事業再構築補助金とは?概要や申請書の書き方をプロが解説

事業再構築補助金とは?概要や申請書の書き方をプロが解説

事業再構築補助金とは?

事業再構築補助金は、コロナの影響の長期化に苦しむ中小企業向けの施策として2021年に公募開始された補助金制度です。この制度の目的は、ポストコロナ・ウィズコロナに向けた変化に対応するために事業再構築を支援することです。事務局のホームページには、概要として下記が記載されています。

新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売り上げの回復が期待しづらい中、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するために中小企業等の事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促すことが重要です。そのため、新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、又は事業再編という思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援します。

(事業再構築補助金 事務局ホームページより)

このように、「思い切った事業再構築」にチャレンジをする企業を支援する制度であることを、まずは理解しておきましょう。

「枠」ごとに異なる補助金額と補助率

2021年7月30日から公募が開始された3次公募からは公募の枠の種類が増え、補助金額や補助率は下記のように細分化されています。

従業員数 補助額 補助率
通常枠 従業員数20人以下 100万円~4,000万円 中小企業者等 2/3 (6,000万円を超える部分は1/2)
中堅企業等 1/2 (4,000万円を超える部分は1/3)
従業員数21~50人 100万円~6,000万円
従業員数51人以上 100万円~8,000万円
大規模賃金引上枠 従業員数101人以上 8,000万円超~1億円 中小企業者等 2/3 (6,000万円を超える部分は1/2)
中堅企業等 1/2 (4,000万円を超える部分は1/3)
卒業枠 中小企業等 6,000万円超 ~ 1億円 中小企業者等 2/3
グローバルV字回復枠 中堅企業等 8,000万円超 ~ 1億円 中堅企業等 1/2
緊急事態宣言特別枠(※1) 従業員数20人以下 100 万円 ~ 500 万円 中小企業者等 3/4
中堅企業等 2/3
従業員数21~50人 100 万円 ~ 1,000 万円
従業員数51人以上 100万円 ~ 1,500万円
最低賃金枠 従業員数20人以下 100 万円 ~ 500 万円 中小企業者等 3/4
中堅企業等 2/3
従業員数21~50人 100 万円 ~ 1,000 万円
従業員数51人以上 100万円 ~ 1,500万円

製造業では資本金3億円以下、常勤の従業員300人以下の企業が中小企業に該当しますので、たとえば従業員30名の中小企業なら通常枠で補助上限額6,000万円、補助率は2/3となります。この企業が600万円規模の事業に取り組む場合は400万円の補助、3,000万円規模の事業の場合は2,000万円の補助、9,000万円規模で事業再構築に取り組む場合は、6,000万円の補助が受けられることになります。

さらに、令和3年の緊急事態宣言で深刻な影響を受けた企業が対象の「緊急事態宣言特別枠」、最低賃金の引き上げに対応する企業が対象の「最低賃金枠」では補助率が3/4に引き上げられ、優先的に審査される、不採択の場合も通常枠で再審査されるなど複数の優遇策があるので、条件に該当する場合はこの2枠での申請をおすすめします。

そのほか、101人以上の中小企業、中堅企業が最低賃金引き上げと従業員の増員に取り組む場合の「大規模賃金引上枠」、中小企業を卒業して中堅企業を目指す企業が対象の「卒業枠」、グローバル展開に取り組む中堅企業が対象の「グローバルV字回復枠」では補助金額が最大1億円に引き上げられていますが、申請要件と採択後の達成要件がかなり厳しくなっているので、一般の企業は通常枠での申請をおすすめします。

