありました。そして、なによりもSOLIDWORKSコミュニティメンバーとの再会は刺激的でした。
今回は、前回に続きドメインセッションの製造編と会場で感じた教育、コミュニティーについてお話します。

3DEXPERIENCE WORLD 2023最終日オープニング

製造領域:Futureproof Your Manufacturing‐製造業の未来を保証する

3D ソリューションといえばCAD・CAM・CAEといわれ、製造ソリューションとしてのCAM(英:
computer-aided manufacturing コンピュータ支援製造)は重要な要素になります。
ソリッドワークスにはそのソリューションとしてSOLIDWORKS CAMがあり、他社のCAMソリューションとの連携も行われています。

また、最近では、CAMだけではなく、3Dデータとの連携を行う製造ソリューションとしては、調達から製造に至るまでの広範囲の製造工程を管理・シミュレーションするソリューションが注目されています。

今回も同社のDELMIAWORKSが紹介されました。DELMIAWORKSは、製造プロセス向けのERPシステムです。

DELMIAを使用した工場の製造工程最適化シミュレーション

DELMIAを使用した工場の製造工程最適化シミュレーション

日本の3D CADのカンファレンスでは、講演で製造ソリューションが取り上げられることはありませんが、3DEXPERIENCE WORLDでは、2019年にダラス開催から展示会場で工作機械の展示とデモンストレーションが行われることや、他の製造ソリューションの展示や講演が行われるようになり、北米では、製造領域への注力していることも実感するようになっています。

この3DEXPERIENCE WORLD 2023はDELIMIAユーザーのカンファレンスとしても開催されていました。日本とはカンファレンスの規模こそ異なりますが、製造業という”くくり”の中で、北米は一歩先を進んでいるように思えます。

製造プロセス向けのERP(英:enterprise resource planning )とは
ERPを日本語訳すると基幹システムになりますが、その内容の私の解釈は、見積もり~開発設計~調達~生産~出荷~入金という製造業のプロセスを管理すると同時に、例えば調達の遅延、製造工程の変化などの各工程に変化が生じた場合も最適化を行うようなシミュレーションができる仕組みだと考えます。

最適化された工場レイアウトで生産性を上げる

畜産機器、金属製建築フレームに必要な資材、精密工具やカスタム加工の金属部品など様々な金属加工を行うといった複数の事業部を持つBehlen Mfg. Co.のOperation Vice President AL BUSLOOM氏とProcess Engineer James Kucera氏から、話がありました。

同社の課題は、工場内の製品の出荷までの流れを管理することです。この課題の施策として工場レイアアウトの最適化を行うというものでした。

3Dマッピングによる工場の完全スキャニングとレイアウト最適化

3Dマッピングによる工場の完全スキャニングとレイアウト最適化

複数の事業部が混在し、新旧多くの機械が混在する工場レイアウトは複雑で、新たな機械導入計画もあるものの設置スペースがないという状況です。
この工場の工程や製品の流れをシミュレーションと工場全体を3Dモデルにより可視化することをいっています。各事業部の連携のもと、3Dモデルを利用して、製品の流れの最適化にための機械の再配置は、DELMIAによってシミュレーションが行われています。

5~10年後に本当に無駄のない工場にする。

と、いった言葉が印象に残りました。

コロナ禍で実現した仮想教室で3D技術を学ぶ

米国フロリダ州レイクランドにあるSleepy Hill Middle Schoolでの3D教育について紹介されました。Middle Schoolとは、日本でいう中学校になります。

コロナ禍においてもクラウドコンピューティングとなりインストールは不要で、完全にWEBブラウザーで実行できる3次元モデリングツール「3D Creator(xDesign:3D CAD)」によって、自宅で勉強できる環境を作り、学習や趣味に役立てているという事例でした。
さらには、自由曲面などを含む有機的な3次元形状のモデリングツールxShape(サーフェスモデリング製品) も使い、遊びの中からも学びをしているということです。生徒たちがクラウド環境で3Dモデリングについて学ぶ環境があるということ、中学校レベルでそれができるということに、その先進性を感じないではいられません。

日本でも見習うべきことだと感じます。

このような教育機関もソリッドワークのコミュニティーの重要な一部です。将来、3D技術を駆使して、創造性の高い「ものづくり」を行うエンジニアが、この環境の中から生まれてくることでしょう。

タブレットやラップトップ環境での3Dモデリングの学習

タブレットやラップトップ環境での3Dモデリングの学習

SOLIDWORKSコミュニティー

3DEXPERIENCE WORLDでは、ゼネラルセッション、ドメインセッション、数えきれないほどのテクニカルセッション、ハンズオンセッション、展示会場での展示、ユーザー同士のディスカッション、ユーザーグループサミット、パーティーが3日間の中で開かれます。私も朝から夜までスケジュールは全て埋まるほどです。

企業のユーザー、教育機関のユーザー、開発元、販売代理店といったSOLIDWORKSに関わる全ての人たちが参加する中で、気づきや新たなアイデアも生まれてきます。

ゼネラルセッションの会場にはユーザー、販売代理店、メディア、ソリッドワークスのソリューションを含めたパートナー企業、ソリッドワークス社社員など、全てのソリッドワークスに関わる人たちで満席です。
この規模感は初めて参加する人にはきっと驚きでしょう。

