樹脂加工 ものづくり基礎知識

アクリル樹脂のPMMA(ポリメタクリル酸メチル)とは?特徴や用途、類似素材との違いや加工について解説

アクリル樹脂は、透明性が高く耐衝撃性に優れており、透明カバーやレンズにも使われています。この記事ではアクリル樹脂の中でもよく知られているPMMA(ポロメタクリル酸メチル)について特徴や用途などについて解説します。
まず、アクリル樹脂について簡単に説明します。

アクリル樹脂とは

アクリル樹脂 (acrylic resin) とは合成樹脂の一種で、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの重合体です。1934年に戦闘機のキャノピーに使用する目的で開発されました。ガラスのように高透明性と、ガラスを上回る耐久性、耐衝撃性をもち、さらに軽いのが特徴です。工業的に優れた性質をもつエンプラ(エンジニアリングプラスチック)の一種でもあります。
アクリル樹脂にはいくつかの種類があり、それぞれ異なった特徴をもちますが、この記事では、キャノピーにも使用されるPMMAについて主に紹介していきます。

アクリル樹脂の種類

アクリル樹脂として特によく知られているのはPMMAですが、それ以外にもいくつかの種類があります。下記がアクリル樹脂の代表的なものです。

ポリメタクリル酸メチル(PMMA)

有機ガラスともよばれ、キャノピー(風防)や水槽、レンズなどにも使われる、透明性の高い樹脂素材です。この記事で主に紹介する材料です。耐候性、耐衝撃性にも優れています。

ポリアクリル酸エステル(PAA)

塗料や接着剤に使われるアクリル樹脂です。柔軟性と接着性に優れています。加工物との組み合わせにより、溶剤融解性になったり水性になるなど、さまざまな性質を作ることができます。

ポリアクリルニトリル(PAN)

合成繊維やフィルムに使われる強力で耐薬品性に優れた樹脂です。繊維としてはウールのような風合いをもち、セーターや下着などに使われます。フィルムとしてはガスバリア性に優れ、食品包装用のフィルムなどに使用されます。

ポリアクリル酸ナトリウム(PANa)

吸水性のある樹脂で、粉末状にして吸水ポリマーとして用いられます。紙おむつや衛生用品などがよく知られている用途です。

ポリアクリルアミド(PAAm)

ポリアクリル酸ナトリウムと同様のアクリル系ポリマーで、水溶性で吸水性や吸着性の高い樹脂です。高分子凝集剤として、廃水処理に使われます。

アクリル樹脂・ポリメタクリル酸メチル(PMMA)の特徴

アクリル樹脂は、その透明性、耐候性、加工性、耐衝撃性など様々な特性を持っています。
ここではポリメタクリル酸メチル(PMMA)の物性や長所、短所などについて解説していきます。

PMMAの物性

アクリルの物性は、おおむね次の表のようになっています。しかしメーカーによって多少差があるため、実際に設計したり使用する際には、メーカーカタログによる確認が必要です。

比重 1.19
硬度 (ロックウェル) M85-100
引張強さ 196Mpa
引張降伏応力 65-77Mpa
破断ひずみ 6%
曲げ応力 98-120Mpa

「PMMAの物性表」

長所

  • 高い透明性
  • 耐衝撃性に優れる
  • 耐候性に優れる
  • 防水性が高い
  • 加工性に富む
  • 難燃性が高い
  • ガラスよりは安い

PMMAはガラスに代わる素材として開発された経緯もあり、透明性や耐衝撃性はガラスを上回るほど高いのが特徴です。価格もガラスより安価なため、建材や機械の計器窓などでガラスの代わりに使用されています。また樹脂のなかでは耐候性にも優れ、自動車のランプカバーのような屋外での使用にも適しています。
さらに加工性に富むのも特徴です。さまざまな成形方により多彩な形が作れるだけでなく、切削や曲げなどの2次加工も可能です。

短所、デメリット

  • 耐熱性が低い
  • 強アルカリや有機溶剤に弱い
  • 傷がつきやすく透明性が損なわれる
  • 紫外線により変色する場合がある
  • 樹脂の中では比較的高価

