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非破壊検査とは?種類・原理・対応、JIS規格と設計者のための選び方を解説

溶接構造物や圧力容器の図面に「UT」「PT」といった指示を見かけ、具体的な意味や指定方法を調べている方も多いでしょう。

非破壊検査(NDT)は、製品を壊さずに内部や表面のきずを調べる技術です。検査の実務は専門業者が担いますが、どの手法が使えるかは設計段階で材質・板厚・形状を決めた時点でほぼ確定します。あとから「この材質では磁粉探傷が使えない」「板が薄くて超音波探傷が適用できない」と判明すると、検査手法の変更や設計のやり直しが発生しかねません。

この記事では、非破壊検査の定義から主要手法の原理、対応するJIS規格、材質ごとの適用可否、そして機械設計者が図面や仕様書でどう指示すべきかまでを整理します。手戻りを防ぐための実践的な知識として、ぜひお役立てください。

非破壊検査

非破壊検査とは

非破壊検査とは、素材や製品を壊したり傷つけたりせずに、内部や表面のきず(欠陥)、劣化の状態を調べる検査技術の総称です。英語の Non-Destructive Testing の頭文字を取って「NDT」とも呼ばれます。
一般社団法人日本非破壊検査協会(JSNDI)は、非破壊検査を「物を壊さずに内部のきずや表面のきず、劣化の状況を調べ出す検査技術」と説明しています。素材から加工工程、完成品の検査、設備の建設時検査、さらに使用中の設備の保守検査まで、幅広い段階で適用される技術です。

破壊試験との違い

材料や製品の健全性を確かめる方法は、大きく破壊試験と非破壊検査に分かれます。
破壊試験 非破壊検査
対象 抜き取った試験片や供試体 実際に出荷・使用する製品そのもの
試験後 使用不可(切断・破断する) そのまま使用できる
得られる情報 材料の強度など定量的な機械的性質 きずの有無・位置・大きさ・分布
代表例 引張試験、曲げ試験、硬さ試験、マクロ・ミクロ試験など 浸透探傷(PT)、磁粉探傷(MT)、超音波探傷(UT)、放射線透過(RT)など
全数検査 原理的に不可能 可能(手法とコスト次第)
破壊試験は「この材料がどれくらいの力に耐えられるか」という強度を知るためのものであり、非破壊検査は「出荷する製品自体にきずがないか」を確かめるためのものです。両者は目的が違うため、量産部品などではミルシート(鋼材検査証明書)で素材の性質を担保しつつ、重要な溶接部などを非破壊検査で確認するという組み合わせが一般的です。
材料の品質証明書については、ミルシートとは|鋼材検査証明書の必要性・記載内容・設計者向けの注意点まで解説で詳しく解説しています。

どこで使われているのか

非破壊検査は、社会インフラから精密部品まで、壊れたときの影響が大きいものに広く適用されています。
  • 圧力容器・配管・ボイラ:溶接部の内部きずや開口きずの確認
  • 橋梁・鉄骨建築:溶接部の健全性確認、供用中の疲労き裂の点検
  • 航空機・鉄道車両:重要部材の定期点検
  • 自動車部品:鋳造品の巣(内部の空洞)や鍛造品のき裂の検出
  • 半導体・電子部品:はんだ接合部のボイド検査(主にX線)
  • 産業機械・装置部品:溶接フレームや溶接構造物の強度部位の確認
機械設計者が日常的に関わるのは、主に最後の「装置部品」の領域です。装置全体では非破壊検査を指定しない現場も多い一方、人が下に入るフレーム、吊り具・治具、真空・圧力がかかる容器、回転体の軸など、破損時の被害が大きい部位では溶接部の非破壊検査が要求されることがあります。

「非破壊試験」「非破壊検査」「非破壊評価」の違い

この3語は現場ではほぼ同義で使われますが、JIS Z 2300:2020「非破壊試験用語」では明確に区別されています。
用語 英語 意味
非破壊試験 Non-Destructive Testing(NDT) 素材又は製品を破壊せずに、品質又はきず、埋設物などの有無及びその存在位置、大きさ、形状、分布状態などを調べる試験
非破壊検査 Non-Destructive Inspection(NDI) 非破壊試験の結果から、規格などによる基準に従って合否を判定する方法
非破壊評価 Non-Destructive Evaluation(NDE) 非破壊試験で得られた情報を、試験体の性質又は使用性能の面から総合的に解析・評価すること
「探触子を当てて内部を調べる」行為自体が試験(NDT)であり、「その結果を合格基準と照らし合わせて良品/不良品を決める」ことが検査(NDI)です。そして「見つかったきずが、その部品の設計寿命や強度にどう影響するかを解析する」のが評価(NDE)にあたります。
実務上のポイントは、図面に「UT」と書いただけでは合否判定の基準が決まらないことです。検査を依頼する際は、試験方法(どう調べるか)と判定基準(どこからを不合格とするか)を必ずセットで指定します。
詳しくは後述の「図面・仕様書での指示の書き方」で解説します。

