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ポリアミド樹脂とは?高性能樹脂ナイロンの特性・用途・加工上の注意点を徹底解説

ポリアミド(PA)は「ナイロン」という名称で広く知られる高性能なエンジニアリングプラスチックです。自動車部品や工業製品、衣料品に至るまで幅広く利用されています。

本記事では、ポリアミドの基本的な特性から、メリット・デメリットや主な用途について解説します。加工時の注意点もまとめているので、設計・開発担当の方は最後までご覧ください。

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ポリアミドとは?

ポリアミドとは、主鎖にアミド結合(-CONH-)が繰り返し連なっている熱可塑性樹脂の総称です。代表的なポリアミド樹脂であるナイロン66は、1935年に米国デュポン社が世界で初めて合成繊維として開発したポリアミド66を指し、日本でも広く知られています。

図1 ナイロン66の繰り返し単位とアミド結合

当初は主に繊維として利用されていましたが、高い機械的強度や優れた耐熱性・耐薬品性から工業材料としても用いられています。自動車や電気製品などでも使用される、強靭で耐久性に優れたエンジニアリングプラスチックです。

ポリアミドの種類

ポリアミド(ナイロン)は、化学構造、特に炭素数や芳香環の有無によって特性が異なります。

  • 汎用脂肪族ナイロン(PA6、PA66など)
    機械的特性とコストのバランスに優れており、自動車部品や機械部品で広く使用されています。
  • ロングチェーンナイロン(PA610、PA612、PA11、PA12など)
    鎖長が長いため、吸水率の低さと柔軟性の高さが特徴です。チューブやケーブルの被覆材などに適しています。
  • 高耐熱脂肪族ナイロン(PA46)
    結晶度が高いため、耐熱性に優れます。エンジン周辺部品やSMT(表面実装技術)対応のコネクタなどに使用される材料です。
  • 半芳香族ナイロン(PPA系-MXD6、PA6T、PA9T、PA10Tなど)
    分子内に芳香環を持つため、耐熱性や剛性、寸法安定性に優れ、金属代替材料として高い性能を発揮します。

ポリアミドの特性

ポリアミドとほかのエンジニアリングプラスチックとの比較を以下の表にまとめます。

特性項目 ポリアミド(PA) POM PBT ABS
引張強さ ◎(高い) ◎(高い) ○(中程度) △(低め)
耐摩耗性 ◎(優れる) ◎(優れる) ○(標準) △(摩耗しやすい)
耐熱性 ○〜◎(グレードによる) ◎(安定) △(低い)
吸湿性 ×(高い) ◎(低い) ◎(低い) ◎(低い)
寸法安定性 △(吸湿により変動) ◎(安定) ◎(安定) ○(標準)
加工性(切削) ○(注意必要) ◎(良好) ○(やや難) ◎(良好)
比重 約1.1〜1.2 約1.4 約1.3〜1.5 約1.04

ポリアミドは、機械的特性、物理的・化学的特性のバランスが総合的に優れたエンジニアリングプラスチックです。

ポリアミドの機械的特性

ポリアミドは高い強度と靭性(粘り強さ)を兼ね備えており、衝撃に対して粘り強く破断しにくい特性を持ちます。代表的なポリアミドであるポリアミド6(PA6)の機械的特性は以下のとおりです。

引張強さ(MPa) 破断時伸び(%) 圧縮強さ(MPa) 曲げ強さ(MPa) 硬度(ロックウェル)
非強化 41~166 30~100 89~110 108 R119

引張強度は金属に匹敵するレベルでありながら軽量です。耐摩耗性にも優れており、ギアやベアリングといった繰り返しの摩擦が発生する摺動部品にも適しています。自己潤滑性も高いため、潤滑油がない環境でも滑らかな動作が可能です。

ポリアミドの物理・化学的特性

主なポリアミド(ポリアミド6)の物理・化学的特性を以下の表にまとめます。

比重 引張弾性率(MPa) 線膨張率x10-5/℃ 耐酸・耐アルカリ性 耐溶剤性 吸水率(重量%)
非強化 1.12~1.14 2600 8.0~8.3 強酸・強アルカリに侵される フェノール・ギ酸に溶解 1.3~1.9

