2022年11月14日、東京ポートシティ竹芝で開催されたSOLIDWORKSの国内最大イベント「3DEXPERIENCE WORLD JAPAN 2022」に参加してきました。

このイベントはソリッドワークス・ジャパンが主催で、その公式ユーザー会であるソリッドワークス・ジャパン・ユーザー会(通称SWJUG)が共催となっており、ソリッドワークスコミュニティーが一同に集まります。ここではソリッドワークス社製品の最新情報や製品の技術、経営者向けの情報提供などが多くのセッションの中で発信されます。

この場でどんな情報が発信されたのか、皆さんに報告します。

3DEXPERIENCE WORLD JAPAN2022 オープニング(筆者撮影)

3DEXPERIENCE WORLD JAPAN2022 オープニング(筆者撮影)

3DEXPERIENCE WORLD JAPAN 2022参加レポート

COVID-19の影響で、会場開催は3年ぶりとなりました。私自身も会場開催を心待ちにしていました。そこには、オンラインよりも強い「つながる」という「体験」があるからです。まさにこれこそが、「CONNECTED」であり、「EXPERIENCE」だと感じました。

そして、私自身は新しい原点回帰を感じる、新鮮なものだったカンファレンスとなりました。

やっぱりリアルは楽しい。

製造業のサプライチェーンとサステナビリティ

はじめに、ジャン・パオロ・バッシ(Gian Paolo Bassi)氏の講演からスタートしました。

ジャン・パオロ・バッシ氏はSOLIDWORKSブランドの最高経営責任者(CEO)でしたが、今年オンラインで開催されたSOLIDWORKSの年次ユーザーイベント「3DEXPERIENCE WORLD 2022」(会期:2022年2月7~9日※米国時間)において、「3DEXPERIENCE Works」を推進するエグゼクティブバイスプレジデントに就任したことが発表されています。

ジャン・パオロ・バッシ氏 基調講演より Five Domains(5つの領域)-筆者撮影

ジャン・パオロ・バッシ氏 基調講演より Five Domains(5つの領域)-筆者撮影

ジャン・パオロ・バッシ氏から次の5つの領域への3DEXPERIENCEの展開についてお話がありました。

<5つの領域>

  • DESIGN / ENGINEERING(開発・設計)
  • SIMULATION(シミュレーション・設計検証)
  • MANUFACTURING / PRODUCTION(組立・製造)
  • MARKETING / SALES(サプライチェーン・営業)
  • GOVERNANCE(情報管理)
ジャン・パオロ・バッシ氏 基調講演より Mission-筆者撮影

ジャン・パオロ・バッシ氏基調講演より Mission-筆者撮影

ジャン・パオロ・バッシ氏は、製造業において「サステナビリティ」という考え方の必要性について言及しました。環境の大きな変化への対応やテクノロジーの進化への対応が話の中心だったと思います。

私なりにこれを解釈してみました。

開発設計、設計者CAE、製造情報については、これまでデスクトップのSOLIDWORKS製品で進化してきています。3D CADのSOLIDWORKSを中心に、開発支援のためのSOLIDWORKS Simulation・SOLIDWORKS Flow Simulation、設計情報管理のためのSOLIDWORKS PDM(Product Data Management System)、製造情報管理を行うSOLIDWORKS MBD(Model-Based Definition)はこれまでバージョンアップを重ね、操作性、機能性が進化してきています。

一方、一般的にITクラウドコンピューティングシステムの普及はめざましいものがあります。さらにパンデミックでは、個人の生活への大きな影響のみならず、製造業におけるサプライチェーンへの影響を経験しています。

さらに、最近の半導体不足やその他の部品調達難は、急速な円安の影響もあって原材料価格上昇にもつながり、サプライチェーンの構築が製造業にとっても重要課題になっています。

働き方について、日本国内では「ジョブ型雇用」について触れられることが多くなりました。ここで目指すものは「人材の最適化」です。

また、「リスキリング」という言葉も聞くようになり、個人のスキルの転換とその成長が求められています。

このような環境化でクラウド版のSOLIDWORKSソリューションになる「3DEXPERIENCE WORKS」の利用が、クラウド技術の進化により実現し、その運用が本格的になること。さらに、これまでのデスクトップと同じように、製造業のインフラとして様々な業務での利用がプラットフォーム上で展開しようとしているというメッセージをジャン・パオロ・バッシ氏の言葉から感じました。

