ポリカーボネートは透明性が高く、丈夫な樹脂材料として知られています。工業用途や一般用途で用いられることも多く、身近な樹脂の一つです。ここではポリカーボネートの特徴や用途、同じく透明樹脂として有名なアクリルとの違いなどについて解説していきます。

目次
ポリカーボネート(PC)とは?
ポリカーボネート(polycarbonate)とは、熱可塑性樹脂の一種で、高い透明性や耐衝撃性が特徴のエンジニアリングプラスチックです。省略してポリカともよばれ、材料記号ではPCと表記されます。有機ガラスともよばれ、カメラのレンズや、ヘッドランプのような光学用品のほか、パーテーションや水槽などのインテリア用品、防弾材料など、非常に幅広い用途に利用されています。

ポリカーボネートの化学式
化学構造の面から見ると、ポリカーボネートは分子の主鎖の中に炭酸エステル結合をもつ高分子化合物です。一般的に広く利用されているのはビスフェノールAを原料とするタイプで、分子内にベンゼン環を含む強固な構造をしているため、非常に高い耐衝撃性と耐熱性を発揮します。また、分子が規則的に並ばない「非晶性(アモルファス)樹脂」に分類されるため、光をそのまま透過させる性質があり、ガラスと同等の優れた透明性を実現しています。
ポリカーボネート(PC)の特徴
優れた性質をもち、さまざまなシーンで使用されるポリカーボネートには、さまざまなメリットがあります。一方でデメリットも存在します。それぞれのポイントを解説します。
ポリカーボネート(PC)のメリット
透明性が高い
ポリカーボネートは、ガラスに匹敵するほどの高い透明性を持っています。その透明度は一般的な樹脂の中でもトップクラスで、アクリル樹脂に次ぐレベルを誇ります。この特性を活かして光学機器のレンズや照明カバー、安全性が求められる学校や病院の窓ガラスの代替品として広く利用されています。透明度と割れにくさを両立できるため、視認性と安全性の双方が重要視される製品において、極めて有用な素材といえます。
耐衝撃性が高い
あらゆるプラスチック素材の中で、最高クラスの耐衝撃性を誇る点も大きなメリットです。「割れないプラスチック」と形容されるほど強靭で、外部から強い力が加わっても簡単には破損しません。そのため、警察や軍隊が使用する防弾シールドやヘルメット、航空機の窓など、人の命を守る重要な場面で活躍しています。ハンマーで叩いても壊れないほどの強さを持つため、過酷な環境下でも破損のリスクが低く、安全対策において信頼できる素材のひとつです。
耐候性が高い
屋外の過酷な環境で使用しても劣化しにくいという、優れた耐候性も備えています。一般的なプラスチック製品は、太陽光に含まれる紫外線や雨風にさらされると、短期間で変色したりひび割れて脆くなったりしやすいものです。しかし、ポリカーボネートは自然環境の影響を受けにくく、長期間にわたり物性を維持できます。頻繁なメンテナンスや交換が難しい屋外設備において、長く安心して使い続けられる頼もしい建材として重宝されています。
吸水性が低い
吸水性が低く、水濡れや湿気による影響をほとんど受けない点も見逃せない特徴です。木材や一部の樹脂のように水分を含んで膨張したり、乾燥して反ったりすることが少ないため、設計通りの寸法や形状を長く維持できます。湿度の変化が激しい場所や、直接水に触れるような環境であっても、素材の変形によるトラブルを心配する必要がありません。高い精度が求められる精密機器の部品や医療機器、屋外設置の電気メーターカバーなどにも適しています。
加工性が高い
用途に合わせて切断や穴あけといった加工が容易に行える点も魅力です。硬い素材でありながら衝撃に強いため、ドリルやノコギリを使っても素材自体が割れたり欠けたりするリスクが低いからです。また、熱を加えることで柔らかくなる熱可塑性の性質を持つため、曲げ加工や真空成形によって複雑な形状を作り出すことも可能です。プロの製造現場での部品加工やDIYなどでも手軽に扱えるため、加工のしやすさと丈夫さを兼ね備えた汎用性の高い素材として人気があります。
自己消火性が高い
万が一火がついてしまっても燃え広がりにくい、優れた自己消火性もメリットのひとつです。火源があるうちは燃えることがあっても、火元から離せば自然と火が消える性質を持っており、火災の拡大を抑制する効果が期待できます。木材や可燃性の高いプラスチックに比べて延焼のリスクを低減できるため、オフィスビルの間仕切りや電子機器のハウジング、公共施設の建材などで採用されており、火災事故に対する信頼性の高い材料として評価されています。
