平行度の記号は
「2つの平行な直線や平面!」と覚える
今回のシリーズでは、グローバル図面として設計意図を表す幾何公差の意味を解説しています。第11回目となるこの記事では、姿勢偏差に分類される「平行度」の意味と、その記号の使い方について詳しく説明します。
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目次
1.姿勢偏差とは
前回の形状偏差のグループに続いて、姿勢偏差の5つの特性について解説していきます。
最初は姿勢偏差というグループに含まれる平行度です。
姿勢偏差は関連形体に分類され、データムに関連するため、必ずデータムをセットにして使用しなければいけません。
姿勢偏差には次の5つの幾何特性があります。
・平行度 ←今回解説する幾何特性
・直角度
・傾斜度
・線の輪郭度…姿勢偏差の場合、データムに関連する
・面の輪郭度…姿勢偏差の場合、データムに関連する
2.平行度とは
平行度は「データム直線またはデータム平面に対して、平行な幾何学的直線または幾何学的平面からの平行であるべき直線形体または平面形体の狂いの大きさ」とJISで規定されます。
平行度は姿勢偏差のグループに属するためデータムを必要とします。
3. 平行度の記号と記入のルール
平行度を図面に指示する場合、公差記入枠に平行度の記号と幾何公差値、必要に応じてその他の記号、データム記号を記入します。公差記入枠は3つあるいは4つの区画のものを使います(図11-1)。

図11-1 平行度の記入例
平行度の対象となる形体は1枚の平面または中心平面・中心線です。従って、それらの形体を包み込む空間が公差領域となります。公差領域に応じて幾何公差値にφが付かない場合とφが付く場合があります(図11-2)。

図11-2 平行度の公差領域のパターン
4. 平行度を適用する形状
平行度を適用する形体は、一般的に平面形状や穴に指示します(表11-1)。
表11-1 平行度を適用する形状例
適用する形状例 | データム | 対象形体 | 補助記号 | ||
1 | 平行二平面
断続平面 (同一面) |
![]() |
要 | 平面
(断続形体) |
–
(CZ) |
2 | 平行2穴
断続穴 (同一中心線) |
|
要 | 中心線
(断続形体) |
–
(CZ) |
3 | 平面と平行穴
断続穴 (同一中心線) |
|
要 | 中心線
(断続形体) |
–
(CZ) |
5. 平行度の図面と公差領域
図面に平行度を指示する場合の設計意図と図面指示例、公差領域を解説します。
① 台座に当てる平面を基準とし、対向する平面に平行度を指示する場合
設計意図
部品①の下面を台座に接触させ、部品①の上に設置する部品②が傾くことを防ぐために、部品①の上面を台座に対して平行に加工して欲しい(図11-3)。

図11-3 部品②を台座に対して平行に取り付けたいという設計意図
図面指示
台座に接する下面をデータムとして指示するために、寸法線の矢と明確に外してデータム記号を付けます。平行にしたい上面に寸法線の矢と明確に外して平行度を指示します(図11-4)。

図11-4 平行度を部品①に指示した例
公差領域
検査対象となる面は、データム面と平行で0.1mm離れた2平面間の領域で規制されます(図11-5)。

図11-5 平行度を部品①に指示した時の公差領域
② 台座平面を基準に断続した平面に平行度を共通領域で指示する場合
設計意図
台座の上にある溝によって分断された同一平面をもつ部品①の上に設置する部品②が傾くことを防ぎ、部品②を台座に対して平行に取り付けたい(図11-6)。

図11-6 部品②を台座に対して平行に取り付けたいという設計意図
図面指示
断続した同一平面が全面に渡り基準面に対して平行になって欲しい時、断続した平面の高さ寸法の矢と明確に外したうえ公差値にφを付けずに平行度をすべての面に指示し、公差値に続けて記号CZ(共通領域)を追記します(図11-7 a)。
あるいは、公差記入枠の上に「3x」と個数表記することで平行度の指示線を1つの面だけに示すこともできます(図11-7 b)。

図11-7 平行度を共通領域の表面に指示した例
公差領域
検査対象となる断続面は、溝の段差部分を無視して台座に接する面と平行な0.1mm離れた2平面間の領域で規制されます(図11-8)。

図11-8 平行度を共通領域の表面に指示した時の公差領域
③ 穴を基準に穴に平行度を指示する場合
設計意図:
挿入する軸①と軸②が平行となるよう部品①にある2つの穴が平行であって欲しい(図11-9)。

図11-9 部品①の2つの穴を平行にしたい設計意図
図面指示
基準とする穴の直径の寸法線にデータムを付けて指示し、それと平行になって欲しい穴の直径の寸法線の矢に幾何公差の指示線を当てます。穴の中心線が検査対象のため、公差値にφを付けます(図11-10)。