設計者が非破壊検査を知っておくべき理由

検査の実務を行うのは有資格の検査員ですが、「その部品が検査可能かどうか」は、設計者が材質・形状・構造を決めた時点でほぼ確定します。

1. 材質の選定で使える手法が決まる

磁粉探傷試験(MT)は磁石に引き寄せられる強磁性体にしか適用できません。SUS304のようなオーステナイト系ステンレスは基本的に磁石に付かないため、MTは使えず、浸透探傷試験(PT)などに置き換える必要があります。

2. 板厚と形状で適用範囲が決まる

溶接部の超音波探傷試験の代表規格であるJIS Z 3060:2015「鋼溶接部の超音波探傷試験方法」は、厚さ6mm以上のフェライト系鋼の完全溶込み溶接部を対象としています。薄板の溶接部やオーステナイト系ステンレスの溶接部は、この規格の適用範囲から外れます。板厚1.5mmの薄板筐体に「溶接部UT」と指示しても、標準規格の適用範囲から外れてしまうため成立しません。

3. アクセス性がなければ検査できない

超音波探傷は探触子(センサー)を当てる面が必要で、放射線透過試験は線源とフィルム(または検出器)を部品の両側に配置する必要があります。溶接後に完全に密閉される内部の溶接部は、後から検査する手立てがほとんどありません。検査を要求する部位は、検査できる順序で組み立てられるよう設計しておく必要があります。

4. 検査費用と納期が乗る

非破壊検査は工程が増えるため、部品単価にも納期にも影響します。とくに放射線透過試験は管理区域の設定や有資格者の配置が必要で、簡便な手法とはコスト構造が大きく異なります。

非破壊検査の主な種類と対応JIS規格【一覧表】

JIS Z 2305「非破壊試験技術者の資格及び認証」では、技術者資格の対象となるNDT方法(手法)が規定されています。機械部品や製造現場の実務では、検査対象の部位(表面か内部か)や材質によって手法を使い分けてください。
手法 略号 検出できるきずの位置 主な対象材質 代表的なJIS規格
外観試験 VT 表面 制限なし JIS Z 2300(用語)
浸透探傷試験 PT 表面に開口したきず 金属・非金属(多孔質は不可) JIS Z 2343-1:2017 ほか
磁粉探傷試験 MT 表面・表面直下 強磁性体のみ JIS Z 2320-1:2017 ほか
渦電流探傷試験 ET 表面・表層 導電性材料 JIS Z 2316-1:2014 ほか
超音波探傷試験 UT 内部・表層 金属全般(一部制約あり) JIS Z 3060:2015(鋼溶接部)
放射線透過試験 RT 内部 制限は少ない JIS Z 3104:1995(鋼溶接継手)
デジタルRT — 内部 制限は少ない JIS Z 3110:2017
漏れ試験 LT 貫通きず・漏れ 容器・配管 (用途別規格)
アコースティック・エミッション AE 進展中のきず 主に構造物 (用途別規格)
赤外線サーモグラフィ IRT 表層の剥離・欠損 主に構造物・電気設備 (用途別規格)
ひずみゲージ試験 ST 応力・ひずみ 制限なし (用途別規格)
※上表のJIS番号は日本規格協会のデータベースで規格名称・発行年を確認したものです。実際の検査では発注先や業界標準に応じた個別規格(圧力容器、橋梁、鉄道車両など)が優先される場合があります。
このうち、PT・MT・UT・RTの4手法は非破壊検査の現場で広く使われており、機械部品の実務で登場する頻度が高い手法です。以下では、まず表面系、次に内部系の順に解説します。

表面のきずを調べる手法

外観試験(VT:Visual Testing)

