用途によっては摩耗対策が重要になる部品があります。今回はそのような「耐摩耗」を意識した部品の製作でおすすめな表面処理と材料をご紹介。さらに「硬質クロムメッキ」は基本情報の他、特性と注意点も詳しく解説します。意外と知らない発見があるかもしれません。ぜひ、チェックしてみてください。
目次
(1)表面処理 と(2)材料
(1)表面処理と(2)材料からそれぞれ2種、合計4種類を耐摩耗性が高い順にご紹介します。耐摩耗性の他、一般的に検討事項となる摺動性、耐食性、耐熱性の項目も一緒に比較できるよう、一覧にしました。
各項目の説明は、一覧の下部をご参照ください。また、一覧にある◎〇△×は全4種類の中で比較した参考値です。今後の選定にお役立てください。
(1)表面処理
硬質クロムメッキ
無電解ニッケルメッキ
材料(※1) | 表面処理 | 耐摩耗性 | 摺動性 | 耐食性 | 耐熱性 | 納期 | その他の特性 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
鉄 | SS400 S50C(相当) S50C(調質材) |
硬質クロム メッキ |
◎ | ◎ | 〇 | ◎ | 8日目 出荷~ |
電解メッキの中で、最も硬い被膜をつくることができる |
SS400 SS400焼鈍材 S50C(相当) S50C(調質材) |
無電解ニッケル メッキ |
〇 | 〇 | ◎ | △ | 複雑な形状でも、均一な厚みの皮膜をつくることができる |
※1 meviy FAメカニカル部品「切削プレート」で表面処理が可能な材料を記載しています
(2)材料
NAK55(相当)
S50C調質材
材料 | 表面処理 | 耐摩耗性 | 摺動性 | 耐食性 | 耐熱性 | 納期 | その他の特性 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
プリ ハードン 鋼 |
NAK55 (相当) |
― | 〇 | × | 〇 | × | 6日目 出荷 |
加工性が高い 熱処理(焼入れ、焼き戻し)済の材料のため、一定の硬さを持ち、機械加工後の熱処理が不要 |
鉄 | S50C (調質材) |
― | △ | △ | × | × | 9日目 出荷 |
熱処理(焼入れ、焼きなまし)済の材料のため、残留応力が除去されており、削り量が多い部品形状でも、歪みや公差外れを起こしにくい |
【各項目の説明】
- 耐摩耗性・・・摩耗に対する耐性
- 耐熱性・・・熱に対する耐性
- 摺動性・・・滑りやすさ
- 納期・・・meviy FAメカニカル部品で注文した場合の標準納期
- 耐食性・・・錆びにくさ、腐食に対する耐性
最も耐摩耗性に優れている「硬質クロムメッキ」は
どんな表面処理か?特性と注意点を詳しくご紹介します!
耐摩耗性が高い「硬質クロムメッキ」の特性と注意点
「硬質クロムメッキ」の特性や、硬質クロムメッキの中でもフラッシュメッキとはどういったものなのかご紹介いたします。
特性1.硬い被膜で、耐摩耗性に優れている
「硬質クロムメッキ」は、非常に硬い被膜をつくることができる表面処理です。表面を硬くすることで、傷つきにくく、削れにくくなるため、耐摩耗性をアップさせたい場合におすすめのメッキです。
硬さを表す代表的な尺度である「ロックウェル硬さ(HRC)」と「ビッカース硬さ (Hv)」の参考値は、以下の通りです。数字が大きいほど硬いことを示しており、「硬質クロムメッキ」は、先ほど特性比較をした他の表面処理や材料よりも硬い特性があります。
また、「硬質クロムメッキ」は、表に記載の通りメッキ種類によって硬度に差があります。フラッシュメッキについては、後ほど詳しく解説します。
種類 | ロックウェル硬さ (HRC) |
ビッカース硬さ (Hv) |
耐摩耗性 | ||
---|---|---|---|---|---|
(1)表面処理 | 硬質クロムメッキ | 通常メッキ | 68~69 | 1,000程度 | ◎ |
フラッシュメッキ | 62~63 | 750~800 | |||
無電解ニッケルメッキ | 46~52 | 450~540 | 〇 | ||
(2)材料 | プリハードン鋼 NAK55(相当) |
37~43 | 360~420 | 〇 | |
鉄 S50C調質材 |
20~27 | 240~280 | △ |
よく利用されている「硬質クロムメッキ」の部品例
こんな部品におすすめです!