満席のゼネラルセッション会場(出展:SWUGN Dan Wagner)

満席のゼネラルセッション会場

出展:SWUGN Dan Wagner

Enhanced Request(機能改善要求)セッションは、世界中のソリッドワークスユーザーから寄せられた機能改善要求が発表され、議論される恒例のセッションです。

Enhanced Request(機能改善要求)セッション

Enhanced Request(機能改善要求)セッション

「こうなってほしい」「こうなると便利だ」という前向きな意見の機能改善から、実際のソリッドワークスの新バージョンにも反映されることもあるという、ユーザーフレンドリーなソリッドワークスの象徴でもあるセッションです。

展示会場にはソリューションだけではなく、ソリッドワークスによって開発設計された様々な製品展示も行われています。
画像は、EXOSAPIEN TECHNOLOGIES社による高さ4m×幅5.5m×奥行き5.1m、重量が4トンで、小型電気自動車と同等のリチウムイオンバッテリーを搭載したもので、搭乗人の体の動きをダイレクトに伝えてコントロールできるというメカスーツです。

EXOSAPIEN TECHNOLOGIES社の大型メカスーツ

EXOSAPIEN TECHNOLOGIES社の大型メカスーツ

Magic Wheelchairという非営利団体は、車椅子の子供たちのために車椅子をデコレーションしています。ソリッドワークスのコミュニティメンバーも参加し、ソリッドワークス社も支援しています。

Magic Wheelchairのデコレーションした車椅子

Magic Wheelchairのデコレーションした車椅子

展示会場が開場される前に撮影しました。非常に広い空間で、ここだけでも見切れないほどの展示があります。ソリューションの展示では、3D CADをパラメータ設定によって様々なバリエーション管理ができるDriveWorks など、ソリッドワークスと連携する製品展示が行われています。

開場前の展示会場の様子

開場前の展示会場の様子

ナッシュビルのメインストリートの一部を貸し切って、全てのソリッドワークスコミュニティーメンバーが参加したスペシャルイベントに参加しました。音楽LIVEを聴きながら、だれでも話ができるこのイベントは一度体験するとやめられません。
そこではソリッドワークスという共通部分を持った人たちの出会いが生まれ、私も多くの友人ができました。他にもソリッドワークス認定資格者技術者だけが参加できるパーティーも行われます。

ミュージックバーが立ち並ぶナッシュビルミュージックバーを貸し切ったパーティー

ミュージックバーが立ち並ぶナッシュビルミュージックバーを貸し切ったパーティー

私も長野県のグループ、アジア地区のリーダーとして、ソリッドワークス社の正式なユーザーグループのSOLIDWORKS USERGROUP NETWORK(SWUGN)に参加しています。

SWUGN SUMMITの様子(出典:SWUGN Dan Wagner)

SWUGN SUMMITの様子

出典:SWUGN Dan Wagner

3DEXPERIENCE WORLDでは、サミットとよばれる各地のリーダーやグループメンバーが参加するミーティングが行われます。ここに参加するメンバーは、日々ソリッドワークスを使う人たちです。
自分が使うだけではなく、新しいユーザーにアドバイスも行っているソリッドワークスに情熱を持った人たちです。

サミットではグループの運営方法や、テクニカルな話も議論されます。ここでもまた、重要なのがネットワーキングです。私も参加のたびに同士であり友人が生まれています。

このユーザーグループと、これを支援してくれるソリッドワークス社のUser Advocacyパーティーも開催されました。写真は教育にも熱心なアメリカの女性グループリーダーと、アジアオセアニア地区で一緒にリーダーをつとめるオーストラリアのリーダーです。

User Advocacyパーティーの様子

User Advocacyパーティーの様子

SWUGN SUMMIT SWUGNリーダー集合(出典:SWUGN)

SWUGN SUMMIT SWUGNリーダー集合

出典:SWUGN

3DEXPERIENCE WORLD 2023レポートまとめ

3年間待った3DEXPERIENCE WORLD 2023も、オンラインとは全く違う”熱”を感じ「あっ」という間
に、過ぎてしまった3日間でした。日本でのコロナ禍、もしかしたら停滞したかもしれない「ものづくり」の業界だったかもしれませんが、私が会場で感じた北米での雰囲気は、「確実に動いていた」というものでした。

今回の3DEXPERIENCE WORLD 2023では、

  • クラウド環境における3DEXPERIENCEプラットフォームの可能性
  • 進化し続ける開発設計製造環境

を、これまで以上に強く感じました。

クラウドコンピューティングによる3DEXPERIENCEプラットフォームは北米では既に実現しているという実感と、その潮流は、いずれ日本にもその影響を及ぼすことだろうという実感を得ました。

“まだ早い”のではなく、5年後、10年後を見据えた開発設計製造環境を考えるべき。

次回の「3DEXPERIENCE WORLD 2024」は、2024年2月11日~14日にテキサス州ダラスで開催されます。1年後世界はどう動き、開発設計製造環境はどんな変化を見せてくれるのでしょうか。

「3DEXPERIENCE WORLD 2024」は、2024年2月にテキサス州ダラスで開催予定

「3DEXPERIENCE WORLD 2024」は、2024年2月にテキサス州ダラスで開催予定

私も切磋琢磨をしつつ、再び多くのコミュニティメンバーとソリッドワークスについて話をすることが楽しみでなりません。

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