削り残しを解消してコスト削減! 「meviy ラピッドプロトタイピング活用術セミナー」 レポート

株式会社ミスミとプロトラブズ合同会社の共催で2021年1月22日(金)、「meviy ラピッドプロトタイピング活用術セミナー」がオンラインで開催されました。

 

当日は3部構成で、第1部はmeviy ラピッドプロトタイピング活用術講座、第2部はオンライン工場見学とサポート体制の説明、第3部では質疑応答が行われました。

この記事では、セミナーから第1部と第3部の模様を抜粋して紹介いたします。当日参加できなかった方も、これを読めばmeviy ラピッドプロトタイピングをうまく活用しつつ、コスト削減にスムーズに取り組めるようになるはず。不安と疑問を一つひとつ解消していきましょう。

はじめに ~プロトラブズとミスミの共催理由

セミナー冒頭に、「株式会社ミスミとプロトラブズ合同会社が共催していることについて、疑問を持たれる方がいらっしゃるかも?」ということで、ミスミ小川から簡単に説明がありました。

 

▲株式会社ミスミ  meviy事業部 Rapid Prototype事業チーム 小川博之

 

プロトラブズ合同会社は1999年に米国で創業し、独自開発のデジタルマニュファクチャリングシステムにより、試作・小ロット生産を短納期・オンデマンドで受託製造する会社です。日本では2009年にサービスを開始し、現在、米国・日本を含め世界8ヵ国に製造拠点があります。

2016年には、ミスミと『meviyラピッドプロトタイピング』にて提携しました。お客様のアップロードする3D CADデータを自動解析し、短納期で生産することを最大の特徴にしたCNC切削加工サービスを提供しています。

 

削り残しを解消してコスト削減! 「meviy ラピッドプロトタイピング活用術セミナー」 レポート

「プロトラブズのノウハウ、ものづくりの取り組みをご案内させていただくことで、加工や品質の安心感につなげていただければ幸いです」と、今回のセミナーの意図を説明していました。

加工において重要なポイント「削り残し」とは?

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続いて「meviyラピッドプロトタイピング活用術講座 3軸加工に適したパーツ設計で削り残しを解消~コストセーブ術~」と題した講演が行われました。講演者は、プロトラブズ合同会社 エンジニアリング部の川村真哉さんです。

 

削り残しを解消してコスト削減! 「meviy ラピッドプロトタイピング活用術セミナー」 レポート

▲プロトラブズ合同会社 エンジニアリング部の川村真哉さん

 

削り残しを解消してコスト削減! 「meviy ラピッドプロトタイピング活用術セミナー」 レポート

発表内容は、

・3軸加工の制限を考慮する設計
・エンドミルの特性から考えるコストセーブ方法

の2つです。

 

(以下、川村さんのご説明)

 

設計領域においては、加工現場の経験者が活躍されるシーンが多いのではないでしょうか。

ただし、プロトラブズの切削加工サービスをご利用いただく場合、形状によっては加工できないものがあります。プロトラブズの加工工程を知っていただき、より適した形状を設計することは、形状の再現性やコストの予測において大きな意味があると考えました。これが今回の発表の趣旨です。

まず、サービスの特徴の一つであり、このあと何度も登場する用語「削り残し」について説明しておきしょう。ラピッドプロトタイピングを利用したことのある方はご存じかもしれませんが、隅Rや狭い溝など、アップロードいただいた3Dデータとの差分を「削り残し」と表現しています。

 

削り残しを解消してコスト削減! 「meviy ラピッドプロトタイピング活用術セミナー」 レポート

つまり削り残しとは、加工ツールが届かず再現できない箇所を指します。上の図では便宜上、2次元の絵で表示していますが、Web見積もりでは3Dで立体的に確認できます。

マシニングセンタによる「3軸加工」とは

マシニングセンタには、重力方向を軸に回転するスピンドルがあります。その下に大小さまざまなツールが設置されており、X、Y、Z軸の3方向に移動してブロックを削り出します。まず太いツールで大まかな形状を削り出し、より細いツールで詳細形状を再現していきます。

プロトラブズではこの3軸に加え、ブロックをサイコロのように90度ずつ回転させることで、最大6面加工が可能となっています。

 

削り残しを解消してコスト削減! 「meviy ラピッドプロトタイピング活用術セミナー」 レポート

 

一方、考慮していただきたいのは、ツール自体を斜め(図の右側)に回転させ、斜め加工をする「5軸加工」です。5軸加工は3軸加工に対して拘束条件が多いのでご注意ください。

3軸加工の制限例と、削り残しを解消する方法

削り残しを解消してコスト削減! 「meviy ラピッドプロトタイピング活用術セミナー」 レポート

 

こちらは単純化した例ですが、90度以外の角度を持つポケット形状を設計した場合、実際に削られるのは、上の図の青い箇所のみになります。先ほどの6面加工では対応できませんので、見積もりでは白い部分が加工不可、つまり埋まった状態での回答となります。

こういった斜めの形状が無いことが理想ではあるのですが、機能として必要なケースもあるでしょう。その場合は下図のように、斜めのポケット形状を加工の基準とすれば、形状を再現することが可能です。

 

削り残しを解消してコスト削減! 「meviy ラピッドプロトタイピング活用術セミナー」 レポート

ただし、斜めを基準とすることで、もう一方が加工できなくなります。こういう形状の場合は優先順位をつけ、必要なほうを加工する設計をお勧めします。

もちろん、すでにアップロードされ、見積もり済みのものについて「基準を変えたい」といったご要望もあるかと思います。その場合は見積もり内容の変更も対応しておりますので、お問い合わせください。

「逃げ」の設計とは?