図11-10 穴の中心線を基準にして平行度を他の穴の中心線に指示した例
公差領域
検査対象となる中心線は、データムの中心線と平行な直径0.1mmの円筒領域で規制されます(図11-11)。

図11-11 平行度を穴の中心線に指示した時の公差領域
④ 平面を基準に穴に平行度を指示する場合
設計意図
台座の上にある部品①に挿入する軸①を台座に対して平行にしたい(図11-12)。

図11-12 台座に対して軸を平行に取り付けたいという設計意図
図面指示(部品①)
台座に接する面をデータムとして指示します。それと平行になって欲しい穴の直径寸法に幾何公差の指示線を当てます。データムが平面であるため、公差値にφは付きません(図11-13)。

図11-13 台座に接する面を基準にして平行度を穴の中心線に指示した例
公差領域(部品①)
台座に接する面と平行な0.1mm離れた2平面間の領域で規制されます(図11-14)。

図11-14 台座に接する面を基準にして平行度を穴の中心線に指示した時の公差領域
⑤ 平面を基準に穴の中心線に平行度を指示した場合の落とし穴
図11-14の例では、基準が平面であることから、平面図から見て穴が傾いていても平行度の検査上では合格になってしまいます(図11-15)。

図11-15 穴が斜めに加工された場合
加工上、極端に傾いた穴は加工されることはありませんが、わずかな量であれば傾く可能性はあります。わずかな量であれば、部品①を取り付ける際に図示されていないねじ穴のガタ分による傾きの方が大きいため、そこまで神経質に考える必要はありません。
しかし台座面と直交する壁があり、機能上、壁とも平行になって欲しい場合があります(図11-16)。

図11-16 第2次データムを活用する際の構造例①
このような設計意図の場合、第2次データムを利用します。平行度を指示するための従来のデータムAに加えて、壁がある面をデータムBと設定します。平行度はデータムA、データムBの両方を参照します。
公差領域は、データムAと平行、かつデータムBとも平行な直径0.1mmの円筒領域になります(図11-17)。

図11-17 第2次データムを利用した図面例と公差領域①
図11-16のように設計構造上、穴が壁と平行に存在すればよいのですが、壁が穴に対して直角方向にある場合はどうすればよいのでしょうか?(図11-18)。

図11-18 第2次データムを活用する際の構造例②
この場合も同様に、第2次データムとしてデータムBを利用し、平行度の指示に変化はありません。厳密にはデータムBに対して穴は直角方向のため、平行度を指示することは矛盾しており、データムBに対しては別で直角度を指示すべきです。
ところが製図には“暗黙の了解”というルールがあり、平行度を指示していてもデータムBに対しては直角度として検査することになるのです(図11-19)。

図11-19 第2次データムを利用した図面例と公差領域②
ISOによるオプション記号:姿勢平面インジケーター(Orientation plane indicator) 2025年6月時点のJISには、新しいISOの記号についてまだ公開されていません。しかしISO 1101:2017により設計意図を明確にする様々なオプション記号が追加されています。 今回紹介するのは「姿勢平面インジケーター(仮称)」です。姿勢平面インジケーターは、公差領域を規制する平面の方向(データムと公差記入枠内の幾何特性による)と公差領域の幅の方向(間接的に平面に直角)、または円筒公差域の軸の姿勢を拘束します。 姿勢平面は、平面形体、円筒形体、回転体(円すいや輪環)のいずれかに適用します。 この姿勢平面インジケーターを使うことで、図11-19で解説した矛盾を無くすことができ、設計意図を明確に表現することができます。 ![]() 2次データムBと平行であることを指示する姿勢平面インジケーター ![]() 2次データムBと直角であることを指示する姿勢平面インジケーター |
6. 平行度の検査方法
CNC3次元測定機による母線の評価
平行度を測定する場合、CNC3次元測定機を使用し、面全体の複数個所の打点を測定することができます(図11-20)。
あるいは、複数の母線を引きずるように測定する“倣(なら)い測定”を選択することも可能です。共通領域(CZ)の測定は、同一面にない部分を無視した形でデータを採取し測定します。

a)図面指示例

b)データムの設定

c)平行度の測定(打点測定の例)
図11-20 CNC3次元測定機による平行度測定の例
まとめ
今回は、平行度を指示する際のルールと測定方法について解説しました。平行度をCNC3次元測定機で測定するイメージを知ることができました。
平行度は姿勢偏差のグループに属することから、データム面を定盤の上に置いて検査することが一般的です。
次回は、平行度と同じ姿勢偏差のグループに属する直角度について解説します。