プロフェッショナル連載記事 製造現場から褒められる部品設計の秘訣

ステンレス(SUS)の特徴や設備部品での選び方を解説(後編)- 丸パイプ材、板材、アングル材など

生産設備や装置の設計者さん向けに、“タメになる”部品設計の秘訣について、製造現場目線で情報を共有させていただくシリーズ第14回の後編です。

※ステンレスの特徴、表面仕上げ、溶接と仕上げ、ブロック材や丸パイプ材の特徴は「設備部品でよく使われるステンレスの特徴や選び方を解説(前編)」をご覧ください。

6. ステンレス材料のうち丸パイプ材の特徴

ステンレス材料のうち、リング形状の部品やフレーム構造に用いられる丸パイプ材の特徴について解説します。

ステンレス材料のうち丸パイプ材の特徴

ステンレスの丸パイプ材は、鉄系材料と同様に非常に多くの種類や規格サイズがあります。ステンレス特有の「表面処理がいらない」という特徴から、医療や食品、各種産業分野での流体移送用の配管などとして使用されることも多いですね。

通常の溶接パイプはもちろん、サニタリー管、シームレスパイプや、BA管・EP管といった種類もあります。

パイプ材はJIS規格で定められているものだけでも多種多様にわたります。

JIS G 3447サニタリー管
内外面を#400研磨したパイプ材JIS G 3448 一般配管用ステンレス鋼鋼管
給水、給湯、排水用などの配管用JIS G 3459 配管用ステンレス鋼鋼管
耐食用、低温用、高温用などの配管に用いる鋼管JIS G 3463 ボイラ・熱交換機用ステンレス鋼鋼管
管の内外で熱の授受をするために使用するステンレス鋼鋼管JIS G 3467 加熱炉用鋼管
石油精製工業、石油化学工業などの加熱炉において使用される鋼管JIS G 3468 配管用溶接大径ステンレス鋼鋼管
耐食用、低温用、高温用などの配管に用いる溶接大径ステンレス鋼鋼管

パイプ材を使用する用途も多岐にわたると思います。
リング状の切削加工部品の素材、フレーム形状の製缶加工用素材、配管や函体としての利用などが考えられますね。

全ての規格をご紹介するのは、この紙面では困難ですので、ここでは代表的なステンレス丸パイプ材の規格寸法をご紹介します。基本的には自社の商流などを確認した上で、必要となる規格の入手可能性について確認してください。

まずは、製缶加工でよく使われる化粧パイプです。
仕上がりが#400研磨仕上げとHL仕上げを選べるのが一般的です。

表6-1 ステンレス材料丸パイプの標準寸法(化粧パイプ)

表6-1 ステンレス材料 丸パイプ

表6-1 ステンレス材料丸パイプの標準寸法(化粧パイプ)※材料業者提供情報より、筆者にて作成

材料業者提供情報より、筆者にて作成

溶接の継ぎ目がなく、肉厚のシームレスパイプは配管等だけでなく、機械加工用の素材として良く利用されます。

表6-2 ステンレス材料 丸パイプの標準寸法(シームレスパイプ)(1/2)