マシニング加工には、絶対に実現できない形状があります。それはピン角のポケット形状と、3面が隅の形状です。ピン角の場合は4つの角、3面が隅の場合は3つの隅のうち1つが実現できません。

 

削り残しを解消してコスト削減! 「meviy ラピッドプロトタイピング活用術セミナー」 レポート

 

右上の例1はよく見られる形状で、2面の付けあてによる位置決めの意図として設計されるケースが多いのではないでしょうか。その場合は黄色の線のように、90度になっている角をへこませるような形で設計していただければ、「逃げ」として機能します。

右下の例2のほうが、エンドミルでの加工において理想的な形状です。このように、「逃げ」の形状を設計すれば、意図した機能が実現できます。

コストに影響を与える要素は「切削量」と「加工スピード」

続いて、加工ツールであるエンドミルについてご説明します。

プロトラブズでは、原価積み上げ方式での価格計算をしています。したがって製品価格は、切削加工のトータル時間により変動します。

 

切削加工は3Dプリンターのようにゼロから形状を作りだすのではなく、すでにあるものから削り出して任意の形状を作り出すため、「どれくらいの量を」「何で削り出すか」によって加工時間が変わり、コストに影響を与えるのです。

 

削り残しを解消してコスト削減! 「meviy ラピッドプロトタイピング活用術セミナー」 レポート

 

上の図にある円は軟質金属で使用しているツールの例で、Φ0.4からΦ12.5まであります。適用できる加工ツールによってスピードが変わる、すなわちコストが大きく変動すると認識しておいてください。

加工時間を短縮してコストを削減するには?

では、どうすればコスト削減できるのか、具体例を下図のブロック形状で説明します。

 

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左側は、隅Rがついていないエッジ形状のものです。この形状の場合、エッジを出そうとするため、なるべく細いツールを使用します。それにより加工時間が伸びてしまうのです。

一方、右側は隅Rが付いているため、1段階太いツールで加工ができます。そのため加工時間が短縮されるのです。左と右の形状を比較すると、右側は単価ベースで約1万円も安くなりました。つまり、「なるべく太いツール」を使い、「加工を短時間で終わらせる」ことが、コスト削減につながるのです。

まとめ

削り残しを解消してコスト削減! 「meviy ラピッドプロトタイピング活用術セミナー」 レポート

 

・見積もりは何度でも無料ですので、まずは設計変更を行う前提でお見積もり依頼ください

・加工方法によって再現できない形状がありますので、設計時に考慮しましょう

・削り残しが発生しそうな角には、事前に「逃げの形状」または「隅R」を、できる限り大きめにつけましょう。

 

川村さんのお話をまとめると上記の通り。

こちらの3つに留意して、meviy ラピッドプロトタイピングをうまく利用していきましょう。

質疑応答

 

最後に、セミナー参加者からの質問に対し回答する「質疑応答」コーナーがありました。いくつか抜粋して紹介いたします。

 

――先ほど5軸加工と3軸加工の違いについて説明がありました。削り残しを少なくしたいのであれば、5軸加工機を使ったほうがよいのでは?

 

CNC切削サービスの特徴は、見積もりから加工、出荷までの工程を標準化・自動化し、オーダー数が増えても短納期での対応ができることにあります。加工方法においては、5軸より3軸加工機の方がシステムに適しているため、3軸を使用しています。

 

――使用するツールサイズの説明で、寸法がΦ0.4やΦ1.2など端数になっていました。なぜですか?

 

プロトラブズのサービスは米国本社で開発されており、それを他国の製造拠点においても使用しています。米国ではツールのサイズがインチベースのため、端数が出ることになります。

 

――隅Rを加工ツールにないR、例えばR4で指定した場合(Φ8など)は、どのように加工するのでしょうか?

 

例えばΦ8のRだけを考える場合は、一段階細い外径のエンドミルΦ6.4で加工します。ツールパスを自動解析する際は、効率良く設計通りの形状を再現するため、R部だけではなく周辺の形状も考慮して最適なエンドミルを選定します。したがって設計時は、エンドミルの外径に合わせていただく必要はありません。適度なRサイズ(設計的に違和感のないRサイズ)で設計していただければ、見積もり回答時に仕上がり状態を見えるようにいたします。

 

――小径エンドミルの刃長(首下長さ)を考慮する必要はありますか?

 

はい、考慮していただく必要があります。エンドミルのパラメータには外径、加工有効長(首下長さ)、テーパーがあります。外径が細くなるほどエンドミル剛性が低くなるため、加工有効長が短く、加工可能深さが浅くなります。

そのため、深さのある隅Rを加工する場合、浅いところは外径の細いエンドミルで加工できますが、深くなるにつれエンドミル剛性によって加工有効長に制限がかかり、外径の太いエンドミルで加工する必要が出てきます。その結果、小径隅Rの深い部分は削り残しが発生します。

とはいえ、加工は周辺形状や材質などに依存するため、各外径での推奨加工深さを決めることはできません。適度なRサイズで設計していただければ、見積もり回答時に仕上がり状態を見えるようにいたします。

 

――さまざまな形状の依頼があると思いますが、切削方法、条件、段取りはシステムで決められているのでしょうか?

 

まず形状により、「3軸マシニング加工」または「旋盤加工」、どちらが適しているかをソフトウェアで判断します。加工プロセス、条件、材質など異なる加工条件なども加味し、すべてシステムにより決定しているとお考えください。

 

 

以上、meviy ラピッドプロトタイピング活用術セミナーの模様をお伝えしました。

3軸加工に適したパーツ設計や、コスト削減の方法についてご理解いただけたかと思います。今後のお見積もり依頼や、より良い設計に繋がれば幸いです。

 

次回のオンラインセミナーでは、第1回目の内容を大幅に増強してお送りいたします。

執筆:村中 貴士 編集:ノオト

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