PMMAは、連続耐熱温度が60℃~95℃と、耐熱性が低いのがデメリットです。樹脂としては比較的硬い素材ではあるものの、ガラスなどに比べると引っかきに弱いのも特徴です。透明性が特徴の素材である分、傷によって透明性が損なわれるのが目立ったり、機能として致命的になったりします。

アクリル樹脂・ポリメタクリル酸メチル(PMMA)のおもな用途

ポリメタクリル酸メチル(PMMA)は、特にその透明性を活かした用途が多くなります

ガラス代替品

  • 船舶、航空機、自動車の風防
  • 計器類、時計、ライトなどのカバー
  • 水槽、コップ、フォトスタンドなど

光学部品

  • メガネ、カメラ、プロジェクターなどのレンズ
  • 照明部品
  • 光ファイバー

電気、電子部品

  • 液晶画面の導光板
  • 電子機器の導光パーツ、リモコンの受光部
  • 基板保護材

PMMAの加工

ポリメタクリル酸メチル(PMMA)の加工については、成形における加工と2次加工に分けて紹介します。

成形

PMMAの成形には次のようなものがあります。

射出成形は他の樹脂と同様に、熱して融かしたアクリル樹脂を金型の中に射出する方法です。他の樹脂に比べて金型に食いつきやすいため、それを防ぐ目的や、透明性を活かすためにも、金型を鏡面加工するケースが多いです。また樹脂の中では硬度が高いため金型が摩耗しやすいため注意が必要です。
押出法とキャスト法は、どちらも板状のアクリル材を成形する方法です。
押出法は、熱して融かしたアクリル樹脂を押出して成形します。板状の素材だけでなく、パイプなどの連続形状の素材を作る際にも使用される方法です。
キャスト法は、2枚のガラス板の間にPMMAの材料を注入して重合させ硬化させる方法です。

2加工

板またはブロック状に成形したPMMAは2次加工を行って使用されることも多いです。アクリル素材に行われる2次加工には次のようなものがあります。

  • エアースリップ法、プラグアシスト法
  • プレス加工
  • 抜き加工
  • 熱曲げ加工
  • 切削加工

エアースリップ法とプラグアシスト法は、どちらも加熱してやわらかくした板またはシート状のアクリル樹脂を型に押しつけて成形する方法です。型と樹脂の間の空気を抜くことで素材を型に密着させるのが特徴です。
また加熱してやわらかくした板状のアクリル樹脂は、型によってプレス加工や抜き加工を行うことも可能です。
熱曲げ加工は、成形されたアクリル樹脂の素材に熱を加え、さまざまな形に曲げる方法です。板状の素材だけでなくパイプなどの連続形状にも行える加工です。
アクリル素材は切削によって、穴を開けたり、切削したり、さまざまな形状を削り出すことも可能です。ただし切削した場所は白く濁ってしまうため、必要があれば表面にミガキ加工を施します。

アクリル樹脂の類似素材

PMMAのようなアクリル樹脂に似た素材としてポリカーボネート(PC)が挙げられます。ポリカーボネートもアクリル樹脂と同様に透明性の高い樹脂として知られる素材です。しかし透明性はアクリル樹脂より劣ります。一方で耐衝撃性や耐熱性はポリカーボネートの方が優れています。またポリカーボネートほうが難燃性が高く自己消火性を持っています。

ポリカーボネート アクリル
耐衝撃性
加工性
難燃性
コスト

まとめ

アクリル樹脂は高透明性と、ガラスを上回る耐久性、耐衝撃性などの特徴を持ち、複数の種類があります。
アクリル樹脂の一種であるポリメタクリル酸メチル(PMMA)は透明性が高く、耐衝撃性にも優れた素材です。ガラスの代替品として航空機の風防に使われたり、光学部品としてレンズに使われたりもします。また電子機器の受光部や水槽、計器の窓などにも使われます。射出成形や押出し成形、キャスト法などによって成形され、プレス加工や熱曲げ加工、切削加工などの2次加工が行われることも多いです。似た素材としてポリカーボネートが挙げられますが、透明性はPMMAのようなアクリル樹脂のほうが勝ります。

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