目視や拡大鏡、内視鏡、カメラを用いてきずを観察する、最も基本的な手法です。「ただ見るだけ」と思われがちですが、実際には照度条件や観察距離、記録方法を定めて実施されます。JIS Z 2305の技術者認証でも、外観試験は独立したNDT方法として位置づけられています。
  • 検出できるもの:割れ、アンダーカット、オーバーラップ、ピット、溶接ビードの形状不良、変形、腐食など
  • メリット:低コスト・短時間、特殊な設備が不要
  • デメリット:表面に見えるきずしか分からない、検査員の技量と照明条件に左右される
  • 実務での位置づけ:他の手法の前段として必ず実施される。表面が汚れていればPTもMTも成立しないため、順序上も最初に来る
溶接部の外観で何を見るかは、溶接記号の一覧・見方・書き方・種類|設計図面での正しい使い方を事例で解説と併せて理解すると図面指示がしやすくなります。

浸透探傷試験(PT:Penetrant Testing)

表面に浸透液(毛細管現象で細いきずに染み込む液体)を塗り、余分な液を拭き取ったうえで現像剤を塗ることで、きずの中に残った液を拡大して見せる手法です。「カラーチェック」という通称で呼ばれることもあります。
手順の流れ:前処理(脱脂・洗浄)→ 浸透液の適用 → 余剰浸透液の除去 → 現像 → 観察 → 後処理
大きな特徴は、材質を選ばないことです。 金属でも樹脂でも、表面が滑らかで浸透液を吸い込まない材料であれば適用できます。SUS304など磁粉探傷が使えない材料の表面きず検査では、PTが第一候補になります。
  • 検出できるもの:表面に開口している割れ、ピンホール、ラップなど
  • 検出できないもの:表面に達していない内部のきず。表面直下のきずも検出できない
  • メリット:装置が簡易で持ち運びしやすい、大型・複雑形状にも適用可能、材質の制約が少ない
  • デメリット:開口きず限定、多孔質材(鋳物の粗い面、焼結材など)では液が全面に残り判定できない、前処理の質が結果を左右する、低温環境では標準条件から外れる(10℃より低い温度での試験はJIS Z 2343-6:2012が別途規定)

磁粉探傷試験(MT:Magnetic particle Testing)

試験体を磁化し、表面に磁粉(鉄粉)を散布する手法です。きずがあるとその部分で磁束が漏れ(漏洩磁束)、磁粉が吸着して模様(磁粉模様)を作るため、きずの位置と形状が可視化されます。
最大の制約は、強磁性体にしか使えないことです。 JIS Z 2320-1:2017は強磁性体の磁粉探傷試験の一般通則を規定しており、判定基準は規定していません。判定基準は別途、受渡当事者間や個別規格で決めます。
  • 適用できる材質:炭素鋼(SS400、S45Cなど)、鋳鉄、フェライト系・マルテンサイト系ステンレス(SUS430など)
  • 適用できない材質:オーステナイト系ステンレス(SUS304、SUS316など)、アルミニウム、銅、チタン、樹脂
  • 検出できるもの:表面および表面直下の割れ、きず
  • メリット:PTより検出感度が高いとされる、前処理がPTほど厳しくない、結果が直感的に分かりやすい
  • デメリット:強磁性体限定、磁化方向ときずの方向の関係で検出性が大きく変わる(きずが磁束に直交する向きのとき最も検出しやすい)ため通常は磁化方向を変えて2方向以上実施する、試験後に脱磁が必要な場合がある
設計者が押さえるべきポイントは、ステンレスの系統によって適用可否が逆転することです。SUS304は磁石に付かないためMT不可、SUS430は付くためMT可能というように、同じ「ステンレス」でも扱いが変わります。
ステンレスの系統ごとの違いは、ステンレスとは?種類・特徴・用途・注意点まで徹底解説で整理しています。炭素鋼については炭素鋼とは?特徴や種類・用途を解説!SS400・S45C・S50Cも紹介を参照してください。

渦電流探傷試験(ET:Eddy current Testing)

コイルに交流電流を流して試験体の表面付近に渦電流(うず状に流れる誘導電流)を発生させ、きずによる渦電流の乱れをコイルのインピーダンス変化として検出する手法です。JIS Z 2316-1:2014に一般通則が規定されています。
  • 適用できる材質:導電性のある材料(磁性の有無は問わない。アルミ、銅、ステンレスにも適用可)
  • 検出できるもの:表面および表層のきず。材質の違いや熱処理状態の判別、膜厚測定にも応用される
  • メリット:非接触・高速で、細径管や線材の全長検査など連続・自動検査に向く。カップリング材(超音波探傷で使う接触媒質)が不要
  • デメリット:深い内部のきずは検出できない(渦電流は表面付近に集中する)、形状が複雑だと信号が乱れる、リフトオフ(コイルと試験面の距離変動)の影響を受ける、信号の解釈に経験を要する
機械部品の単品検査より、配管・チューブ・棒材などの量産ラインでの全数検査で威力を発揮する手法です。

