全振れの記号は
「移動するダイヤルゲージの針」と覚える
今回のシリーズ記事は、グローバル図面に必須となる幾何公差の意味と、図面における基本ルールを解説していきます。
第20回目となる今回は、前回取り上げた位置偏差に続いて、4つ目のグループである振れ偏差の詳細について触れていきます。
その中でも今回は、振れ偏差というグループに含まれる 「全振れ」 をテーマに、意味や記号の使い方をわかりやすくまとめていきます。
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目次
1.振れ偏差とは
振れ偏差は関連形体に分類され、データムに関連して幾何偏差が決められる形体になります。
振れ偏差には次の2つの幾何特性があります。
・円周振れ
・全振れ ←今回解説する幾何特性
2.全振れとは
全振れは「データム軸直線を軸とする円筒面をもつべき対象物又はデータム軸直線に対して垂直な円形平面であるべき対象物をデータム軸直線の周りに回転したとき,その表面が指定した方向(*)に変位する大きさ」と定義されます。全振れはデータムを必要とします。
*)指定した方向とは,データム軸直線と交わりデータム軸直線に対して垂直な方向(半径方向),データム軸直線に平行な方向(軸方向)をいう。
全振れの読み方は人によって「ぜんふれ」と「ぜんぶれ」のようにばらつきがあります。JISを確認する限り読み方までは明記されていませんので、どちらで読んでもよいと考えます。
3.全振れの記号と記入のルール
全振れを図面に表現する場合、公差記入枠に全振れの記号と幾何公差値、必要に応じてその他の記号、データム記号を記入します。公差記入枠は3つ以上の区画のものを使います(図20-1)。

図20-1 全振れの記入例
全振れの対象となる形体は、データム中心線を基準に回転した際の円筒表面や軸直角の表面です。従って、その表面を挟み込む2面間が公差領域となります(図20-2)。

図20-2 全振れの公差領域のパターン
4.全振れを適用する形状
全振れを適用する形状は、直径に寸法変化のない円筒面、あるいは軸直角の平面に指示します(表20-1)。
表20-1 全振れを適用する形状例
| 適用する形状例 | データム | 対象形体 | 補助記号 | ||
| 全振れ | サイズ変化のない円筒表面 | ![]() |
要 | 母線
(断続形体) |
–
(CZ) |
| 軸直角の平面
|
![]() |
要 | 母線
(断続形体) |
–
(CZ) |
|
![]() |
|||||
前回解説した円周振れと全振れの違いを説明します。
円周振れは線で評価をすることから、真っ直ぐな円筒形状の軸や穴に加えて、直径に寸法差があるテーパの軸や穴、ひょうたん形の軸や穴、球体、軸直角面が円すい形状や平面形状に適用することができます。
それに対して全振れは面全体で評価することから、サイズ変化を伴わない真っ直ぐな円筒軸や円筒穴、軸直角の平面にしか指示することはできません(表20-2)。
表20-2 円周振れと全振れの適用できる形体の違い
| 円周振れが適用できる形体の例 | 全振れが適用できる形体の例 |
直径に変化のない円筒面上の母線 |
直径に変化のない円筒表面 |
軸直角な円環平面上の母線 |
軸直角な円環平面 |
直径に変化のあるテーパ面上の母線 |
平らな軸直角端面 |
直径に変化のある曲面上の母線 |
|
平らな軸直角端面上の母線 |
5.全振れの図面と公差領域
図面に全振れを指示する場合の設計意図と図面指示例、公差領域を解説します。
①円筒面に全振れを指示する場合
設計意図
両端にある軸受で軸を支えつつ、回転した際に断続する円筒面と壁のすき間を保証したいために円筒面が振れて欲しくない(図20-3)。

図20-3 軸受で支持された断続する円筒面全体が振れて欲しくないという設計意図
図面指示
2つの軸受で支持されている2本の軸部の中心線を共通データム「A-B」として指示します。共通データム「A-B」を中心に回転したときに振れを規制したい断続する円筒面全体を記号CZととともに全振れを指示します(図20-4)。

a) 指示部を個数表記した例

b) 指示部のそれぞれに矢を示した例
図20-4 全振れを円筒面に指示した例
公差領域
検査対象となる断続する円筒表面は共通データムA-Bの中心線基準で回転したとき、データム軸に平行な半径で0.1mm離れた2円筒面の間の領域で規制されます(図20-5)。

図20-5 全振れを円筒面に指示したときの公差領域
②軸直角の平面に全振れを指示する場合
設計意図
2つの軸受で片持ち軸を支えつつ、回転した際に軸直角の平面と壁とのすき間を保証したいために軸直角の平面が振れて欲しくない(図20-6)。

図20-6 軸受で支えられた軸直角の平面全体が振れて欲しくないという設計意図
図面指示
2つの軸受で支持されている部分の中心線を共通データムA-Bとして指示します。共通データムA-Bを中心に回転したときに振れを規制したい部分に全振れを指示します(図20-7)。

図20-7 全振れを軸直角の平面に指示した例
公差領域
検査対象となる軸直角の平面は共通データムAの中心線基準で回転したとき、データム軸に直角な0.1mm離れた2面間の領域で規制されます(図20-8)。

図20-8 全振れを軸直角の平面に指示したときの公差領域
6.全振れの検査方法
真円度測定機による測定
データムを参照する必要があるため、真円度測定機によって測定することができます(図20-9)。
図の赤い横線は、データムとして使用する円周の測定位置を示しています。真円度測定機はこの円周のデータから基準となる中心軸(縦の赤線)を算出し、その軸を基準に緑線の位置で全振れを評価します。

a)円筒面の全振れ測定

b)軸直角の平面の全振れ測定
図20-9 真円度測定機による測定
まとめ
今回は、振れ偏差に属する全振れを指示する際のルールについて解説しました。
円周振れと全振れの意味の違いも理解していただけたと思います。
全振れは真円度測定機で測定することができます。
Vブロックとダイヤルゲージの組み合わせでも可能ですが、円周振れに比べると測定が難しくなります。
全振れは、データム中心線を基準として軸を回転したときの円筒面や軸直角の平面の振れ幅を見ることがわかったと思います。
以上で幾何特性14種類について解説が完了です。
ここまでの連載を十分に理解し実務で応用していただければ幸いです。
1年にわたる連載のご購読に感謝いたします。
株式会社ラブノーツ/六自由度技術士事務所 山田学
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直径に変化のない円筒面上の母線
直径に変化のない円筒表面