融点が高く、優れた耐熱性を持つことがポリアミドの大きな特徴です。例えば、ナイロン66は約265℃という高い融点を持ち、高温環境下での使用に耐えられます。

耐薬品性にも優れており、ガソリンやオイル、弱酸、弱アルカリなど多くの化学薬品に対して高い耐性を示します。電気絶縁性も高いため、電気・電子部品にも採用可能です。

ポリアミドのメリット

高強度・耐摩耗性(優れた機械特性)

ポリアミドの最大のメリットは、機械的強度と耐久性です。引張強度と剛性が高いため、部品を薄肉化・軽量化しつつ必要な強度を確保できます。自動車のエンジンカバーやブレーキペダルなど、従来は金属で作られていた部品の代替としても使用されています。

また、優れた耐摩耗性と自己潤滑性により、潤滑油が使えない箇所のギアやカムの寿命を延ばし、メンテナンスの負担を軽減できる点もメリットです。

耐熱・耐薬品性(過酷環境での安定性)

ポリアミドは、高温、化学薬品、油剤といった過酷な環境下でも安定した性能を維持できます。特にナイロン66は融点が約265℃であるため、自動車のエンジンルーム内のような高温部位でも使用可能です。

ガソリンやエンジンオイルにも侵されにくいため、燃料系部品にも適しています。金属と違って錆びないため、腐食が問題となる環境でもメンテナンスフリー化を実現できます。

軽量で成形自在(金属代替による設計自由度と環境対応)

ポリアミドは設計の自由度を大きく向上させる材料です。比重が金属の約7分の1ほどと小さいため、製品の軽量化を実現し省エネルギー化に貢献します。

また、射出成形を用いると、金属加工では困難な複雑な形状でも一体で量産でき、部品点数の削減とコストダウンにつながります。鉛を含まないため、水道部品などで規制が強化されている鉛フリー材料への置き換えにも対応可能です。

ポリアミドのデメリット

吸湿による寸法変化と物性劣化

ポリアミドの最大のデメリットは吸湿性の高さです。空気中の水分を吸収して寸法が変化(膨張)したり、物性(剛性など)が低下したりする可能性があります。
高い寸法精度が求められる部品に使用する際は、吸湿による変化を設計段階で織り込むか、吸水率の低いグレード(ナイロン11や12など)を選定しなければなりません。

成形収縮と加工上の難しさ

ポリアミドは、溶融時の粘度変化が大きく、冷却固化時の体積収縮率が高いため、成形加工が難しい材料です。射出成形では、精密な温度コントロールと、収縮率を正確に見込んだ金型設計が不可欠です。切削加工を用いる場合でも、加工熱で溶けやすく、刃物に巻き付きやすいといった難しさがあります。

金属に及ばない強度・耐熱性と耐候性

エンジニアリングプラスチックとして高性能ではあるものの、強度や耐熱性では金属に及びません。特に高温下での荷重保持能力は金属に劣ります。紫外線に弱く、屋外で長時間使用すると劣化(変色・脆化)するため、屋外用途ではUV安定剤を添加した耐候グレードの使用や、塗装による表面保護が必要です。

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ポリアミドの用途

優れた特性からポリアミドは幅広い分野で採用されています。代表的な用途は以下のとおりです。

分野 用途例 選ばれる理由
自動車業界 ・エンジンカバー、エアインテークマニホールド

・ラジエーターファン、冷却系部品

・燃料系チューブ、コネクタ

・ペダル、エンジンマウントブラケット

・耐熱性

・耐油性/耐薬品性

・軽量性

・高強度/高剛性

電気・電子部品 ・コネクタハウジング、スイッチ、リレーケース

・ケーブルタイ(結束バンド)、コイルボビン

・配電盤、ブレーカー、ACアダプタ外装

・電気絶縁性

・耐熱性

・寸法安定性

・難燃性

生活用品・スポーツ分野 ・衣類繊維(ストッキング、アウトドアウェアなど)

・歯ブラシの毛、調理器具(フライ返しなど)

・スキーブーツ、登山用ロープ、釣り糸

・電動工具のボディ、玩具のギア

・高強度/耐摩耗性

・柔軟性/屈曲耐久性

・軽量性

・耐寒衝撃性

産業機械・インフラ分野 ・工場の搬送装置用ローラー、ガイド

・歯車(ギア)、滑り軸受、スプロケット

・ポンプやバルブの部品(ケーシング、インペラ)