内部のきずを調べる手法

超音波探傷試験(UT:Ultrasonic Testing)

試験体に超音波(人の耳に聞こえない高い周波数の音波)を入射し、きずや底面で反射して戻ってくるエコーを測定する手法です。反射波が戻るまでの時間からきずの深さ、エコーの高さからきずの大きさの目安を推定します。
鋼の溶接部については、JIS Z 3060:2015「鋼溶接部の超音波探傷試験方法」が代表的な規格です。同規格は、厚さ6mm以上のフェライト系鋼の完全溶込み溶接部を、基本表示の超音波探傷器で手動探傷する場合の、きずの検出方法・位置および寸法の測定方法を規定しています(鋼管の製造工程中の継手溶接部は対象外)。
  • 検出できるもの:内部の割れ、融合不良、溶込み不足、ラミネーション(板材内部の層状はく離)、厚さ測定
  • 検出しにくいもの:超音波ビームに対して平行に広がるきず、球状の小さな空洞(気孔・ブローホール)は反射が弱く検出しにくい傾向がある
  • メリット:厚い部材の内部を片面からのアクセスだけで検査できる、放射線を使わないため管理区域が不要、きずの深さ方向の位置が分かる
  • デメリット:探触子と試験面の間に接触媒質(カップラント)が必要、表面が粗いと感度が落ちる、薄板は多重反射で判定が難しい、オーステナイト系ステンレス溶接部は結晶粒が粗く超音波が散乱するため難度が高い、結果の解釈に技量を要する
発展手法として、多数の振動子を並べて電子的にビームを走査するフェーズドアレイ超音波探傷(PAUT)や、きず先端からの回折波を利用して高さを精度よく測るTOFD法があります。これらは画像として結果が残るため記録性に優れ、放射線を使わない代替手法として採用が広がっています。

放射線透過試験(RT:Radiographic Testing)

X線やγ線を試験体に照射し、透過した放射線の強弱をフィルムや検出器に記録する手法です。きずの部分は放射線が透過しやすいため、透過写真上で濃く(黒く)写ります。
鋼の溶接継手については、JIS Z 3104:1995「鋼溶接継手の放射線透過試験方法」が工業用X線フィルムを用いた直接撮影方法について規定しています。デジタル検出器を使う場合は、JIS Z 3110:2017「溶接継手の放射線透過試験方法―デジタル検出器によるX線及びγ線撮影技術」が該当します。
  • 検出できるもの:ブローホール、スラグ巻き込み、溶込み不良、割れ、鋳造品の巣。内部きずを画像として記録できる
  • 検出しにくいもの:放射線の透過方向に対して薄く平行に開いた割れ(ラミネーションなど)
  • メリット:結果が画像として残り、第三者が後から確認できる、材質による制約が少ない、きずの種類を識別しやすい
  • デメリット:放射線を扱うため法規制と安全管理が必須、線源と検出器を部品の両側に配置する必要があり片側からしかアクセスできない部位は不可、厚肉材では露出時間が長くなる、設備・運用コストが高い
なお、RTとUTは「どちらが優れている」ではなく得意なきずの向きが違う関係にあります。RTは体積型のきず(ブローホールなど)、UTは面状のきず(割れ、融合不良)の検出に向くとされ、重要部位では両方を併用することもあります。

産業用X線CT

X線を多方向から照射し、コンピュータで断面像や3次元データを再構成する手法です。従来のRTが「影絵」だったのに対し、CTは内部構造を立体的に把握できます。
  • 用途:鋳造品の内部欠陥の位置と体積の定量評価、樹脂成形品のボイド、電子部品のはんだ接合部、内部構造を持つ組立品の非分解検査、3Dプリンタ造形品の内部品質評価
  • メリット:非分解で内部形状を実測でき、設計3Dデータとの比較(寸法検証)も可能
  • デメリット:装置が高額で測定できるサイズに制約がある、密度の高い材料や大型部品では透過が困難、1点あたりの測定時間とコストが大きい
試作段階での原因調査や、量産前の工程条件の詰めで使われることが多く、全数検査の手段としては限定的です。

