デジタルトランスフォーメーションの先をよむ - 今、そこにある未来 -プロフェッショナル連載記事

発想する次の時代に向けて-期待値のピークにある生成AIはテクノロジーへイノベーションを起こすのか

3DEXPERIENCE World Japan 2023
参加レポート

2023年12月1日ソリッドワークス・ジャパンの年次カンファレンス『3DEXPERIENCE World Japan 2023』が虎ノ門ヒルズフォーラムにて開催されました。
今回のテーマは、「IMAGINE~発想する次の時代に向けて~」です。「発想する次の時代とは何か」について、開発設計環境がプラットフォームによってどう変わるのか、開発設計環境におけるAIの活用の可能性を視点に、私からユーザーの視点でレポートをします。

IMAGINE「3DEXPERIENCE World Japan 2023」オープニング

開発設計ソリューションにとって生成AIは重要なテクノロジー

会場はソリッドワークスに関わる人々のコミュニティによって会場が埋め尽くされています。
基調講演がダッソー・システムズ株式会社 代表取締役社長 フィリップ・ゴドブ氏の挨拶により始まります。

ダッソー・システムズ株式会社 代表取締役社長 フィリップ・ゴドブ氏

ダッソー・システムズ株式会社 代表取締役社長 フィリップ・ゴドブ氏

ゴドブ氏から「期待値のピークにある生成AIはテクノロジーへイノベーションを起こすのか」という話がありました。この話のポイントは、開発設計ソリューションにとっても生成AIは重要なテクノロジーであるということになります。

私は、生成AIが期待値のピークにあることをガートナージャパン株式会社が発表した「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2023年」で調べてみました。ここには、2023年生成AIが「過度な期待のピーク期」にあることが表されています。

日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2023年_出典:ガートナージャパン株式会社

日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2023年

出典:ガートナージャパン株式会社

ハイプ・サイクルは新しいテクノロジーがどれだけ社会に受け入れられているかを示したものです。
「過度な期待のピーク値」というのは、「社会でのその盛り上がりは行き過ぎているが大きな期待がある」ということを示しています。「期待値のピークにある生成AIはテクノロジーへイノベーションを起こすのか」ということを提起したダッソー・システムズ社、またソリッドワークス社でも生成AIでソリューションを組み込むための技術課題が解決されていくことは間違いないと私は考えています。

近い将来、いろいろな3D CADに関連するソリューションに生成AIが組み込まれていくことになるのでしょう。

人、アイデア、データ、ソリューションを結んで価値が創造される場所

ジャン・パオロ・バッシ氏からは「3DEXPERIENCE Works」について話が始まります。

3DEXPERIENCE Works&CRE担当 シニアバイスプレジデント ジャン・パオロ・バッシ氏

3DEXPERIENCE Works&CRE担当 シニアバイスプレジデント ジャン・パオロ・バッシ氏

3DEXPERIENCE Worksはまだまだ日本での認知度は低いかもしれません。
3DEXPERIENCE Worksとは、これまでおよび現在も存在するデスクトップ版SOLIDWORKSの特徴とプラットフォームを組み合わせた製品群(ポートフォリオ)を指します。

日本国内外を問わず、ソリッドワークス社のセミナーやカンファレンスでは、「いつでも、どこでも、どんなデバイスでも」という言葉が何度も繰り返し使われますが、私もデスクトップ版をクラウドプラットフォームにつなげてデータを共有する仕組みや、プラットフォーム上にある完全クラウド版のxdesignという3D CADの使用することで、EXPERIENCEを得ました。

このEXPERIENCEはこの後、解説しますが、私の場合は、まさに「いつでも、どこでも、どんなデバイスでも」を経験しています。

図 筆者のiPhoneで3DExperienceプラット7フォーム 3DPlayからモデルを見る

図 筆者のiPhoneで3DExperienceプラット7フォーム 3DPlayからモデルを見る

図のようにスマートフォンから3DExperienceプラットフォームに繋げ、3DPlayからモデルを見ることも問題なくできます。
ローカルマシンではなく、プラットフォーム上に3D CADデータが共有されているということは、プラットフォームを情報が行き来する場所とした開発設計環境の再構築と、製造業での開発設計から製造に至るまで協力会社などの水平統合への対応やその期待を感じています。

水平統合 特定の工程を担う複数の企業が一体化することをいいます。例えば、同一の製品やサービスを提供する企業が連携することをいいます。
垂直統合 水平統合に対し、商品・サービス供給に必要な工程の範囲を広げることをいいます。例えば、複数の企業(グループ)が一体化することをいいます。

デスクトップ版ソリッドワークスでも、CAEやPDMなどのソリューションが連携し運用できているので、3DEXPERIENCEの良さを理解しにくい-かもしれませんが、クラウドプラットフォームはただの物理的な場所を示しているのではありません。