企業の大小に関わらず、持続可能なサステナブル開発に向けた取り組みの概念として、3DEXPERIENCEを考える必要がある」と私は考えます。

設計のありかたを変える3DEXPERIENCE製品

次は、この仕組みの中で私が大きな興味を持つ3DEXPERIENCE WORKSの製品群です。

  • DESIGN/ENGINEERING(開発・設計)
    ・3D CAD:3DEXPERIENCE SOLIDWORKS
    デスクトップ版SOLIDWORKSの機能をそのままにクラウド環境での運用ができる3D CAD SIMULATION
  • SIMULATION(シミュレーション・設計検証)
    ・3DEXPERIENCE Works Simulation
    AbaqusテクノロジーによりそのSOLVER(ソルバ)が使える線形解析や非線形解析をクラウドで行うことも可能
  • GOVERNANCE(情報管理)
    ・Collaborative Designer for SOLIDWORKS
    部品、アセンブリ、図面を3DEXPERIENCEプラットフォームで保存できる

 これらは、3D CAD展開で基本的なソリューションです。

この会期中ではありませんが、実際に私は3DEXPERIENCE SOLIDWORKSの快適さと、Collaborative Designer for SOLIDWORKSでのデータ管理の有効性について体験しています。

筆者が3DEXPERIENCEのCollaborative Spaceにデータ保存

筆者が3DEXPERIENCEのCollaborative Spaceにデータ保存

3DEXPERIENCE Works Simulationですが、数年前に初めてこの製品を体験した時に比べ、その操作性は改善されています。

私はテクノロジーのベースとなるSIMULIA Abaqusの運用経験がありますが、それに比べても、この製品の有効性や利便性を感じます。

高度な非線形解析では、解析用のワークステーションのスペックも高いものが必要になる一方、線形解析に比べ非線形解析を行う頻度が私の場合は高くはありません。しかし、ゼロではありません。非線形解析を行う場合、デスクトップ版のSOLIDWORKSでは不十分な場合があります。

このような時に、期間を限定して運用する契約もあるとのことなので、高スペックのマシンの新規購入や、非線形向けのシミュレーションソフトウェアの”買い取り”ではなく、期間利用にはコストメリットがありそうです。これは3DEXPERIENCE SOLIDWORKSについても同様に言えます。

期間運用が可能となれば、設備投資を行わずに3D CADを運用することもできます。

筆者が宿泊先(ホテル)で3DEXPERIENCE SOLIDWORKSを利用

筆者が宿泊先(ホテル)で3DEXPERIENCE SOLIDWORKSを利用

外部連携やプロジェクトに必要なライセンス確保、スタートアップ企業にメリットがありそうです。

データ管理を考えた時、オンプレミスといわれる自前のサーバーではなく、クラウドをプラットフォーム上で行えることは、サーバー管理だけではなく、社外連携でもその利便性があります。

最近考えたことですが、PDMではうまく管理できなかったCAEデータも、クラウドプラットフォーム上ではできるのではないかと考えています。

このように、開発設計環境は変わる可能性を持っています。

開発設計ソリューションの可能性

The 3DEXPERIENCE Works Mission(筆者撮影)

The 3DEXPERIENCE Works Mission(筆者撮影)

製造業において、これまで、デスクトップやオンプレミスという環境で運用されてきた3D CADを中心とした開発設計ソリューションと「何が違うのか」という話や、この潮流ともいえるクラウドについて懐疑的な意見を聞くことも少なくはありません。ですが、「Anytimeいつでも」「Anywhereどこでも」「Any Deviceどんなデバイスで(どの端末でも)」そして「On the Cloudクラウド上で」、人やソリューションを繋げることができる「Connected」が実現するのだと考えれば、これをポジティブに捉えるべきです。そして欧米諸国はこの流れにあるということを我々も知る必要があるのでしょう。

さらに3D CAD業界では、デファクトスタンダードともいえるSOLIDWORKSの動きというものに注目せずにはいれません。

 

さて、年明けには3DEXPERIENCE WORLD 2023が米国で開催され、間違いなく新たな話題、あふれるほどの話題が提供されることでしょう。