その他の非破壊検査手法

漏れ試験(LT:Leak Testing)

容器や配管の気密性・水密性を確かめる試験です。加圧または減圧した状態での圧力変化の測定、発泡液の塗布による気泡の観察、ヘリウムなどのトレーサガスを用いた検出などがあります。真空チャンバーや流体を扱う装置の設計では、溶接部に貫通きずがないことを漏れ試験で確認するケースが多くあります。
JIS Z 2305の対象NDT方法にも漏れ試験が含まれていますが、水圧試験は除外されています。

アコースティック・エミッション試験(AE)

材料の内部でき裂が発生・進展するときに放出される微小な弾性波(AE波)をセンサーで捉え、き裂の発生位置と活動状況を推定する手法です。他の手法が「今あるきずを探す」のに対し、AEは「今まさに進展しているきず」を捉える点が特徴です。稼働中・加圧中の設備の監視に用いられます。

赤外線サーモグラフィ試験(IRT)

表面温度の分布を赤外線カメラで可視化する手法です。外壁タイルの浮きやコンクリートの剥離、電気設備の異常発熱の検出などに使われます。内部に空隙があると熱の伝わり方が変わるため、温度分布の差として現れます。

ひずみゲージ試験(ST)

試験体に貼り付けたひずみゲージで、負荷時の変形量を測定する手法です。きずを探すのではなく、設計上の応力分布が想定どおりかを実測で確認する用途で利用されます。設計者にとっては、CAEの妥当性確認の手段として関わりの深い手法です。

打音検査

ハンマーで叩いた音や振動から内部の異常を推定する手法です。簡便で古典的ですが、タイルの浮きやボルトの緩みの点検では現在も広く使われています。近年は音をセンサーで拾って周波数解析し、判定を自動化する取り組みも進んでいます。

材質別・非破壊検査の適用可否マトリクス

設計者が最初に確認すべき「この材質でどの手法が使えるか」を、機械部品でよく使う材質ごとに整理しました。
材質 VT PT MT ET UT RT
SPCC/SPHC(薄板) ○ ○ ○ ○ △ ※1 ○
SS400 ○ ○ ○ ○ ○ ○
S45C ○ ○ ○ ○ ○ ○
SUS304(オーステナイト系) ○ ○ × ○ △ ※2 ○
SUS430(フェライト系) ○ ○ ○ ○ ○ ○
A5052(アルミニウム) ○ ○ × ○ △ ○
銅・真鍮 ○ ○ × ○ △ ○
樹脂(PEEK、MCナイロンなど) ○ △ ※3 × × △ ○
鋳造品(粗い鋳肌) ○ △ ※4 ○ ※5 △ △ ○
○:一般に適用可/△:条件次第または難度が高い/×:原理的に適用できない
※1 薄板は多重反射のため判定が難しい
※2 溶接部は超音波が散乱しやすく難度が高い
※3 材料による
※4 多孔質な鋳肌面には適用できない
※5 鋳鉄(強磁性体)の場合

この表から読み取れる設計上の含意

  1. SUS304やアルミを選んだ時点でMTは選択肢から消える
    磁力を利用するMTは原理的に使用できません。表面きずの検査はPTかETになります。
  2. 薄板の溶接構造では内部きずの検査手段が限られる
    JIS Z 3060のUTは厚さ6mm以上が対象であり、薄板筐体では外観試験+PT+漏れ試験といった組み合わせが現実的です。
  3. 樹脂部品の内部検査はX線CTが主な手段
  4. 表面処理(めっき・アルマイト)の前後タイミングを指定する
表面きずを調べる検査は、必ず「表面処理の前」に実施するよう図面・仕様書で指定します。
アルミの表面処理を伴う場合はアルマイト(陽極酸化処理)とは?特徴や種類、用途などを解説、鉄系のメッキについてはメッキの目的や種類、加工工程についてご紹介も参考になります。

手法の選び方|4つの判断軸

非破壊検査の手法は、主に以下の「4つの判断軸」を掛け合わせて絞り込みます。設計者は「どのようなきずを防ぎたいか」「製品がどのような条件に置かれるか」を基に、最適な手法を選択してください。

軸1:きずはどこにあるか

  • 表面に開口している可能性:PT、MT、VT
  • 表面直下:MT、ET
  • 内部:UT、RT、X線CT
  • 貫通・漏れ → LT
「溶接部の割れや融合不良か」「鋳造品の巣か」「機械加工材のラミネーションか」など、想定される欠陥の種類を明確にすることが第一歩です。

