チタンには優れた特性がある一方、加工の難易度が設計の課題となることがあります。本記事では、チタン加工の種類や難しさの要因、設計段階の課題と解決策、さらに最適な製造パートナーから機械加工部品を手配できるメビーマーケットプレイスの活用法を解説します。
目次
チタンとは
チタンとは銀灰色の金属で、原子番号が22、元素記号は「Ti」で表されます。軽量・高強度・高耐食性などのメリットを持ち、さまざまな業界で使用されています。チタンの特徴と主な用途は下記のとおりです。
チタン材料の特徴
チタン材料の最大の特徴は比強度です。同じ重さで比べた場合、アルミニウムの約3倍、鉄の約2倍の強度を誇ります。また、海水や酸・アルカリなどの腐食環境下でも高い耐食性を示すため、過酷な環境でも長期間使用できます。
チタン材料の用途
チタン材料は用途が広く、航空機産業では比強度を生かして機体の軽量化と高強度化に貢献しています。医療分野では人工骨やインプラントなどに用いられ、スポーツ用品や化学プラントなど身近な領域でも活躍する金属です。
チタン加工の種類
チタン加工には、主に以下の4つの種類が存在します。
曲げ加工
チタンの曲げ加工は、素材の種類によって難易度が大きく異なります。比較的延性が高い純チタンは曲げやすいものの、添加物を加えたチタン合金は割れが発生しやすく、高度な技術が必要です。複雑な形状に曲げる場合には、適切な温度管理と均一な力が求められます。
切断加工
硬度の高いチタンの切断加工は、一般的な金属よりも難易度が高くなります。通常の金属用ノコギリでは刃がすぐに摩耗してしまうため、専用の切断工具や、レーザー加工などの特殊な技術が必要です。
溶接加工
チタンは大気中の酸素と非常に反応しやすい性質を持つため、溶接加工を行う際には酸素との接触を防がなければなりません。酸素と反応すると、溶接部の強度や耐食性が著しく低下してしまうため、アルゴンガスなどの不活性ガスで周囲を保護した状態で加工する必要があります。
切削加工
チタンを切削加工する際は、刃物の摩耗に気をつけなければなりません。切削時に発生した熱が工具に集中しやすいため、工具の寿命を著しく短くしてしまいます。高い強度と低い熱伝導率を考慮した適切な切削条件の設定と工具の選定が求められます。
チタン加工が難しい理由
いずれのチタン加工も、ほかの金属と比べると難易度が高い傾向にあります。ここからは、チタン加工が難しい理由について3つの視点で見ていきましょう。
熱伝導率が低く熱がこもりやすいため工具摩耗が激しい
熱伝導率が低いため、切削時に発生する熱が材料にこもりやすく、工具温度が急上昇しやすいのがチタン加工の難しさの一因です。工具が摩耗すると加工精度にも悪影響が及ぶため、熱対策が重要なポイントになります。
ヤング率が小さくたわみやすいため精度が出ない
チタンはヤング率が小さく、力が加わった際に変形しやすい性質を持っています。切削加工中のわずかな力でも材料がたわんでしまうため、狙った寸法での加工は困難です。高精度な加工を行うためには、余計な力がかからないよう慎重な加工方法を選択し、適切な治具を使いましょう。たわみを抑制できれば、チタン加工の精度向上につながります。
加工硬化しやすいため、切削・成形が困難になる
チタンは加工硬化しやすい性質も持っています。切削や成形などの加工によって材料の表面が硬化し、後の加工を難しくしてしまうのです。一度、加工硬化した部分を再度切削すると、工具の摩耗が激しくなったり、加工面の品質が低下したりする場合もあります。チタン加工時には、加工硬化を最小限に抑えるための工夫が必要です。
チタン部品の設計における課題と解決策
チタンを用いた設計を行う際にも、いくつかの課題が生じます。ここでは課題と解決策について3つのポイントで見てみましょう。
チタン材料の選定基準
チタン材料は、チタン含有量と添加物の種類によって特性が異なります。以下に代表的なチタンおよびチタン合金をまとめます。
- 純チタン:優れた耐食性と加工性を持つ。生体適合性が高く医療分野で用いられる。強度が必要ない箇所に最適。
- 耐食合金:耐食性に特化。過酷な腐食環境下で用いられる。化学プラントなどにて使用。
- α合金:高温強度に優れ、溶接性も良好。航空宇宙分野の高温部材に用いられる。
- Near α合金:α合金よりも強度が高く、クリープ特性も良好。ジェットエンジンのブレード等に使用。
- α-β合金:強度と加工性のバランスが良い。幅広い用途に対応。
- β合金:非常に高い強度を持つ。熱処理により強度調整が可能。
これらのチタン材料も、添加物の種類によってさらに細かく分類されます。また、特性だけではなく強度や加工性も大きく異なるため、用途に合った材料を選択しましょう。
チタン部品製作時に直面する設計者の課題
チタン部品の製作時に直面する課題のひとつに、チタン加工に対応できる加工会社を見つけづらい点が挙げられます。また、少量生産に対応してくれる依頼先が見つからない場合もあるでしょう。チタンは加工が難しい材質のため、仕上がりに差が出る点も課題です。
なお、メビーマーケットプレイスには多数の製造パートナーが参画しており、チタン加工に対応可能な加工会社をオンラインで探すことができます。チタン部品の製作でお悩みの方はぜひご活用ください。
チタン部品の製作をスムーズに進めるためのポイント
チタン加工をスムーズに進めるには、加工会社の技術力を見極める必要があります。過去の実績や保有設備などを確認して、最適な依頼先を選びましょう。また、相見積もりをとるなどして、コストと納期を比較検討することも大切です。
チタン加工の見積もり依頼は「meviyマーケットプレイス」へ
チタン加工でお悩みであれば、ぜひメビーマーケットプレイスをご活用ください。ここではメビーマーケットプレイスについて解説し、製作事例や利用するメリットについてご案内します。
メビーマーケットプレイスとは
メビーマーケットプレイスは、製造パートナーからあらゆる機械加工部品を手配できる日本最大級の製造業マーケットプレイスです。新規の口座開設なしで、条件にマッチしたパートナーと直接やり取りして機械加工部品を手配できます。
メビーマーケットプレイスの加工事例
メビーマーケットプレイスでは、チタン加工を製造パートナーに依頼できます。ここでは、製造パートナーの加工事例を紹介します。
品名 | モーターサイクル | 半導体製造装置部品 |
材質 | 合金鋼・特殊材 64チタン(JIS60種) | 合金鋼・特殊材 純チタン |
サイズ | X60.00×Y150.00×Z50.00mm | D350.00 × L20.00mm |
出荷日 | 20日目 | 20日目 |
参考価格 | 200,000円/個 | 70,000円/個 |
写真 | ![]() |
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メビーマーケットプレイスを使うメリット
メビーマーケットプレイスでは、設計データをアップロードし、加工方法・材質・表面処理などの見積条件を設定することで、条件に合ったパートナーと直接やり取りができ、新規口座の開設といった手間を省いて手配が可能です。複数の加工会社に個別で問い合わせる手間を削減できるほか、見積もりや出荷日などの条件を比較・検討する時間も短縮できます。
まとめ
チタンの特性を十分に理解せずに加工すると、設計・試作段階で数多くの課題に直面します。材料選定や加工方法の把握・信頼できる加工会社の選定を徹底し、課題を未然に防ぎましょう。
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