外径 厚さ 外径 厚さ
2 0.5 C 36 3, 4, 5, 5.5, 8 H
2.5 0.5 C 9.0 C
3 0.5, 1 C 38 1, 1.2, 1.4, 2 C
3.5 0.5 C 3, 3.5, 4, 4.5, 5, 5.5, 6, 7, 8, 9 H
4 0.5, 1 C 40 1, 1.5, 2 C
5 0.5, 1, 1.5 C 3, 3.5, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10 H
6 0.5, 0.8, 1, 1.2, 1.5, 2 C 42 10 H
6.35 0.5, 0.89, 1, 1.2, 1.5 C 42.7 1.65, 2.8 C
7 0.5, 0.8, 1, 1.5, 2 C 2.8, 3, 3.6, 4, 4.5, 4.9, 6.4, 7, 8, 9.5 H
8 0.5, 0.8, 1.2, 1.5, 2, 2.5 C 44 5 H
9 0.5, 0.8, 1, 1.2, 1.5, 2 C 45 2 C
9.53 0.5, 0.89, 1, 1.2, 1.5, 2 C 3, 4, 5, 5.5, 6.5, 7, 8, 10, 11.5, 12.5 H
10 0.5, 0.8, 1, 1.2, 15, 2, 2.5, 3.0 C 48.6 1.65, 2, 2.8, 3.7, 5.1 C
10.5 1, 1.2, 1.5, 1.7, 2, 2.4 C 2.8, 3, 3.5, 3.7, 4, 5.1, 6, 7.1, 8, 10.2 H
11 0.5, 0.8, 1, 1.5, 2, 3 C 50 7, 9, 12.5, 14 H
12 0.5, 0.8, 1, 1.2, 1.5, 2, 2.5, 3 C 50.8 1.5, 2 C
12.7 0.5, 0.89, 1, 1.2, 1.5, 1.65, 2, 3 C 3, 4, 5, 5.5, 6, 7, 8, 10 H
13 0.5, 0.8, 1, 1.2, 1.5, 2, 2.5, 3 C 52 6, 7.5, 10, 14 H
13.8 1, 1.2, 1.65, 2, 2.2, 3 C 54 2, 3, 3.5, 4, 5, 6, 9, 15 H
14 0.5, 0.8, 1, 1.5, 2, 2.5, 3 C 55 2, 5, 55, 8 H
15 0.8, 1, 1.2, 1.5, 2, 2.5, 3, 4 C 56 3, 8, 10, 14, 17 H
15.9 0.89 C 57 2, 3, 4, 6, 7.5 H
16 1, 1.2, 1.5, 2, 2.5, 3, 4 C 60 7, 12.5, 15, 17.5 H
17 0.5, 0.8, 1, 1.5 C 60.5 1.65, 2, 2.8, 3.9, 5.5 C
17.3 1.2, 1.65, 2, 2.3, 3.2, 4 C 2.8, 3, 3.5, 3.9, 4.9, 5.5, 6, 8.7, 10, 11.1 H
18 0.5, 0.8, 1, 1.2, 1.5, 2, 2.5, 3, 4 C 63 8, 11.5, 15.5, 17.5 H
19 0.5, 0.8, 1, 1.2, 1.5, 2, 2.5, 3, 4 C 63.5 2, 3, 4, 5, 65, 10 H
20 0.5, 0.8, 1, 1.5, 2, 2.5, 3, 4, 5 C 65 2, 3, 3.5, 4, 5, 6, 8.5, 10, 12, 15, 18, 20 H
21.7 1.2, 1.65, 2.1, 2.5, 2.8, 3.7, 4.7, 7.5 C 68 6, 8 H
22 0.5, 0.8, 1, 1.5, 2, 2.5, 3, 4.5 C 70 3, 4, 5, 6.5, 8, 10, 12.5, 15, 20 H
23 1, 1.5, 2.0, 3 C 71 13, 17.5 H
24 1, 2, 4 C 73 10, 12.5, 15 H
25 0.5, 1, 2, 2.5, 3, 4, 5, 5.5, 6 C 76.3 3, 3.5, 4, 5.2, 6, 7, 8, 9.5, 10, 13.5, 15, 18, 20, 23 H
25.4 1.2, 1.5, 2, 2.5, 3, 3.5, 4, 4.5 C
27.2 1.2, 1.65, 2.1, 2.5, 2.9, 3.9, 4.5, 5.5, 7.8 C 80 3, 4, 5, 6, 8.5, 10, 12.5, 15, 17.5, 20, 25 H
28 1, 1.5, 2, 3, 4, 5, 6.5, 7.5 C 81 6 H
30 1, 1.5, 2, 2.5, 3, 3.5, 4, 5, 6, 8 C 82.6 3, 5 H
32 1, 1.2, 1.5, 2, 3, 3.5, 4, 5. 6, 7, 8 C 83 85, 10 H
34 1, 1.2, 1.65, 2, 2.5, 2.8, 3, 3.4, 4.5, 6.4, 9.1 C 85 8.5, 10, 12.5, 15, 20, 25 H
2.8, 3, 3.4, 4. 4.5, 5. H 89.1 2.1, 3, 4, 5, 5.5, 6.6, 7.6, 11.1, 15.2 H
35 5 H 90 10, 13.5, 16, 20, 22.5, 25 H

H:ホット材、 C:コールド材
表はSUS304のもの、SUS316, SUS316Lも類似のラインナップ

 

表6-3 ステンレス材料 丸パイプの標準寸法(シームレスパイプ) (2/2)