軸2:材質は何か

前掲のマトリクスのとおりです。磁性の有無、導電性の有無、多孔質かどうかの3点でほぼ絞り込めます。
  • 磁性の有無:強磁性体ならMTが有効、非磁性体(SUS304やアルミ)ならPTを選択
  • 導電性の有無:導電性があればETが適用可能
  • 多孔質かどうか:鋳物の粗い表面や焼結材にPTは不向き

軸3:形状・板厚・アクセス性はどうか

物理的な制約も重要な判断基準です。
  • 板厚6mm未満の溶接部: UTの標準的な手法は適用範囲外
  • 片側からしかアクセスできない:RT不可、UTを検討
  • 溶接後に内部が密閉される:組立前に検査する工程設計が必要
  • 複雑形状・狭隘部:ETやUTは信号が乱れやすく、PTの方が確実な場合がある

軸4:数量と記録要求はどうか

コストと品質保証のレベルに応じて手法を決定します。
  • 1〜数個の試作品:PT、UTなど簡便な手法。段取り費の比重が大きい
  • 量産で全数検査:ETのような自動化しやすい手法、または工程内の画像検査
  • 第三者への提出用の記録が必要:RT(透過写真)、デジタルRT、PAUT/TOFDなど画像が残る手法
発注先や最終ユーザーが記録の提出を求めるかどうかで、手法の選択が変わります。「検査した」という事実だけでよいのか、「画像や数値の記録」が必要なのかを、設計・調達の初期段階で確認しておくことが重要です。

設計段階で「検査しやすさ」を作り込む

非破壊検査は「後工程」ですが、その成否や検査精度は、設計段階の形状や構造に左右されます。検査性を織り込む具体的な着眼点は以下のとおりです。

● 探触子・線源のアクセススペースを残す
UTなら探触子を当てて走査できる平坦面、RTなら線源側と検出器側の両方の空間が必要です。リブや隣接部品との干渉で走査できない位置に重要溶接部を置かないようにします。

● 検査する溶接部を「あとから見える」位置に配置する
箱形状の内側で全周溶接してから蓋を閉じる設計では、内側の溶接部は検査することができません。検査が必要な部位は、組立順序の早い段階で検査できるよう部品分割や組立手順を考慮します。

● 表面粗さと仕上げを考慮する
UTは探傷面が粗いと感度が落ち、PTは表面が粗いと現像剤が全面に残って判定が難しくなります。検査対象面には、検査に適した仕上げを指定しましょう。逆に、溶接ビードをグラインダーで平坦に仕上げると検査性は上がるため、検査要求のある部位は仕上げ指定とセットで考えます。

● MTの磁化方向を考える
きずの想定方向に対して磁束が直交するように磁化できる形状かを確認します。極端に細長い形状や複雑な三次元形状では、必要な方向に磁化しにくいことがあるため、形状の工夫や別の検査手法(PTなど)の検討が必要です。

● きずを作りにくい設計にする(そもそもの対策)
検査で見つける前に、きずを発生させない設計が本質的です。溶接部では、拘束が強いと溶接時の残留応力で割れが生じやすくなります。板厚差の大きい部材の突合せ、溶接部と穴・切欠きの近接、過剰な溶接量などは避けます。

なお、アルミニウムは熱影響を受けやすく、溶接加工の難度が最も高い材質です。ビードの仕上がりを一定に保つには、穴や切欠きと溶接部が近づきすぎないように、他の材質よりも注意して設計する必要があります。

溶接構造の設計上の注意点は、板金溶接部品の見積もりページで材質ごとの特性とともに確認できます。

図面・仕様書での指示の書き方

非破壊検査を要求するときは、次の6項目を明示します。どれか1つでも欠けると、見積もり段階で問い合わせが返ってきたり、想定と違う検査が実施されたりしかねません。

1. 適用する試験方法と規格

 「UT」と書くだけでなく「JIS Z 3060による超音波探傷試験」のように、方法と準拠規格を書きます。デジタルRTを想定するならJIS Z 3110を指定するなど、明確な指示が必要です。

2. 対象部位と範囲

「全溶接部」「A部の全周溶接部のみ」「溶接長の20%を抜き取り」など、どこをどれだけ検査するかを特定します。溶接記号と併記すると誤解が減ります。

3. 判定基準(合否の基準)

