板金加工においては、金属を切り出す際にレーザーを使うケースも多くあります。また近年では紙や木材をレーザーで加工する機械も増えてきました。今回はレーザー加工について、機能や種類、そして使用できる素材なども含めて解説します。
目次
レーザー加工とは
レーザーはとても直進性の高い光です。レーザーのエネルギーを高めていくと、照射された部分が加熱されます。
レーザー加工はこの熱を使って金属や木材、樹脂などを切ったり、金属の溶接をしたり、さまざまな加工に利用されています。
レーザー加工のメリット
微細加工
レーザー加工機は、複雑な形状や微細な加工を得意とします。レーザー光のスポット径や波長、出力などの特性を調整することで、ミクロンオーダーの加工を実現できます。
精密加工
レーザー加工は材料に非接触で物理的な力をかけないので加工による変形が少ないです。また、1点のみに熱を集中させるので熱ひずみが少ないという特徴もあります。
高エネルギー密度
レーザー光をレンズによって集約し高いエネルギー密度にすると、金属やセラミックスなどさまざまな材質を溶かすことができます。レーザー加工は、異なる材質の溶接も可能です。
レーザー加工のデメリット
安全面
レーザーは直接目に照射すると失明する危険性があるため、保護眼鏡が必要です。
また、レーザーが金属に当たると反射し、思わぬ方向に飛び散る場合もあります。
加工速度
非接触加工のレーザー加工は、レーザー光をピンポイントに照射するため、加工速度がやや遅いというデメリットがあります。無理に速度を上げるとバリがでるため注意しなければなりません。
レーザー加工機の3つの機能
切断
レーザーで金属などさまざまな材質の切断加工ができます。あらかじめ組まれたプログラムによって複雑な形状の切断加工ができます。ただし、厚い素材の加工には向いていません。
溶接
レーザー溶接は光を集約して材料に照射して材料を溶かします。レーザー光の出力などの特性を調整することで、微細な溶接もできます。
ただし、溶接箇所の密着精度が悪く隙間が大きいと、ブローホール(気泡が閉じこめられることでできる球状の溶接欠陥)やクラック(ひび割れ)などが生じる場合があります。
彫刻(刻印、マーキング)
彫刻には、おもにラスター彫刻とベクター彫刻が存在し、ラスター形式は、点(ドット)の集まりで画像を描いて表現するデータであるため、ピクセルで構成されています。
彫刻は、非接触加工なので、切削ツールが必要ありません。また、生産性が高いので、効率よく作業できます。
レーザー加工機の種類、対応素材
レーザー加工機では主に次の3種類のレーザーが使用されます。レーザーの種類と、対応する材料、加工を次にまとめます。
CO2レーザー
二酸化炭素を使ってレーザー光線を作り出す機種です。
金属の切断や穴開け、紙や木材の切断や刻印など、非常に幅の広い領域で使用されています。現在最も多く用いられている加工機です。
YAGレーザー
イットリウムとアルミニウムの複合酸化物(Yttrium Aluminum Garnet)の結晶を使用してレーザーを作り出す加工機です。
金属や樹脂の刻印の他、金属の溶接にも使われます。CO2レーザーの加工機に比べ、高価です。
ファイバーレーザー
光ファイバーを利用してレーザーを作り出します。他のレーザーに比べ、細くピンポイントに絞った加工ができるのが特徴です。
一般にはレーザー加工が難しい、アルミや銅の切断や溶接、マーキングに使用されています。
レーザー加工に関するよくあるQ&A
切断できる厚みはどのくらいですか?
素材やレーザー出力によって異なりますが、鉄の場合は厚さ30㎜程度まで可能です。
逆に、厚さ0.1㎜の非常に薄い金属の板も加工できます。
レーザー加工機によって仕様は異なりますがさまざまな厚みを加工できるでしょう。
ただし、厚くなるにつれて精度は落ちます。
レーザー加工できない材質には何がありますか?
一般的に、鏡面加工された材料や反射率の高い材料は、レーザーが反射してしまい加工できません。また、反射した光がレーザー加工機に当たり、熱によって部品が破損し故障する可能性があります。このような場合にはファイバーレーザーなど、反射率が高い材料に適したレーザーを選びましょう。
他には、有毒なガスが発生する材質も加工できません。例えば、塩化ビニールやフッ素、テフロンなどは有毒なガスを発生します。ガスによってレーザー加工機の金属部がさびてしまう場合があります。また、レンズなどが曇ってしまってレーザー光が正しく照射されなくなる可能性もあります。
レーザー加工機は誰でも取り扱い可能ですか?
レーザー加工機は原則免許等は不要で、誰でも使用できます。
レーザー加工機は、JISC6802によってクラス分けがされています。最も危険なクラス4は、目だけでなく皮膚に当たっても危険です。
そのため、クラス4に該当するファイバーレーザーマーカーを使用する場合は、レーザー安全管理者を任命し、管理しなければなりません。
まとめ
レーザーは複雑な形状も加工できて、変形もすくない加工方法です。短納期で加工できるため試作品や実験用の部品、治具、小ロットの量産品などの製作に向いています。
安全面には注意しなければならず、専門の加工業者に試作相談をするといいでしょう。
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