金属・樹脂の材料 ものづくり基礎知識

フェノール樹脂の選び方|成形材料・積層板の違い、設計上の注意点

フェノール樹脂は、耐熱性、電気絶縁性、剛性などを生かし、電気機器、自動車、産業機械、摩擦材、接着剤などに使われている熱硬化性樹脂です。機械設計の現場では、紙や布を基材とする「ベークライト」がよく知られています。フェノール樹脂を部品に採用するときは、材料名だけで選ぶのではなく、製品形態、基材や充填材、グレード、荷重方向、使用温度、湿度、加工方法を整理することが重要です。

この記事では、機械設計者に向けて、フェノール樹脂の構造と特性、成形材料と積層板の違い、要求仕様に応じた選定方法、切削部品を設計するときの注意点を解説します。後半では、3D CADデータだけで樹脂加工部品の見積もりが即時にわかるmeviy(メビー)もご紹介します。

フェノール樹脂はどのような材料か

フェノール樹脂は、フェノール類とホルムアルデヒド類を反応させてつくられる合成樹脂です。材料を表す略号には「PF」が使われます。

プラスチックは、熱に対する挙動から「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」に大別されます。POMやナイロンなどの熱可塑性樹脂は、加熱によって軟化し、冷却すると再び固まります。これに対し、フェノール樹脂は硬化反応によって分子同士が三次元につながる熱硬化性樹脂です。

十分に硬化した後は、再加熱しても熱可塑性樹脂のようには溶融しません。この性質が、耐熱性や剛性、寸法安定性を得やすい理由のひとつです。

一方で、硬化したフェノール樹脂は金属のような大きな延性をもちません。局部的な衝撃、鋭い切欠き、過大な締付け力が加わると、割れや欠けが発生することがあります。

フェノール樹脂とベークライトの関係

ベークライトは、もともと工業化されたフェノール樹脂の商品名です。現在の製造現場では、フェノール樹脂そのもの、または紙や布を基材としたフェノール樹脂積層板を指す通称として使われることがあります。

ただし、両者を完全な同義語として扱うと、材料仕様が曖昧になります。

  • フェノール樹脂:樹脂の化学的な種類を示す名称
  • ベークライト:フェノール樹脂やフェノール樹脂積層板に使われる通称
  • 紙ベークライト:紙を基材とするフェノール樹脂積層板の通称
  • 布ベークライト:布を基材とするフェノール樹脂積層板の通称

図面や仕様書に「ベークライト」とだけ記載すると、紙基材か布基材か、電気用か機械用か、色やグレードを特定できません。部品手配では、基材、用途区分、メーカーグレード、色などを必要に応じて指定します。

紙ベークライトと布ベークライトの特徴や用途を詳しく知りたい方は、関連記事「ベークライトとは?種類や特徴、用途を解説」をご覧ください。

フェノール樹脂製品は3つの形で使われる

機械設計者がフェノール樹脂を検討するときは、最初に「どのような形で使うか」を分けて考えると整理しやすくなります。

製品形態 概要 主な加工方法 用途例
成形材料 樹脂に繊維や充填材などを配合した材料 圧縮成形、トランスファー成形、射出成形 電装部品、耐熱部品、機構部品
積層板 紙や布などに樹脂を含浸し、積層・硬化した板材 切削、穴あけ、打抜き 絶縁板、治具、支持部品、ガイド
結合剤・含浸材 ほかの材料を固めたり、基材へ含浸させたりして使用 塗布、含浸、加熱硬化 摩擦材、研削砥石、接着剤、塗料

成形材料

フェノール樹脂の成形材料は、樹脂に繊維、木粉、無機材料などを配合し、金型内で加熱・加圧して硬化させる材料です。配合によって、機械的強度、耐熱性、電気特性、摩擦・摩耗特性などを調整できます。

金型を使うため、形状を繰り返し生産する量産部品に適しています。一方、金型費が必要であり、成形収縮、抜き勾配、肉厚、インサート、硬化条件などを考慮した設計が必要です。

積層板

フェノール樹脂積層板は、紙や布などの基材に樹脂を含浸させ、複数枚を重ねて加熱・加圧した材料です。板材から必要な形状を切削できるため、試作品、少量部品、治具、絶縁プレートなどに向いています。

積層板は、板面方向と板厚方向で性質が異なる異方性材料です。部品形状だけでなく、荷重方向と積層方向の関係を考慮して使用します。

結合剤・含浸材

フェノール樹脂は、単独で部品形状をつくるだけでなく、ほかの材料をまとめる結合剤としても使われます。ブレーキなどの摩擦材や研削砥石では、繊維や粒子を保持する役割を担います。

フェノール樹脂製の機械部品と、フェノール樹脂を結合剤として含む複合材料では、設計時に確認すべき物性が異なります。材料名だけでなく、製品全体の構成を確認することが大切です。