材質: SUS304

外径 厚さ 外径 厚さ
95 10, 12.5, 14.5, 16, 20, 22.5, 25 H 165.2 5, 7.1, 9.3, 11, 14.3, 18.2, 21.9, 24 H
100 10, 14.5, 17.5, 22 H 27, 30 H
101.6 2.1*, 3, 4, 5.7, 7, 8.1 12.7, 15, 20, 26 H 170 10, 15, 20, 25 H
105 9 H 175 10, 15 H
106 10, 13, 175, 25 H 180 10, 15, 20, 27.5, 30 H
110 10, 13, 20 H 185 10, 15 H
112 16, 24.5 H 190 10, 15, 20, 28, 30 H
114.3 2.1*, 3, 4, 5, 6, 7.1, 8.6, 11.1, 13.5, 17.1 H 190.7 10 H
20, 25 200 10, 15, 20, 25, 28, 30 H
118 14 H 212 21, 41 H
120 4, 5, 8, 10, 13, 15, 20, 25, 30 H 216.3 2.8*, 4*, 6.5, 8.2, 10.3, 12.7, 18.2, 23 H
125 5, 10, 12.5, 17.5, 22.5, 27 H 27, 28, 30, 42
127 5, 6, 8, 10 H 224 42 H
130 12.5, 20 H 232 9, 16, 21, 23, 43 H
132 10, 13, 16, 21, 26, 30.5 H 236 23, 43 H
139.8 2.8*, 3.4*, 5, 6.6, 9.5, 12.7, 15.9, 21, 25 H 250 25, 30 H
140 14, 20, 30 H 267.4 4*, 6.5, 9.3, 15.1, 18.2, 21.4, 28.6 H
145 10, 13, 20, 25 H 318.5 4.5*, 10.3, 17.4, 21.4, 25.4, 33.3 H
150 10, 12.5, 15, 22, 30, 35 H 355.6 11.1, 19 H
152.4 10 H 406.4 12.7 H
155 10, 15, 20, 26 H  

 

160 5, 10, 15, 20, 24, 29 H

H:ホット材(*がつくもののみコールド材)
表はSUS304のもの、SUS316, SUS316Lも類似のラインナップ

材料業者提供情報より、筆者にて作成

 

内外径が#400研磨されたサニタリー管も規格サイズを知っておくと役立つと思います。

表6-4 ステンレス材料 丸パイプの標準寸法(サニタリー管)

表6-4 ステンレス材料 丸パイプ

外径 D 厚さ t
25.4 1.2
31.8 1.2
38.1 1.2
50.8 1.5
63.5 2.0
76.3 2.0
89.1 2.0
101.6 2.0
114.3 3.0
139.8 3.0
165.2 3.0

JIS G 3447より抜粋

 7. ステンレス材料のうち板材の特徴

ステンレス材料のうち、主に板金加工部品に用いられる板材の特徴について解説します。

ステンレス材料のうち、板材の特徴

板材は主にレーザーカットやタレットパンチなどの精密板金加工が施され、板金加工部品として使用されますね。

図7のように簡単な板金ブラケットや、装置の筐体・カバーなどに利用されることが多いと思います。

図7-1 板金加工部品の例

図7-1 板金加工部品の例

板材には冷間圧延ステンレス鋼材板と熱間圧延ステンレス鋼材板があります。板厚が薄いものは冷間圧延ステンレス鋼板で比較的表面がきれい2Bの状態が基本となります。

また、ヘアライン仕上げや#400研磨済みの材料もあります。

板厚が厚くなると熱間ステンレス鋼材板となり、表面もざらざらとしたNo,1の状態が基本となります。

また、エッチング材と呼ばれる装飾を施した意匠性の高い材料も多く出回っています。儀礼用の備品などに良く利用される材料ですね。

図7-2 エッチング材の例(筆者にて撮影)

図7-2 エッチング材の例(筆者にて撮影)

 

表7-1 ステンレス材料 板材の標準寸法

材質: SUS304, SUS316, SUS316L他

材料種類 板厚 表面状態 板厚×長さ
冷間圧延
ステンレス鋼材板
(JIS G 4305)
0.3, 1.2, 7.0
0.4, 1.5,8.0
0.5, 2.0, 9.0
0.6, 2.5, 10.0
0.7, 3.0, 12.0
0.8, 4.0, 15.0
0.9, 5.0, 20.0
1.0, 6.0
No.2D, No2B, No.3
No.4, #240, #320
#400, BA, HL
メーター板:1,000×2,000
シハチ板:1,219×2,438
ゴットー板:1,524×3,048
熱間圧延
ステンレス鋼材板
(JIS G 4304)
2.0, 5.0,9.0, 20.0
2.5, 6.0, 10.0, 25.0
3.0, 7.0, 12.0, 30.0
4.0, 8.0, 15.0, 35.0
No.1, No.3, No.4
#240, #320, #400