- 大きな力が加わる装置部品・・・金型、搬送装置、工作機械の部品
- 摩耗しやすい設備部品・・・位置決めピン、歯車、金属ローラー、シャフトガイドなど
表面処理と材料の選定について
部品に大きな力がかかる場合は「表面だけでなく材料(母材)も硬く衝撃に耐えられる状態」にする必要があるため、「材料」と「表面処理」のどちらも、硬度や耐摩耗性が高いものを選定することがおすすめです。
一方、部品を変形させるほどの大きな力はかからないが、摺動回数が多い部品など、「表面のみ硬く摩耗に耐えられる状態」にすれば十分な場合もあります。その際、材料は低コストのものを選択し、表面処理には硬度や耐摩耗性が高いものを選定するなど、部品の状況や目的によって選定してみてください。
※meviy FAメカニカル部品「切削プレート」では、NAK55(相当)の表面処理として硬質クロムメッキと無電解ニッケルメッキは対応していませんが、S50C調質材には対応しています。
注意! 硬質クロムメッキ同士の摺動は摩耗しやすい
上記の通り「硬質クロムメッキ」は摩耗しやすい摺動部品におすすめの表面処理ですが、「硬質クロムメッキ」の部品同士で摺動させると、摩耗しやすくなります。
硬質クロムメッキに限らず注意が必要で、似た成分同士の金属が接すると、凝着する(触れ合うもの同士がお互いに引きつけあう)という性質があります。滑りにくい状態で動かすと、より大きな力が必要となる分、接している相手側の表面を破壊する力も大きくなるため、両方の部品が共に早く摩耗してしまいます。
摩耗対策
摺動部分の片方の部品を、異なる表面処理や材料にすることで、「両方の部品が共に早く摩耗してしまうこと」を回避できます。
片方の部品を硬質クロムメッキにした場合、それ以外の部品の(耐摩耗性が低い)方が早く摩耗し、交換の早さや頻度が高まります。そのため図1の(2)のように、交換しやすい方の部品を、硬質クロムメッキ以外の表面処理や材料にすることで、メンテナンス時の手間を軽減できます。また、(2)の表面処理や材料をコストが低いものにすることで、メンテナンスコストを抑えることができます。
【図1】摺動部品のイメージ図
硬度に差がある「フラッシュメッキ」とは?
実は低コスト・短納期化が可能!詳しく解説します
特性2.「フラッシュメッキ」は、低コスト・短納期
「硬質クロムメッキ」は、ワークを浸す水溶液に電気を流して被膜をつくる「電解メッキ(電気メッキ)」の一つです。電解メッキでつくられる膜厚は、メッキ処理をする際の電流の強さと時間に比例して厚くなります。
電解メッキの中には、短時間で被膜をつくる「フラッシュメッキ」という方法があります。通常メッキと比べてメッキ処理の時間が短い分、膜厚は薄く、前述の通り硬度にも差があります。(硬度の一覧表はこちら)
処理工程は以下の通りで、フラッシュメッキは、「メッキ処理」工程の時間短縮と「仕上げ加工」工程の省略ができるため、低コスト・短納期化を図ることができます。
【図2】硬質クロムメッキの処理工程
注意!ポケットや穴部にはメッキがのりにくい
電気を使って被膜をつくる「電解メッキ(電気メッキ)」は、均一にメッキすることが難しく、電流が一定ではないため、ワークを浸す位置や形状によっては、メッキがのりにくくなります。ポケットや穴の内側は下記写真のようになります。
【ポケット部拡大】
【全体】
【穴部拡大】
摩耗対策
ポケットや穴の内側の耐摩耗性をアップさせたい場合は、複雑な形状でも均一な厚みの被膜をつくることができる「無電解ニッケルメッキ」や、表面処理をしなくても耐摩耗性が高い「NAK55(相当)」「S50C(調質材)」を選択することをおすすめします。
meviy FAメカニカル部品「切削プレート」の「硬質クロムメッキ」は
「フラッシュメッキ」で対応しています。ぜひお試しください!
meviy FAメカニカル部品「切削プレート」では、「硬質クロムメッキ」の見積もりが可能!
今回ご紹介した「硬質クロムメッキ」は、 meviy FAメカニカル部品「切削プレート」でお見積もり可能です。3D CADデータをアップロード後、「切削プレート」を選択してください。
meviy FAメカニカル部品の「硬質クロムメッキ」は「フラッシュメッキ」です。
- 部品用途
- リンクアーム
- 材料
- SS400
- サイズ
- W200× D124.28× H20
- 表面処理
- 硬質クロムメッキ
(フラッシュメッキ) - 納期
- 8日目出荷
- 部品用途
- ホルダー
- 材料
- SS400
- サイズ
- W50.5× D50× H16
- 表面処理
- 硬質クロムメッキ
(フラッシュメッキ) - 納期
- 8日目出荷
- 2021年9月時点の情報です
- 全長X、もしくは幅Yが300mm以上になると、+2日の納期となります
リンクアーム部品の3D CADデータをアップロードして「硬質クロムメッキ」の価格を確認してみませんか?
材質(※)・表面処理の選択方法
meviy FAメカニカル部品にログイン後、3D CADデータをアップロードし、「切削プレート」を選択。部品のビューワー画面を表示します。
「基本情報」のタブ、「材質」 「表面処理」の項目をクリックしたら表示されるプルダウンから、それぞれ選択ができます。
- プルダウンに表示されない場合は、対応していない種類となりますので、ご了承ください。
※meviy FAメカニカル部品では、材料は材質と表記されます
初めてのご利用で不安な表面処理や材料も、
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meviy FAメカニカル部品は簡単3ステップで見積もりが可能!
以下の3ステップで、お手持ちの3D CADデータを見積もりしていただけます。
今回ご紹介したポイントを参考に、ぜひ試してみてください。
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