フェノール樹脂の特性を設計にどう生かすか

耐熱性は「溶けない」だけで判断しない

フェノール樹脂は硬化後に再溶融しないため、熱可塑性樹脂と比べて高温環境で形状を保ちやすい材料です。ただし、溶けないことと、高温で強度や寸法を維持できることは同じではありません。

温度が上がると、曲げ強さ、絶縁抵抗、寸法、摩耗特性などが変化する場合があります。また、短時間の最高温度と、長期間連続して使用できる温度も区別する必要があります。

耐熱部品では、次の条件を確認します。

  • 常用温度と一時的な最高温度
  • その温度にさらされる時間
  • 温度下で受ける荷重
  • 加熱と冷却の繰返し回数
  • 周辺材料との熱膨張差

電気絶縁用途では湿度も確認する

フェノール樹脂積層板は、絶縁板、端子板、スペーサー、配電盤内の支持部品などに使われます。

ただし、電気特性は基材、グレード、板厚、温度、湿度によって異なります。紙や布を基材とする材料は水分の影響を受けるため、常態の絶縁抵抗だけでなく、吸湿後の値も確認する必要があります。

高電圧用途では、材料の絶縁性に加えて、部品の沿面距離、空間距離、表面の汚れ、結露なども設計条件に含めます。

剛性が必要でも衝撃荷重には注意する

フェノール樹脂は比較的硬く、たわみを抑えたい絶縁プレートや治具に利用できます。一方、硬さと耐衝撃性は同じ特性ではありません。

鋭い切欠き、薄肉部、端面近くの穴、圧入部などには応力が集中します。静的な荷重には耐えられても、落下衝撃や繰返し荷重によって割れる可能性があるため、荷重の種類まで確認します。

難燃性は個別グレードで判断する

フェノール樹脂には難燃性を生かしたグレードがありますが、すべてのフェノール樹脂製品が同じ難燃性能をもつわけではありません。

UL94などへの適合が必要な場合は、材料カテゴリだけで判断せず、メーカー名、品番、板厚、色などを含む認定範囲を確認します。「フェノール樹脂」または「ベークライト」という一般名称だけでは、必要な難燃等級を指定できません。

要求仕様からフェノール樹脂を選ぶ手順

1.必要な機能を整理する

最初に、部品に期待する機能を明確にします。絶縁性、耐熱性、剛性、耐摩耗性、軽量化など、複数の要求がある場合は優先順位も決めます。

単に「フェノール樹脂を使いたい」と指定するのではなく、「絶縁しながら部品を支持したい」「高温時の変形を抑えたい」など、目的から整理すると材料を比較しやすくなります。

2.成形品か切削品かを選ぶ

試作や少量生産では、積層板からの切削加工が候補になります。金型が不要であり、3D CADデータをもとに形状を製作しやすいためです。

同一形状を継続して多数生産する場合や、複雑な三次元形状、インサート一体成形が必要な場合は、成形材料と金型を使う方法も比較します。

判断項目 積層板の切削加工 金型による成形
試作・少量 適しやすい 金型費を考慮する
量産 加工時間と材料歩留まりを確認 候補になりやすい
形状変更 比較的対応しやすい 金型変更が必要になる場合がある
三次元形状 工具が届く形状に制約される 金型構造の範囲で対応

3.基材とグレードを選ぶ

積層板を使う場合は、紙基材か布基材かだけでなく、グレードまで確認します。

紙基材は、絶縁板、端子板、スペーサー、一般的な治具などの候補になります。布基材は、紙基材より機械的強度や耐衝撃性を必要とする機械部品、治具、ガイドなどで検討されます。

ただし、「紙は電気用、布は機械用」と一律に決められるわけではありません。JIS K 6912でも、同じ基材の中に用途に応じた複数の区分があります。最終的には、メーカーのグレードと物性表を確認してください。

4.実際の使用環境と照合する

カタログに記載された物性値は、所定の試験片と試験条件で測定された値です。実部品の性能をそのまま保証するものではありません。

次の条件を採用グレードのデータと照合します。

  • 使用温度と使用時間
  • 静荷重、衝撃荷重、繰返し荷重
  • 荷重を受ける方向
  • 湿度、水分、結露
  • 油、洗浄液、酸、アルカリ、溶剤
  • 紫外線や屋外環境
  • 必要な絶縁性能と難燃規格
  • 要求する寸法精度と耐用期間