最も抜けやすい項目です。前述のとおり、JIS Z 2320-1のように試験方法を規定していても判定基準を規定していない規格があります。「きず等級○級以上を合格とする」など、基準を明示するか、判定基準を含む業界規格を指定しましょう。

4. 実施する技術者の資格レベル

非破壊検査は検査員の技量に結果が依存するため、「JIS Z 2305のUTレベル2以上の技術者が実施」といった指定をします。レベルの意味は次章で解説します。

5. 検査のタイミング(工程上の位置)

表面処理の前か後か、熱処理の前か後か、機械加工の前か後かを指定します。メッキやアルマイト後にPTを行うと皮膜が浸透液を妨げ、正しく判定できません。焼け取りや研磨の前後でも結果は変わります。

6. 提出書類

検査報告書の要否、必要な記載項目(試験条件、使用機器、技術者の資格、判定結果、透過写真や画像データの添付など)を指定します。図面指示そのものの考え方については、一般公差とは?寸法公差・幾何公差の違い、JIS等級・許容差一覧や溶接記号の一覧・見方・書き方・種類も合わせてご覧ください。

非破壊検査に関わる資格と法規制

JIS Z 2305による技術者認証

非破壊検査の結果は実施者の技量に大きく依存するため、技術者の力量を認証する制度が整備されています。日本ではJIS Z 2305「非破壊試験技術者の資格及び認証」に基づき、一般社団法人日本非破壊検査協会(JSNDI)が認証を行っています。同規格は国際規格ISO 9712に対応しています。
資格はNDT方法ごとに分かれ、レベル1〜3の3段階です。数字が大きいほど技術レベルが高くなります。
レベル 位置づけ(概要)
レベル1 指示書に従い、レベル2または3の監督下でNDTを実施する力量。試験方法・技法の選択や結果の解釈は行わない
レベル2 規格に従って試験を実施し、結果を評価・判定する力量。指示書の作成なども担う
レベル3 試験手順の確立、規格の解釈、レベル1・2の技術者の指導・訓練などを担う最上位
認証の取得には、視力検査、規定の訓練、試験の合格、実務経験の4条件を満たさなければなりません。試験は一次試験と二次試験で構成され、年2回(春期・秋期)実施されています。
注意点として、JSNDIが発行する資格証明書は免許ではなく適格性証明書です。実際の業務で資格が必要かどうかは、顧客との契約や適用する規格・法令によって決まります。
なお、JIS Z 2305は2024年に改正版が発行されています(ISO 9712:2021に対応)。認証制度の運用がどの版に基づいているかは、受験・発注の時点でJSNDIの案内を確認してください。

放射線を扱う場合の法規制

放射線透過試験を行う場合、労働安全衛生法と電離放射線障害防止規則(電離則)による規制がかかります。産業用X線は労働安全衛生法の体系で規制され、医療用X線とは根拠法令が異なります。
  • 管理区域の設定:外部放射線による実効線量が3か月間につき1.3ミリシーベルトを超えるおそれのある区域は管理区域とし、標識で明示して必要のある者以外の立入りを禁止します
  • エックス線作業主任者の選任:医療用および波高値による定格管電圧1000kV以上の装置を除くエックス線装置を用いる作業では、エックス線作業主任者免許を受けた者のうちから、管理区域ごとにエックス線作業主任者を選任する必要があります
  • 装置の設置届:X線装置の新設・移設などにあたっては、所轄の労働基準監督署への届出が必要です
つまり、RTは「装置を買えば誰でもできる」検査ではありません。社内にRT体制がなければ外部の検査会社に委託するのが通常で、その分の費用と日程を見込む必要があります。UTやPAUTが代替として検討されるのは、この管理負担の差が理由の一つです。

コストと納期への影響

非破壊検査は工程が増える分、部品のコストと納期に影響します。一般的な傾向として、次のような差があります。
手法 設備・体制の負担 1部位あたりの所要時間 記録性
VT 小 短 低(写真・チェックシート)
PT 小 短〜中 中(指示模様の写真)
MT 中 短〜中 中
ET 中〜大(治具が必要) 短(自動化で極短) 中〜高
UT 中 中 中(PAUT/TOFDなら高)
RT 大(管理区域・有資格者) 長 高(透過写真)
X線CT 非常に大 長 非常に高
※上表は一般的な傾向の整理であり、具体的な金額・日数は部品形状、数量、検査範囲、委託先によって大きく変動します。
コスト面で効果が大きいのは、検査範囲を絞ることと、検査タイミングを1回にまとめることです。「念のため全溶接部をUT」とすると費用が膨らみます。応力が集中する部位、破損時の影響が大きい部位に限定して要求するのが実務的です。
また、そもそも非破壊検査を必要としない設計に寄せるという選択肢もあります。溶接構造を切削の一体品に置き換えれば溶接部そのものがなくなり、溶接部の内部きずの検査は不要です。試作や少量の装置部品では、溶接と切削のコスト差が想定より小さいケースもあるため、両方の見積もりを取って比較する価値があります。
meviy(メビー)では、切削加工(角物)部品の見積もりと板金溶接部品の見積もりの両方で見積もりを取り、形状と価格を比較できます。

