金属・樹脂の材料 ものづくり基礎知識

EVA樹脂の特徴と用途|機械設計での使い方と選定ポイント

EVA樹脂は、柔軟性や弾力性をもつ樹脂です。身近なところでは、靴のソール、マット、包装用緩衝材、フィルムなどに使われているというとイメージしやすいでしょうか。発泡させると軽量でクッション性のある材料になるほか、非発泡のフィルムや成形材料、ホットメルト接着剤の原料としても利用されます。

ただし、EVA樹脂がすべて柔らかいスポンジ状の材料というわけではありません。原料の組成、発泡の有無、密度、架橋、添加剤などによって、性質や適した用途は異なります。

製造業では、発泡させたEVA樹脂をシートやブロックの状態で使用し、装置や治具の緩衝材、当て材、すき間埋め材、部品保持材などに加工することがあります。一方で、歯車や軸受のような機構部品に使われる樹脂とは、役割も選定方法も異なります。

本記事では、EVA樹脂の一般的な特徴を押さえたうえで、機械設計者向けの情報として、機械装置や治具における用途、加工方法、選定時の確認項目を解説します。

EVA樹脂とは

EVA樹脂は、エチレンと酢酸ビニルを共重合した熱可塑性樹脂です。英語の「Ethylene Vinyl Acetate Copolymer」の頭文字からEVAと呼ばれ、日本語ではエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂などと表記されます。

EVA樹脂の性質を左右する要素の一つが、酢酸ビニル、すなわちVAの含有量です。一般にVA含有量が増えると柔軟性や接着性が高まり、少ない場合はポリエチレンに近い剛性を示す傾向があります。

ただし、機械装置の緩衝材などに使われるEVAフォームには、樹脂を架橋して発泡させた製品もあります。架橋とは、樹脂の分子同士を結び付けて網目状の構造を形成することです。架橋品は、未架橋のEVA樹脂とは加熱時の挙動や再加工性が異なるため、区別して考える必要があります。

また、市販のEVAフォームでは、VA含有量が選定項目として示されていない場合があります。機械設計では原料組成だけで判断せず、採用する製品の見掛け密度、硬さ、圧縮応力、圧縮永久ひずみ、気泡構造、厚さなどを確認します。

EVA樹脂の一般的な用途

EVA樹脂は、柔軟性、発泡性、接着性、成形性などを生かし、幅広い製品や産業分野で使われています。

  • 靴のミッドソール、サンダル、インソール
  • マットやスポーツ用品のクッション材
  • 製品輸送時の包装用緩衝材
  • 包装用や農業用などのフィルム
  • 電線・ケーブル用の被覆材料や配合材料
  • ホットメルト接着剤
  • 太陽電池モジュール用封止材
  • 機械装置や治具の緩衝材、当て材

このように、EVA樹脂の用途は発泡シートだけではありません。ここからは、機械装置や治具で使われるEVAフォームを中心に解説します。

機械設計ではEVAフォームを補助材として使う

機械設計で使用されるEVA樹脂の多くは、シートやブロック状の発泡体です。EVAフォーム、発泡EVA、EVAスポンジなどと呼ばれます。

EVAフォームは、歯車、軸受、ローラーのように荷重を受けて動力を伝える機構部品ではありません。位置決めや荷重支持は金属や硬質樹脂の部品に任せ、EVAには衝撃緩和、表面保護、すき間吸収などを担わせるのが基本的な使い方です。

EVAフォームのおもな機械装置用途

ワーク受け・当て材

搬送装置や組立治具で、ワークと金属部品が直接接触する箇所にEVAフォームを配置することがあります。接触時の衝撃や音をやわらげ、塗装品、研磨面、外観部品などの傷付きを抑えるためです。

  • 搬送治具のワーク受け
  • 組立治具や検査治具の当て材
  • 装置カバーや扉の戸当たり
  • 部品仮置き台の保護パッド

EVAは荷重を受けると変形するため、位置決めの基準面には向きません。停止位置は金属製ストッパーや硬質樹脂部品で決め、EVAは接触直前の衝撃を緩和する位置に配置します。

緩衝パッド・がたつき防止材

EVAフォームは、部品同士の接触音や小さな衝撃を抑えるパッドとして使用できます。カバー内部の部品押さえ、電装品の保護、ケース内でのがたつき防止など、比較的軽い荷重が加わる箇所に適しています。

ただし、柔らかい材料であれば、必ず高い防振性能が得られるわけではありません。モーターやポンプの振動を抑えるには、機器の質量、振動周波数、支持面積、ばね特性などを考慮する必要があります。共振の回避や振動絶縁が必要な場合は、防振ゴムや専用マウントを検討します。

筐体・カバーのすき間埋め用パッキン

独立気泡タイプのEVAフォームは、筐体やカバーの合わせ面へ配置するパッキンに加工されることがあります。おもな目的は、すき間を埋めること、接触音やがたつきを抑えること、軽度な粉じんの侵入を抑制することです。

気密性、水密性、IP等級などが要求される場合は、EVAフォームを挟むだけでは性能を保証できません。材料の気泡構造に加え、パッキン形状、組立時の圧縮率、締結間隔、合わせ面の平面度を含めて評価します。

油圧、空圧、真空、液体を確実に封止する用途では、要求条件に適したゴム製ガスケットや専用シール材を検討します。

クッションスペーサー

EVAシートを打ち抜き、電装部品と筐体の間やカバーの内側へ配置すると、すき間を吸収するクッションスペーサーとして使えます。粘着材付きの製品は、組立時の仮固定にも利用できます。

