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シムプレートとは?使い方や材質、加工方法などを解説

シムプレートは製造業の開発現場や生産現場でたくさん使われていますが、さまざまな種類があり、ホームセンターやオンラインなどでかんたんに購入できるものもあります。
用途によって適した材質や種類があるので、どのような使い方をするのかをよく考えてシムプレートを選ぶことが大切です。
今回の記事では、シムプレートの使い方や選ぶ時の注意点、加工方法などを解説します。それぞれの特徴を理解し、適切に選んで使っていきましょう。

シムプレートとは?使い方や材質、加工方法などを解説

シムプレート(シム板)とは

そもそもシムとは?

シム(SHIM)とは、直訳すると「詰め木」という意味です。2つの部品の間にシムを挟んで使用します。
シムは大きく2種類に分けられ、プレート型のシムプレート(シム板)とリング型のシムリングに大別できます。
シムプレートは、長方形だけでなく、穴があいていたり複雑な形状をしていたりする場合もあります。挟み込む部品に合わせた形状に加工して使います。
シムリングは、円形だけではなく一部に切り欠きが入ったC字型やコの字型もあります。
どちらも製造業の生産の現場でや開発過程でよく用いられます。一般的に、シムは1㎜以下の薄い金属板を指す場合が多いです。1㎜以上になるとスペーサーとよぶ場合が多いでしょう。

シムプレートの使い方

シムプレートは生産現場の治具や設備などによく使われます。
例えば、部品の受け治具を水平にするためにシムプレートを挟んで高さを調整します。他には、部品のがたつきを抑えるために隙間に挟んだりします。
治具や設備が狙い通りに水平でないと、加工や組立ての不具合が発生したり、作業効率が悪くなったりする可能性があります。そのため、製品の品質を確保するためにシムプレートによって調整しています。

また、開発現場では、試作品の寸法を調整するためによく使われます。
試作の段階では部品の寸法がばらつく場合があります。寸法がばらついている部品同士を組み立てるとがたつきがでたり、正しく機能しなかったりします。そのため、シムプレートを挟んで寸法を調整します。
ほかには、シムプレートを挟んで複数の寸法の部品を製作し、どの寸法で狙いの品質がでるかを評価したりします。

シムプレートに用いられる材質

ステンレス

ステンレスはシムプレートの材質としてよく用いられます。強度が強くて錆びにくく、耐熱性にも優れているのでさまざまな機械に使われています。また、厚みの精度が高いのも特徴です。

鉄はコストが安く熱処理もできる素材です。シムプレートとしてはステンレスのようによく用いられます。さまざまな機械に使われますが、錆びやすい特徴をもっています。そのため、塗装やメッキによって錆を防止する場合もあります。

焼き入れリボン鋼(SK材)

焼き入れリボン鋼はとても硬い材料です。圧力が高い場合など、硬度が必要な箇所にシムプレートとして使われます。

銅、リン青銅

銅は優れた導電性を持っています。そのため、アースが必要な場合など、電気接点が必要な箇所にシムプレートとして使われます。

ベリリウム銅

ベリリウム銅も導電性が優れているので電気接点が必要な箇所に使われます。また、バネ特性も優れているため、シムプレートだけでなく板バネとしても使われます。

真鍮

真鍮のシムプレートはステンレスや鉄と同じく多く用いられています。加工がしやすく導電性も高いため電気接点が必要な箇所で使われます。

シムプレートを選ぶ際のポイント

シムプレートの厚さは通常0.01~1.0mm程度が多いです。ただし、種類によってはさらに厚いものもあります。

シムプレートは、高さを調整したり隙間を埋めたりする目的で使われるので、どのくらいの厚さで調整をしたいかによって選びます。
また、歪みやバリがあると厚みが変わってしまい、微妙に調整がずれてしまうので注意しなければなりません。バリが発生する外周部分は部品に触れないようにしたり、バリ処理されているシムプレートを使ったりするなど工夫しなければなりません。

シムプレートは厚みの精度が大切です。細かい調整をする場合には、厚みが高精度なステンレスを使うことをおすすめします。

使う箇所によって、どのような形状であるべきか決まってきます。シャフトなどに使う場合はリング型が適しています。また、組付けた後に取り外ししやすいのはC型のシムプレートです。
好きな形にカットして使いたい場合は、シムテープを使うと便利です。

シムプレートの加工方法

抜き加工

抜き加工とは、専用の金型を使ってせん断する加工方法です。部品1個あたりの加工時間が短いので大量生産に向いています。プレス加工機などを用いて加工します。
目安としては1000枚以上のシムプレートを製造する場合は、金型で抜き加工をするほうがよりコストメリットがあるでしょう。
しかしながら、専用の金型が必要なので、初期費用がかかります。そのため、少量生産には向いていない加工方法です。また抜きバリの処理が必要になるケースもあります。

エッチング加工

エッチング加工とは腐食液によって不要部分を除去する加工方法で、中量生産に向いている加工方法です。目安としては数百枚程度でしょう。
エッチング加工のシムプレートはバリや歪みなどがなく高精度な仕上がりになります。また、高価な治具なども必要としないため、初期費用を抑えられます。
エッチングではまず、素材の金属にフォトレジストを貼り付け、マスキングをします。
次に、光を当てて露光し、マスキングされていない箇所が感光し金属が露出します。
この状態でエッチング液に接触すると、露出している金属部分が腐食して除去されます。
最後に残っているレジストを落とし、洗浄と乾燥をして完成となります。

ワイヤーカット加工

ワイヤーカット加工とは、細いワイヤー線に電気を流し、熱を発生させて金属を溶かして加工する方法です。
ワイヤーが直接素材に触れることなく、硬い金属も切ることができます。また、金属の板を重ねて切ることができるため、同じ形状で厚さの違うシムプレートを一度に加工できます。
また、接触加工ではなく放電を利用する為、バリが発生しないメリットがあります。一方で、レーザー加工など、他の方法に比べ加工速度が遅いというデメリットがあるので、少量生産向きです。

レーザー加工

レーザー加工は金属板を加工する方法としてよく使われます。寸法精度が高く、複雑な形状も加工できるためシムプレートだけでなくさまざまな部品の加工方法として使われています。
レーザー加工は、レーザー光の熱エネルギーによって金属を溶かしてカットします。素材は薄いほど加工速度が速いですが、あまりにも薄いと歪みが発生してしまいます。
0.05~2㎜程度のほとんどの金属が加工可能です。
加工速度が遅く、大量生産には向いていません。製造業では、治具や設備などの少量部品や、開発の試作品などの加工によく使われます。

まとめ

シムプレートの種類や使い方、材質や加工方法について解説しました。シムプレートは、製造業ではよく使われる部品です。細かな寸法の調整をするためには、さまざまな形状、厚みのシムプレートが必要でしょう。
汎用的なシムプレートだけでなく、複雑な形状のシムプレートが必要な場合でもさまざまな加工方法で製作できます。材質の特徴や厚み、などを考慮してシムプレートを選んでいきましょう。