図 人、アイデア、データ、ソリューションを結ぶことで価値が創造される_出典:ソリッドワークス・ジャパン

図 人、アイデア、データ、ソリューションを結ぶことで価値が創造される

出典:ソリッドワークス・ジャパン

プラットフォームとは

  • クラウド上の設計データを編集することが出来る人
  • 設計データからCAEを行う人
  • 設計情報やCAEの状況を確認してアドバイスを行う人

と、いうように「人、アイデア、データ、ソリューションを結んで価値が創造される場所」がプラットフォームだということです。

EXPERIENCE(経験)を得るためのRe-IMAGINE(再考)

マニッシュ・クマー氏からは「EXPERIENCE」について説明がありました。

SOLIDWORKS CEO 兼 R&D担当バイスプレジデント マニッシュ・クマー氏

SOLIDWORKS CEO 兼 R&D担当バイスプレジデント マニッシュ・クマー氏

マニッシュ・クマー氏:

人々が求めているのは開発設計された製品だけを欲しているのではなく、それを触った、使ったことによって得られる喜びや感動という経験である。もちろんその製品はその価値に十分な機能を有し、適切な価格であり、適切な納期で提供される。(筆者解釈)

私もこのEXPERIENCE=経験というものが、これまで何回聞いていてもピンときていませんでしたが、確かに自分自身を考えてもそうだと思います。

私が好きな車を例にとれば、ただ単に車が欲しいというだけではなくて、運転席に座った時、運転した時、外から見た時の感動を求めています。それこそがEXPERIENCEということです。
売り手としてみれば、そのEXPERIENCEを提供できるのかどうかが重要です。

AI技術で新たな開発設計時代

あらゆる製品において、EXPERIENCEを体験するためには、どう開発設計すべきなのか。
これが、「Re-Imagine Design=デザインを再考する」を進めていくことになります。

図 Re-Imagine Designとは_「SCALABLE PORTFOLIO TO MEET YOUR NEEDS」、「COLLABORATIVE DESIGN IN THE CLOUD」、「PROTECTING YOUR FUTURE」_出典:ソリッドワークス・ジャパン

図 Re-Imagine Designとは

出典:ソリッドワークス・ジャパン

「Re-Imagine Design」には何が必要なのか、マニッシュ・クマー氏のお話から、私は次のような流れでまとめました。

SCALABLE PORTFOLIO TO MEET YOUR NEEDS

ニーズを満たす拡張可能な開発設計にための製品群

COLLABORATIVE DESIGN IN THE CLOUD

クラウドプラットフォームでの価値創造のためのコラボレーション設計

PROTECTING YOUR FUTURE

革新的な未来の技術の創造

「PROTECTING YOUR FUTURE」については、直接日本語訳すれば、「あなたの未来を守る」となりますが、私は、Re-Imagine Designというものが、単に未来を守るというよりは、より攻めていくものとして「革新的な未来の技術の創造」と訳しています。このデザインの再考を満足させる中心にあるものが、クラウドプラットフォームだということです。

3D CAD需要が伸びた時期、サイマルテニアス・エンジニアリング(Simultaneous Engineering)やコンカレントエンジニアリング(Concurrent Engineering)という言葉をよく聞きました。どちらも、同時進行型の開発設計を示しています。

これが進化して、またさらにはAIという技術によって新たな開発設計時代=発想する次の時代になろうとしています。

まとめ

今回はプレスとしてプレスルームで行われる記者のみだけの会見にも参加することができました。
開発設計環境におけるAIの活用の可能性については、レンダリングでの活用での説明にとどまりましたが、AIという技術によって新たな開発設計時代に移ろうとしていることを基調講演から感じることができました。
この講演では発表できないものの、「AI利用技術がきっと何かある。」という印象を受けました。

3DEXPERIENCE WORLD JAPAN2023で話されたSOLIDWORKSに関わる内容は、2023年の初めにアメリカで開催された3DEXPERIENCE WORLD2023での内容をほぼ占めていますが、それ以降の生成AIの話題はこの1年で目覚ましいものがあり、今も進化しています。

ソリッドワークス・ジャパンの田口氏、ダッソー・システムズの高橋氏からのお話からも、開発設計段階についてAIによって実現できることを考えてみると、AIによって次の内容が実現できるに期待を持てます。

  • 徹底的な製品設計検証による開発設計段階での高品質化
  • 設計品質向上により手戻り作業削減がされ、製品リリースまでが短縮されることによる短納期化
  • 高品質化と短納期化によるコストダウン

このような効果を得て成果物となった機械部品を一例にすると、その効果はさらに繋がります。
2024年アメリカ ダラスで開催される3DEXPERIENCE WORLD2024では、AI・プラットフォーム・クラウドというキーワードからどんな話がされるのか、ますます楽しみになってきました。いずれ皆さんにご報告できることでしょう。

次回はAutodesk(オートデスク)社が進める「ジェネレーティブデザイン」と「AI」についてお話します。
お楽しみに。