耐熱性が高い
プラスチック素材の中では熱に強く、幅広い温度環境で性能を発揮できる点も強みです。高温になっても溶けたり変形したりしにくく、逆に極低温の環境下でも素材が脆くなりにくいという特性があります。照明器具のカバーや自動車のエンジン周辺部品、寒冷地での屋外設備など、熱や冷気の影響を直接受ける場所でもその機能性を損なうことがないため、非常にタフで信頼性の高い素材として多くの産業で利用されています。
ポリカーボネート(PC)のデメリット
有機溶剤や界面活性剤に弱い
ポリカーボネートは、特定の薬品に対する耐久性が低いという弱点を持っています。特にアルカリ性の物質や有機溶剤などが付着すると、化学反応によって素材が劣化しやすいため注意が必要です。例えば、シンナーやアセトン、強力なアルカリ性洗剤などを使用すると、表面が白く変色したり、細かいひび割れが発生したりすることがあります。薬品に触れる環境で使用する際は、事前に詳細な耐薬品性を確認し、適切な対策を講じなければなりません。
傷が付きやすい
衝撃には強い一方で、表面には傷が付きやすいという性質を持っています。素材としての表面硬度はそれほど高くなく、硬いものと擦れ合うと容易に摩耗してしまうからです。たわしや硬い布で強く拭いたり、砂埃が付着したまま乾拭きしたりするだけで、表面に細かいすり傷が残ってしまうことがあります。そのため、用途によっては傷を防ぐためのハードコート処理を施したり、清掃時には柔らかい布で優しく扱うなど、デリケートな管理が必要です。
価格が高め
アクリルや塩化ビニルといった一般的なプラスチック素材と比較すると、価格がやや高めに設定されている傾向があります。耐衝撃性や耐熱性など、優れた性能を持つエンジニアリングプラスチックである分、どうしても製造コストがかさんでしまうからです。単価の安さよりも、割れにくさや安全性を優先する場合に選ばれる素材であるため、採用にあたっては、求める性能と予算のバランスを慎重に検討することが大切です。
ポリカーボネートの加工方法
ポリカーボネートは耐衝撃性が高く割れにくいため、DIYから工業製品まで幅広く利用されています。ここでは代表的な加工方法と、失敗しないためのコツについて解説します。
切断・穴あけ加工
ノコギリやドリルなどで比較的容易に加工可能です。アクリルのように衝撃で割れる心配は少ないですが、摩擦熱で溶けやすい点には注意が必要です。切断面が溶けて刃に絡まないよう、電動工具を使う際は回転数を落とし、こまめに熱を冷ましながら作業を行うのがきれいに仕上げるポイントです。
曲げ加工
熱を加えると柔らかくなるため、ヒーターなどで加熱して曲げる「熱曲げ」に適しています。加熱部分を十分に柔らかくしてから曲げ、固定したまま冷ますことで形状が安定します。薄い板なら常温で曲げる「冷間曲げ」も可能ですが、元に戻ろうとする力が強いため、ビスなどでしっかり固定する設計が必要です。
接着
有機溶剤に弱く、一般的な接着剤ではひび割れ(クラック)を起こすことがあります。接合にはポリカーボネート専用の接着剤を使用するか、ボルトナットなどでの機械的結合が推奨されます。
成形
溶融状態の粘度が高いため、成形時には適切な金型設計や成形条件の設定が求められます。成形条件や金型設計に無理がある場合、成形後の製品にひずみが残り、そこから変形や割れなどの不具合が生じることがあります。射出成形などの製造時は、材料内の水分が気泡や強度不足の原因となるため、成形前の予備乾燥を徹底することが不可欠です。
ポリカーボネートの設計時や使用時の注意点
ポリカーボネートを使用する際は、以下の点に注意が必要です。
化学薬品との接触
アセトンやトルエンなどの有機溶剤、界面活性剤など、特定の化学薬品に対する耐薬品性は高くありません。化学薬品と接触する可能性がある場合は、事前にポリカーボネートへの影響を確認してください。
また、パッキン類に含まれる可塑剤に触れると、クラックが生じる場合があるため注意が必要です。
傷が付きやすい
表面が傷つきやすいため、運搬時や取り付け時は保護フィルムを貼るといった対策が必要です。使用時も、硬いものとの接触や摩擦を避ける必要があります。
紫外線対策
耐候性は高いものの、長期の屋外使用では紫外線による劣化(耐衝撃性の低下、変色)が進みます。必要に応じてUV保護コートの追加を検討してください。
荷重・応力集中を防ぐ
ポリカーボネートはガラスに比べて耐衝撃性に優れ、大きな荷重を受けた場合、破壊することは少ないものの、大きくたわむ性質があります。板厚や寸法は破壊強度ではなく、たわみ量の許容範囲で設定します。