JIS G 4304

特別な理由がない限り、ステンレスの板材はSUS304が利用され、流通量も最も多くなります。

実際には厚み6mm程度までは冷間圧延ステンレス鋼板が利用されることが一般的ですね。表面状態は2B、#400, BA, ヘアライン(HL)が一般的です。基本的に#400やヘアライン処理は片側のみ処理された素材が多く流通しています。

6mmよりも厚い材料は熱間圧延ステンレス鋼板材が利用され、一般的にNo.1が流通しています。 

8. ステンレス材料のうち平鋼の特徴

ステンレス材料のうち、機械加工や製缶加工に汎用的に利用される平鋼(フラットバー)の特徴について解説します。

ステンレス材料のうち平鋼(フラットバー)の特徴

フラットバーは規格の厚みと幅を持っているので、切断するだけで所望のプレート形状を実現できます。精度を比較的必要としないブラケットや製缶加工用の部材として利用されることが多いです。

使いどころを覚えると非常に使い勝手の良い素材です。
是非規格サイズを覚えておくと良いと思います。

表8-1 ステンレス材料 フラットバー(平鋼)の標準寸法 (1/2)

表8-1 ステンレス材料 フラットバー
表8-1 ステンレス材料 フラットバー(平鋼)の標準寸法(1/2)※材料業者提供情報より、筆者にて作成
C: コールド材、 H: ホット材、 L: ヘアライン材、 4: #400研磨材 材質はSUS304

材料業者提供情報より、筆者にて作成

 

表8-2 ステンレス材料 フラットバー(平鋼)の標準寸法(2/2)

表8-2 ステンレス材料 フラットバー
表8-2 ステンレス材料 フラットバー(平鋼)の標準寸法(2/2)※材料業者提供情報より、筆者にて作成
H: ホット材

材料業者提供情報より、筆者にて作成

9. ステンレス材料のうち角パイプ材、アングル材、チャンネル材の特徴

ステンレス材料のうち、主に製缶加工でフレーム形状の構造体に用いられる角パイプ材、アングル材、チャンネル材について解説します。

ステンレス材料のうち、角パイプ材、アングル材、チャンネル材

これらの材料は、主に製缶加工によってフレーム形状の部材として利用されることが多いですね。基本的にはNo,1の表面になりますが、外側のみ研磨した材料なども流通しています。

また、アングル材は板材をまげてL字にした「フォーミングアングル」も一般的に利用されます。

図9-1 フォーミングアングルのイメージ

図9-1 フォーミングアングルのイメージ

 

表9-1 ステンレス材料 角パイプの標準寸法 正方形

表9-1 ステンレス材料 角パイプ
表9-1 ステンレス材料 角パイプの標準寸法 正方形※材質はSUS304 材料業者提供情報より、筆者にて作成
L:ヘアライン材、 4:#400研磨材、N:未研磨材

材質はSUS304 材料業者提供情報より、筆者にて作成

 

表9-2 ステンレス材料 角パイプの標準寸法 長方形

表9-2 ステンレス材料 角パイプ
表9-2 ステンレス材料 角パイプの標準寸法 長方形※材質はSUS304 材料業者提供情報より、筆者にて作成
L: ヘアライン材、 4: #400研磨材、N: 未研磨材

材質はSUS304 材料業者提供情報より、筆者にて作成

 

表9-3 ステンレス材料 アングル材の標準寸法

表9-3 ステンレス材料 アングル材
表9-3 ステンレス材料 アングル材の標準寸法※材料業者提供情報より、筆者にて作成
C:コールド材、 H:ホット材、 L:ヘアライン材、 4:#400研磨材 材質はSUS304

材料業者提供情報より、筆者にて作成

 

表9-4ステンレス材料 チャンネル材(溝形鋼)の標準寸法

表9-4 ステンレス材料 チャンネル材
表9-4 ステンレス材料 チャンネル材(溝形鋼)の標準寸法

10. まとめ

今回は、設備部品でよく使われる材料のうち、ステンレスの特徴や選び方について解説しました。

ステンレスは流通量も多く、多様な規格や表面処理の素材が存在する汎用性の高い材料ですね。

塗装やメッキが不要な利点を生かして、異物混入の要求が高く鉄ではカバーできない医療や食品加工、半導体の領域で多用される材料です。

今回は表面仕上げや溶接の後処理、素材の標準寸法の一般的な内容を解説しましたが、更に多くの規格や特徴を持った奥深い材料だと思います。

今回の内容を、ステンレスを使いこなす設計の基本情報として、ぜひお役立ていただければ幸いです。

 

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