・水道メーター部品、水道管の継手

・耐摩耗性/自己潤滑性

・耐薬品性/非腐食性

・軽量性

・無毒性/衛生性

 

ポリアミドの加工種類とポイント

射出成形(インジェクション)のポイント

射出成形は、溶融したポリアミドを金型に射出して冷却・固化させる加工法です。大量生産に向いているものの、品質の安定には、乾燥・温度・収縮の3つの管理が欠かせません。

ポリアミドは吸湿性が高いため、成形前に材料を十分に乾燥させないと、成形品に気泡(シルバーストリーク)が生じ強度不足の原因となります。また、融点が高く溶融時の粘度変化も大きいため、樹脂温度と金型温度を精密に制御しなければ、充填不良や変形を引き起こします。さらに、冷却時の体積収縮率がほかの樹脂に比べて大きいため、収縮を見込んだ金型設計が、製品の寸法精度を確保するうえで不可欠です。

切削加工(機械加工)のポイント

切削加工は、ポリアミドのブロックや丸棒を工作機械で削り出して製作する方法です。金型が不要なため試作品や少量生産に適しています。加工成功の鍵は、熱の管理と材料のコンディショニングです。

ポリアミドは熱伝導率が低く、加工時に発生する摩擦熱で溶けやすい性質があります。切削速度を適切に設定し、切れ味の良い鋭利な工具を使用し、切削油やエアブローで冷却しながら加工しなければなりません。また、吸湿によって寸法が変化するため、使用環境の湿度を考慮し、事前に材料をその環境に馴染ませておく(コンディショニング)と、加工後の寸法変化を抑えられます。

3Dプリンター造形のポイント

3Dプリンター造形は、金型を使わずに樹脂を一層ずつ積み重ねて立体物を作る技術です。試作品や治具などを短時間に製作する際に利点があります。

ポリアミドの3Dプリンター造形における最大の課題は、熱収縮による反りや割れです。対策として、造形チャンバー(庫内)全体を高温に保ち、造形物が急激に冷えないように温度を精密に管理できる機種が効果的です。

造形後もすぐには取り出さず、庫内でゆっくりと冷却させると、内部応力が緩和され変形を抑制できます。ナイロン6などに比べて熱収縮率や吸湿性が低いナイロン12(PA12)といった材料選定も、安定した造形を行ううえで重要なポイントです。

meviyマーケットプレイスにおけるポリアミド部品製作実績

meviyマーケットプレイスではポリアミド系材料としてポリアミド(PA)が利用できます。主な製作実績は以下のとおりです。

切削

モーターインシュレーター
材質 PA66
サイズ W50×D50×H30
表面処理 なし
出荷日 14日目
参考価格 見積り次第

3Dプリント

基板ケース
材質 PA12(ダークグレー)
サイズ W75×D72×H23
表面処理 ポリショット
出荷日 2日目
参考価格 9,500円

注型

インテークマニホールド
材質 PA6(ブラック)
サイズ W400×D250×H200
出荷日 25日目
参考価格 2,500,000円

射出成形

インテークマニホールド
材質 PA66(ブラック)
サイズ W400×D400×H23
出荷日 35日目
参考価格 7,500,000円

ポリアミド加工の見積もり依頼は「meviyマーケットプレイス」へ

ポリアミドの部品製作には、ぜひメビーマーケットプレイスをご活用ください。
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3Dもしくは2Dの設計データをアップロードし、加工方法・材質・表面処理などの見積条件を設定すると、条件に合ったパートナーが提案されます。複数の加工会社に個別で問い合わせる手間を削減できるほか、見積もりや出荷日などの条件を比較・検討する時間も短縮できます。

まとめ

ポリアミドは、高い強度と耐久性や優れた耐熱・耐薬品性を持ちながら、軽量で成形しやすいバランスの取れたエンジニアリングプラスチックです。本記事では、ポリアミドについて基本的な特性やメリット・デメリット、加工時のポイントなどについてまとめました。紹介した内容を参考に適切なポリアミドを選択し、信頼性の高い製品設計・開発につなげましょう。

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