設計時は応力集中を防ぐため、鋭角を避けて適切なRを設けましょう。また、組み立て時に過度な応力がかからないよう、適切な締め付けトルクで固定します。
ポリカーボネート(PC)のおもな用途
ポリカーボネートは、一般用途や工業用途を含め、非常に多くの場所で使われている身近な材料です。代表的なものをいくつか紹介します。
電子機器
ポリカーボネートは、スマートフォンやノートパソコン、カメラといった電子機器の外装や内部部品に広く利用されています。その最大の理由は、薄型化しても十分な強度を保てるため、持ち運びやすさが求められるモバイル機器の軽量化に大きく貢献できるからです。
また、高い耐熱性と自己消火性を備えているため、バッテリーや電子回路の発熱によるリスクに対しても高い安全性を確保できます。精密機器を衝撃や熱から守るための不可欠な素材となっています。
自動車部品
自動車業界では、車体の軽量化と安全性の向上を目的として、ポリカーボネートが採用されています。ガラスと同等の透明度を持ちながら、重量はガラスの半分以下と軽いため、燃費性能の改善につながる部材として重宝されています。
さらに、走行中の飛び石などにも耐えうる高い耐衝撃性と、屋外環境に強い耐候性も兼ね備えています。代表的な例として、ヘッドランプのレンズカバーやサンルーフ、ドアハンドル、内装のインパネ周りなどに使用されています。
建築材料
優れた耐久性と採光性を活かし、建築分野でも屋根材や防護壁として多くの現場で導入されています。太陽光を透過させて明るさを確保しつつ、紫外線や風雨に長期間さらされても劣化しにくい耐候性を持っているため、屋外の設備に適しています。
また、台風や飛来物による衝撃を受けても割れにくく、破片が飛び散らないという安全性の高さから、ガラスの代替品としても優秀です。具体的には、カーポートやバルコニーの屋根、高速道路の透光遮音板、アーケードの天井材などで利用されています。
ポリカーボネートとアクリルの違い
ポリカーボネートと同じように透明性の高い樹脂としてアクリル(PMMA)が挙げられます。透明度はアクリルのほうがやや上ですが、ここではその他の違いを解説します。
耐衝撃性
ポリカーボネートのほうが耐衝撃性が高く、アクリルのおよそ50倍です。そのため、防弾素材のように、強い衝撃が予測される場所ではポリカーボネートが選ばれるケースが多いでしょう。
加工性
どちらも加工性の高い素材ですが、ポリカーボネートはアクリルに比べると曲げや接着が難しいというデメリットがあります。
難燃性
難燃性はポリカーボネートの方が高く、燃えにくい性質をもっています。高い自己消火性を備えていることに加え、連続耐熱温度も高いため、パーテーションなどにはアクリルよりもポリカーボネートのほうが向いています。
コスト
アクリルのほうがコストは低いです。ポリカーボネートはさまざまな優れた性質をもっている一方、比較的高価な樹脂材料です。そのため大量に使われる製品や、買い換え頻度が高い製品、高い耐衝撃性などを求めない製品などにおいては、アクリルなど他の素材を検討してみるのもいいでしょう。
| ポリカーボネート | アクリル | |
| 耐衝撃性 | ◎ | ○ |
| 加工性 | ○ | ◎ |
| 難燃性 | ◎ | △ |
| コスト | △ | ◎ |
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加工事例
| 写真 | ![]() |
| サービス名 | 板金加工 |
| 材質 | ポリカーボネート (スタンダード・ブラウンスモーク) |
| サイズ | W120×D200×H3.0 |
| 出荷日 | 5日目~ |
| 参考価格 | 2,878円 |
※表中は2026年1月時点の情報
まとめ
ポリカーボネートは熱可塑性のエンジニアリングプラスチックの一種です。透明性が高く、耐衝撃性に優れるのが大きな特徴で、耐候性の高さや加工性の高さ、自己消火性、吸水性が低いことによる寸法精度の高さなどのメリットをもっています。一方で有機溶剤や界面活性剤に弱く、応力腐食性をもっているのがデメリットです。さらに傷がつきやすく、価格も比較的高めです。カメラのレンズやDVDの基板、車のヘッドランプや看板、防弾素材などに用いられます。よく似た素材としてアクリルが挙げられますが、ポリカーボネートのほうが耐衝撃性や難燃性に勝る一方、加工性やコストにおいてはアクリルのほうが優れています。