よくある質問(FAQ)

Q. 非破壊検査と非破壊試験はどう違いますか?

A. 非破壊試験(NDT)は壊さずにきずを調べる試験そのもの、非破壊検査(NDI)はその結果を判定基準と照らして合否を判定することを指します。現場では厳密に区別せず同義で使われることも多いですが、図面や仕様書では「試験方法」と「判定基準」を分けて指示することが大切です。

Q. SUS304の溶接部を検査したいのですが、どの手法を選べばよいですか?

A. SUS304はオーステナイト系ステンレスで磁石に付かないため、磁粉探傷試験(MT)は使えません。表面の割れは浸透探傷試験(PT)、貫通きずの有無は漏れ試験、内部は放射線透過試験(RT)が候補になります。オーステナイト系の溶接部は超音波が散乱しやすく、UTは難度が高くなります。

Q. 板厚2mmの薄板溶接品に超音波探傷は使えますか?

A. 鋼溶接部のUTの代表規格であるJIS Z 3060:2015は厚さ6mm以上のフェライト系鋼の完全溶込み溶接部を対象としており、板厚2mmは適用範囲外です。薄板では外観試験、浸透探傷試験、漏れ試験、放射線透過試験などの組み合わせで健全性を確認するのが一般的です。

Q. 非破壊検査に資格は必要ですか?

A. JSNDIが発行するJIS Z 2305の資格証明書は免許ではなく適格性証明書であり、それ自体が業務を禁止・許可するものではありません。ただし顧客との契約や適用規格で資格レベルが要求されることが多く、実務上は必要になる場面が一般的です。一方、放射線透過試験では、電離放射線障害防止規則に基づくエックス線作業主任者の選任など、法令上の義務が別途生じます。

Q. 表面処理の前と後、どちらで検査すべきですか?

A. 表面きずを対象とする検査は、原則として表面処理の前に実施します。メッキやアルマイトの皮膜があると浸透液がきずに入らず、正しく判定できません。素材と皮膜の両方を評価したい場合は、処理前後の2回実施する指示が必要です。

まとめ

非破壊検査(NDT)は、製品を壊すことなく内部や表面のきずを調べる検査技術の総称です。実務で頻出する手法は、表面のきずを調べる「外観試験(VT)・浸透探傷試験(PT)・磁粉探傷試験(MT)・渦電流探傷試験(ET)」と、内部のきずを調べる「超音波探傷試験(UT)・放射線透過試験(RT)」に大別されます。
設計者にとって最も重要なポイントは、「どの検査手法が使えるかは、設計時点でほぼ決まってしまう」という点です。
SUS304やアルミを選定すればMTは使えなくなり、板厚6mm未満の薄板では標準的なUT(JIS Z 3060)が適用範囲外となります。また、箱型構造などで後から密閉してしまうと、内部検査そのものが物理的に不可能になります。そのため、必要な部位には「探触子や線源が届くアクセススペース」や「適切な組立順序・表面仕上げ」を設計段階から織り込んでおくことが欠かせません。
そして、図面や仕様書で検査を要求する際は、現場での手戻りや見積りトラブルを防ぐため、以下の6点を必ず明示するようにしてください。
  • 適用する試験方法と規格(例:JIS Z 3060によるUT)
  • 対象部位と範囲(全溶接部か、抜き取りか等)
  • 判定基準(合否の基準となるきず等級など ※最も抜け落ちやすい)
  • 技術者の資格レベル(JIS Z 2305 レベル2以上など)
  • 実施する工程タイミング(めっき等の表面処理の「前」など)
  • 提出書類(検査報告書や記録画像データの要否)
品質とコストのバランスを意識しつつ、本記事の「材質別・適用可否マトリクス」を参考に、確実な検査指示を図面に落とし込んでください。