事業再構築補助金ホームページ
https://jigyou-saikouchiku.jp/

事業再構築補助金申請から全体の流れ

事業再構築補助金について、申請から補助金を受け取るまでの流れは次の様になっています。

  1. gBizIDプライム アカウントの取得
    事業再構築補助金の申請受付は電子申請のみなので、電子申請用のアカウントとして、複数の行政サービスにログインできる「gBizID」のプライムアカウントを取得する必要があります。このIDの取得には印鑑証明等の書類を郵送するなどの手続きをしてから1カ月程度かかることもあるので、申請を予定している企業は、先行して取得しておきましょう。
    GビズID
    https://gbiz-id.go.jp/top/
  2. 事業計画の策定
    金融機関や税理士・会計士、コンサルタントなどの認定支援機関とともに事業計画を策定し、事業計画書にまとめます。補助金額が3,000万円を超える場合は金融機関(銀行、信金、ファンド等)も参加して策定する必要があり、いずれも「認定支援機関確認書」の発行を依頼します。認定支援機関の一覧については、中小企業庁のサイトにまとめられています。
    認定経営革新等支援機関
    https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/nintei/
  3. 電子申請
    事業再構築補助金ホームページの「申請方法」のページから、①で取得したGビズIDプライムアカウントを使って、申請ページにログインできます。ここで必要な書類をアップロードして登録し、最後に「申請」を押せば申請完了です。
  4. 採択発表・採択通知
    公募締切り後、1.5ヶ月程度で採択発表が行われます。採択企業は事務局のホームページに一覧のPDFが掲載されるほか、GビズIDの登録アドレスにメールでも通知され、申請ページにログインすると採択結果を確認できます。
  5. 交付申請
    ログイン後の採択発表ページにある資料一式をダウンロードして、見積書や相見積書などの添付資料を揃え、今度は政府のオンライン補助金申請システム「Jグランツ」から交付申請を行います。「Jグランツ」にもGビズIDでログインできます。
  6. 交付決定
    事務局で内容を確認のうえ「交付決定」となってはじめて開始することができます。事業開始とはこれ以降発注や契約を行っても良いという意味で、逆に交付決定を受けるよりも前に契約・発注したものは原則的に補助対象外となるので注意が必要です。
    (ただし、「事前着手承認制度」で承認申請が認められた場合に限り、令和3年2月15日以降の発注にさかのぼって契約した内容も補助対象として認められます)
  7. 事業実施~実績報告
    補助金制度でいう事業実施とは、契約・発注を行って補助対象の製品や工事が納品され、請求を受けて支払いを完了するまでと考えましょう。途中、全ての証拠書類の押印付原本を手元に残しておくこと、納入前/納入後の写真を撮っておくことを忘れずに。最後にこれらの証拠書類をまとめて「実績報告」を行います。
  8. 確定検査
    実績報告をもとに、事務局から担当者が来社して確定検査を行います。ここで、補助対象の現物と、証拠書類などに間違いがないかどうかを確認されます。
  9. 補助金の請求
    確定検査でOKが出たら、このタイミングでようやく補助金の請求をすることができます。書式は事務局のホームページからダウンロードできます。
  10. 補助金の支払い
    事務局で請求書の確認後、手続きを経て補助金が支払われます。このように、補助金では事業にかかる費用を全て先払いして、事業が完了してから補助金分の支払いを受ける制度になっています。②の事業計画策定の際に、認定支援機関とつなぎ融資についても相談しておくことをおすすめします。

なお、補助金の支払いを受けて事業が完了した後も、翌年以降5年間は年に1回の「事業化状況報告」が続きます。これはオンラインで経営状況や、補助事業のその後の状況を報告するもので、補助を受けた事業者の義務となっています。

事業再構築補助金の対象となる企業とは?

事業再構築補助金の対象となる企業

では、どのような企業が事業再構築補助金の対象となるのでしょうか? 事務局のホームページには、申請資格を示す「主要申請要件」として、次の3項目が明示されています。

【事業再構築補助金 3つの主要申請要件】

  1. 売上が減っている
  2. 新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編に取り組む
  3. 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する

順番に見ていきましょう。

  1. 売上が減っている
    2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少しており、2020 年 10 月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019 年又は 2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して 5%以上減少している必要があります。3次公募から、売上高の代わりに付加価値額を用いて売上減少要件を満たすことも可能です。この売上減少要件は大変複雑になっているので、事業計画に着手する前に公募要領の15ページの詳細を確認しておきましょう。
  2. 新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編に取り組む
    2021年3月に経済産業省より公表された「事業再構築指針」に沿って、新分野展開、業態転換、事業・業種転換などの「思い切った事業再構築」を行う必要があります。取り組もうとしている事業が「新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編」いずれかの類型と合致している必要がありますので、「事業再構築指針の手引き」を熟読して事業計画を策定しましょう。事業再構築指針
    https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/shishin.pdf
    事業再構築指針の手引き
    https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/shishin_tebiki.pdf
  3. 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する
    事業再構築に係る事業計画を認定経営革新等支援機関と策定することが必須の要件になっており、補助金額が3,000万円を超える案件は金融機関(銀行、信金、ファンド等)も参加して策定することが求められます。その上で策定した事業計画が、補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(グローバルV字回復枠は5.0%)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(同上5.0%)以上増加の達成を見込む事業計画になっている必要があります。

これら3つの要件を満たすことが、申請対象となるかどうかの最低条件です。さらに、公募要領の6~7ページにも補助対象者が細かく規定されています。

事業再構築補助金の対象外となる企業

逆に、事業再構築補助金の対象外となるのは次の様な企業です。

【事業再構築補助金の対象外となる企業】

  1. 売上が減っていない(コロナ禍でも売上を伸ばしている企業は対象外)
  2. 事業計画が、事業再構築指針の「新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編」のいずれにも該当しない
  3. 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定していない

さらに、公募要領の8ページには対象外となる企業が、19ページには対象外となる事業計画が詳細に規定されています。具体的にはみなし大企業や、任意団体など中小企業者以外の法人、宗教法人や政治団体も補助対象となりません。

事業再構築補助金の補助対象となる経費はどのようなもの?