フェノール樹脂積層板の設計上の注意点

積層方向に対する荷重を確認する

フェノール樹脂積層板は、板面方向と板厚方向で強度や割れ方が異なります。積層面を引きはがす方向の荷重や、板厚方向の大きな引張荷重は避けるのが基本です。

強度を評価するときは、物性表に記載された試験片の方向も確認してください。同じ「曲げ強さ」でも、積層面に対する試験方向が違えば、設計への適用方法が変わります。

内角と段差に適切なRを設ける

鋭い内角や急激な断面変化には応力が集中します。機能上許容できる範囲で内角にRを設け、薄肉部へ急に切り替わる形状を避けます。

ポケット加工では、工具径に応じた内角Rが必要です。直角に近い内角が必要な場合は、逃げ形状の追加などを検討します。

穴を端面へ近づけすぎない

端面に近い穴や、穴同士の間隔が小さい形状では、加工時や締結時に割れが生じやすくなります。穴径だけでなく、板厚、荷重、締付け方法を踏まえて周辺の肉厚を確保します。

貫通穴では、工具が抜けるときに出口側が欠ける場合があります。必要以上に鋭いエッジを残さず、用途に応じて面取りを設けることも有効です。

締付け力を樹脂だけで受けない

タップ加工は可能ですが、締付けトルクが大きい箇所や繰返し着脱する箇所では、ねじ山の欠けや部品の割れに注意が必要です。

締結の信頼性が重要な場合は、次の方法を検討します。

  • 貫通ボルトとナットを使う
  • 座金で面圧を分散する
  • 金属カラーで締付け高さを規制する
  • 用途に適した金属インサートを使う
  • 締付けトルクを管理する

圧入は割れのリスクを評価する

金属ピンやブッシュを大きな締め代で圧入すると、穴の周囲に引張応力が発生します。フェノール樹脂積層板は延性変形によって応力を逃がしにくいため、過大な締め代は割れにつながります。

圧入を採用する場合は、締め代、外周までの肉厚、板厚、積層方向、温度変化を含めて評価します。締結や接着など、別の固定方法も比較してください。

必要以上に厳しい公差を指定しない

積層板の寸法には、素材の厚さばらつき、吸湿、温度、加工時の応力解放などが影響します。素材面をそのまま残す箇所と、切削して仕上げる箇所でも、管理できる精度は異なります。

位置決め部やはめあい部など、機能上重要な寸法だけに適切な公差を設定し、それ以外は普通公差を活用します。

フェノール樹脂とほかの樹脂の使い分け

フェノール樹脂は、絶縁性、耐熱性、剛性を組み合わせたい部品で有力な候補です。ただし、耐衝撃性、低摩擦性、耐薬品性など、別の性能を優先する場合は他材料が適することがあります。

材料 検討しやすい要求 設計時の主な注意点
フェノール樹脂積層板 絶縁性、剛性、耐熱性、治具・支持部品 異方性、脆さ、吸湿
POM 寸法精度、摺動性、機械部品 使用温度、難燃性、薬品
MCナイロン 歯車、ローラー、ガイド、耐摩耗用途 吸水による寸法変化
PTFE 低摩擦、耐薬品、シール用途 剛性、クリープ、寸法安定性
PEEK 高温、高強度、耐薬品用途 材料費、グレード差

材料選定では、ひとつの特性だけで優劣を決めず、必要な性能、加工方法、生産数量、コストを含めて比較します。

切削加工に使われる代表的な樹脂材を比較したい方は、関連記事「切削加工に適した樹脂材5種の特性と用途」も参考にしてください。

フェノール樹脂部品の見積もりはメビーへ

meviy(メビー)では、3D CADデータをアップロードし、材質や加工条件を設定することで、切削加工部品をオンラインで見積もりできます。ベークライト(フェノール樹脂積層板)は、FA・自動化設備の絶縁部品などに利用されています。ぜひご活用ください。

メビーの樹脂加工サービスを見る

紙ベークライト 黒

 

特徴
電気を通しにくく、耐熱に優れる
利用シーン
電気機器、プリント配線基板、絶縁用途各種部品等

布ベークライト自然色 布ベークライト 自然色

 

特徴
紙ベークライトに比べより強度で機械的性質に優れる
利用シーン
強度が求められる電気機器、プリント配線基板、絶縁用途各種部品等

まとめ

フェノール樹脂は、耐熱性、電気絶縁性、剛性などを生かし、成形品、積層板、接着剤、摩擦材などに使われる熱硬化性樹脂です。部品材料として採用する際は、「フェノール樹脂」や「ベークライト」という名称だけで決めず、製品形態、基材、グレード、積層方向、使用環境まで確認する必要があります。切削部品では、積層方向への荷重、角部や穴周辺の応力集中、締結力、圧入、公差設定に注意し、要求仕様に合った材料と形状を選びましょう。

メビーではベークライトとして取り扱っています。電気絶縁性や耐熱性、機械的強度に優れており、主にFA・自動化設備の絶縁部品などに活用できますので、ぜひ見積もりをお試しください!