ただし、EVAは圧縮によって厚さが変化するため、精密な高さ調整用のシムには適しません。一定の寸法を維持する箇所には、金属シムや硬質樹脂スペーサーを使用します。

通い箱・治具トレーの部品保持材

EVAフォームを部品形状に合わせて切り抜き、通い箱、工具箱、測定器ケースなどの内装材として使うこともあります。工程間搬送時の部品移動や、部品同士の接触を抑える用途です。

柔らかすぎる材料では保持力が不足し、硬すぎる材料では部品を着脱しにくくなります。部品質量、保持方向、輸送時の振動や衝撃、必要な着脱性を考慮して、材質と切り抜き寸法を決めます。

EVAフォームのおもな加工方法

EVAフォームは、シートやブロックから切断、スライス、打ち抜きなどで加工されます。少量品ではデジタルカッターなどによる切断、量産品では刃型による打ち抜きが用いられます。

両面テープや接着剤を使い、金属、樹脂、塗装面などへ貼り付けることも可能です。ただし、接着性能はEVAだけで決まりません。相手材、表面粗さ、油分、使用温度、湿度、荷重方向などを考慮して接着材を選びます。

柔らかい発泡体は加工中や測定中にも変形します。厚い材料では切断面に傾きが生じる場合もあるため、金属切削部品と同じ感覚で厳しい寸法公差を指定せず、必要な機能と加工方法に応じて公差を設定します。

EVAフォーム選定時の確認項目

密度・硬さ・圧縮応力

硬さは、材料表面を押したときの局所的な抵抗を比較する目安です。一方、フォーム材を一定量つぶすために必要な力は、圧縮応力で確認します。部品押さえ、パッキン、ワーク受けなどの設計では、硬さだけでなく、想定する圧縮率における圧縮応力を確認することが重要です。

EVAフォームの硬さには、JIS C硬度やタイプC硬度などが用いられることがあります。製品資料によってはアスカーC硬度と表記される場合もあります。ショアAなど異なる測定方式の数値とは単純に比較できないため、測定方式と試験条件を確認してください。

フォーム材が発生する合計反力は、圧縮応力だけでなく取付面積にも左右されます。取付面積が大きい場合は、カバーの変形や締結部へ加わる負荷も含めて検討します。

組立後の圧縮率

フォームパッキンや部品押さえでは、自由状態の厚さだけでなく、組立後にどの程度圧縮されるかを確認します。圧縮しすぎると永久変形が大きくなりやすく、圧縮量が少なすぎると部品や筐体の寸法ばらつきを吸収できません。

適切な圧縮率は、密度、硬さ、気泡構造、要求する反力によって異なります。材料メーカーや加工会社の推奨条件を確認し、必要に応じて試作品で評価します。

圧縮永久ひずみ・圧縮クリープ

EVAフォームを長時間圧縮すると、荷重を取り除いても元の厚さまで戻らない場合があります。この変形の残りやすさを示す指標が圧縮永久ひずみです。

ただし、圧縮永久ひずみが小さいことだけで、締結中の反力を長期間維持できるとは限りません。寸法の回復と、荷重を加え続けたときの変形や反力変化は別の評価です。常時圧縮されるパッキンや部品押さえでは、必要に応じて圧縮クリープや応力緩和に関するデータも確認します。

温度・油・薬品との適合性

EVA樹脂は、高温になると軟化や変形が起こりやすくなります。使用可能な温度はグレードによって異なるため、EVA全般に共通する温度で判断せず、採用予定品のデータシートを確認してください。

切削油、洗浄液、グリース、接着剤などと接触する場合も注意が必要です。耐薬品性は、薬品の種類、濃度、温度、接触時間によって変わります。重要な用途では、実際に使用する液体へ試験片を浸し、外観、寸法、質量、硬さなどの変化を確認します。

難燃性・電気特性

すべてのEVA製品が、難燃性や電気絶縁性に関する規格を満たすわけではありません。制御盤や電気機器の内部で使用する場合は、難燃グレードの有無、電気特性、要求規格への適合を製品単位で確認します。

EVA樹脂は装置内での役割を限定して使う

EVA樹脂は、靴底、緩衝材、フィルム、接着剤などに使われる樹脂です。機械設計では、そのなかでもEVAフォームを、ワーク受け、当て材、緩衝パッド、すき間埋め用パッキン、クッションスペーサー、部品保持材などに利用します。

EVAフォームは、荷重や時間によって変形し、温度や薬品の影響によって性能が変化する場合があります。硬さだけで選ばず、見掛け密度、想定圧縮率での圧縮応力、圧縮永久ひずみ、圧縮クリープ、使用環境を確認しましょう。重要な用途では、実際の取付状態に近い試作品による評価が必要です。

まとめ

EVA樹脂は、柔軟性やクッション性を生かし、緩衝材やフィルム、接着剤などに幅広く使われています。機械設計では、主にEVAフォームをワーク受け、当て材、すき間埋め用パッキン、部品保持材などの補助材として利用します。選定時は硬さだけで判断せず、密度、圧縮応力、圧縮永久ひずみ、使用温度や薬品との適合性を確認することが重要です。重要な用途では、実際の取付状態に近い条件で試作品を評価しましょう。

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