続いて、どのような経費が補助対象になるのかを見ていきましょう。

補助対象経費

公募要領では、通常枠で補助対象として認められる経費として次の区分が示されています。

【通常枠の補助対象経費】
建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費

各経費区分については公募要領の23ページ以降に詳細な説明があるので、事業計画書で投資内容をまとめる際はこの部分を確認しながら策定することをおすすめします。

さて、この補助対象となる経費については、全体に共通する大原則があります。それは、補助対象となるのは「専ら」「補助事業遂行のために」使う経費に限られる、ということです。事業再構築補助金では、現在の本業にはない新しいチャレンジが求められており、その「新しいチャレンジ」のために必要な経費だけが補助対象となります。例えば本業で生産量を上げるために導入する設備などは、補助対象外と認識される可能性が高いので注意してください。

補助対象外の経費

公募要領の26ページに「以下の経費は補助対象になりません」という項目があり、対象外経費がリストアップされています。中でも気をつけたいのは、汎用性のあるパソコンやタブレット端末、デジタル複合機などは、補助対象事業以外の通常の業務でも活用できてしまうので対象外です。また、事業再構築補助金の申請書や報告書など、事務局に提出する書類の作成・提出にかかる費用も対象外です。対象外となる経費をあらかじめ把握しておき、それらを含まないように事業計画書を作成しましょう。

事業再構築補助金の対象となる事業計画とは?

事業再構築補助金の対象となる事業計画については、過去の採択事例が大いに参考になると思われます。事務局ホームページの「採択結果」のページに、「事業計画書の概要」というPDFファイルが掲載されているので、まずは自社で実現したい計画と近い採択事例がないかどうかを探してみてください。

採択率をあげる事業計画書の書き方

事業再構築補助金は国が公表した「事業再構築指針」に沿った「思い切った挑戦」を補助の対象と設定しているので、事業計画書ではまず、事業再構築指針の類型ごとに求められる要件を満たしていることを明確に示す必要があります。また「思い切った挑戦」であることを示すために、自社の従来事業にはない「新規性」をアピールしたいところです。「○○の市場に向けた新事業を、このような投資により実現する」というストーリーを組みたてて、わかりやすく説明することを心がけましょう。

なお、事務局ホームページの「採択事例紹介」のコーナーには、これまでの公募で採択された事例の事業計画書がそのまま掲載されています。公募要領では事業計画書は「様式自由」とされているため書式や内容に悩むことも多いと思いますので、公式発表された採択事例をぜひ参考にしてください。

事業再構築補助金の採択事例

最後に、一次締切の採択結果にある「事業計画書の概要」から、製造業の採択事例をいくつか見てみましょう。

  • 3D CADと連携した加工機械の導入による複雑形状部品加工への参入
    3D CADと連携した加工機械を導入し、付加価値の高い複雑形状部品加工へ参入する。需要が高まっている油圧関連の複雑形状部品の製造に参入するべく、当社の技術力を生かしながら製造方法を変えることで実現する。
  • 電気自動車バッテリー部品製造への参入による売上と収益の拡大
    OA機器関連部品の生産が落ち込んでいる事から、新製品である電気自動車用バッテリー部品を製造することで、新たな取引先を獲得し新市場への展開で売上と利益を拡大する。
  • 自動車製造機械部品製造から半導体製造機械部品製造への新分野展開
    「自動車産業製造機械部品×少量生産」から「半導体製造機械部品×大量生産」への新分野展開による事業ポートフォリオの分散及び収益回復策。小型専用設備の導入による、子育て世代の女性オペレーター育成を目指す。

このように現在の本業とは違う分野へのチャレンジを示した事業計画が採択されるケースが多いようです。

まとめ

事業再構築補助金は、最大1億円の大型の補助金ということもあり、新しい事業展開を計画中の企業はぜひ活用したい制度です。コロナ対策の緊急対応のための補助金という性質から来年度以降も実施される確証はないので、申請予定がある場合は計画的に事業計画の策定に計画的に取り組むことをおすすめします。公募スケジュールや公募要領、最新情報などの詳細は事務局のホームページ(https://jigyou-saikouchiku.go.jp/)でご確認ください。

※この記事の情報は2021.8.12時点のものです。公募要領は3次公募の公募要領を参照しています。

この記事の著者

ものづくりライター
新開潤子

月刊誌の編集部員、フリーライターとして20代を過ごした後、結婚を機に機械装置メーカーに転職して10年半勤務。輸出入手続きや取扱説明書の翻訳、海外ユーザーの装置トラブル対応等の業務を通じてものづくりをゼロから学び、その後レーザー溶接機の営業担当に異動して、ライター経験を活かした営業と補助金申請支援で大きな実績を上げた。

201610月に独立しオフィス・キートスを設立。現在は製造業の営業強化や補助金対策で中小企業をサポートをしながら、「ものづくり×文系」のハイブリッドな視点からものづくりの難解な部分をわかりやすく紐解く活動を続けている。

 共編著に「ものづくり補助金 最強の採択メソッド 実践ワークブック」「中小製造業のための補助金獲得ハンドブック 2020」(いずれも日刊工業新聞社)。

・オフィス・キートス:https://office-kiitos.biz/

 

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