公差を見える化する動的公差線図
今回のシリーズでは、最大実体公差方式(MMC:Maximum Material Condition)を解説します。図面に明示されていなくても実際に部品が満たすべき「実効領域」という考え方を軸に、幾何公差をさらにステップアップさせ、コストダウンに寄与するための最大実体公差方式の考え方と図面のルールを整理していきます。
第3回目のこの記事では、公差を見える化する「動的公差線図」の定義、動的公差線図を確認する際の注意点などを解説します。
目次
1. 最大実体公差方式をビジュアル化する動的公差線図
最大実体公差方式は、サイズ公差値のばらつき具合とそれに応じた幾何公差値の変化を頭の中でイメージしながら検討しなければならず、手間がかかるし間違いも発生しやすくなります。
そこで、この「サイズ公差」と「幾何公差」の関係を一つのグラフ上に記してビジュアル化したものが、「動的公差線図」です。
2. 動的公差線図を作成する過程
前回でも解説した部品①と部品②をはめ合う関係と最大実体公差方式を適用した図面を改めて確認しましょう(図3-1)。

a) 部品①と部品②のはめあい関係

b) 部品①と部品②の図面例
図3-1 部品①と部品②の関係と図面例
1)動的公差線図の作成(サイズ公差の関係を見える化)
動的公差線図は、2部品のサイズ公差の関係を横軸で表した図から書きはじめます(図3-2)。
- サイズ公差だけで見た最悪条件:
軸の直径が最大、穴の直径が最小のとき。はめあいの関係は「最小隙間」となり、この状態がサイズのマージンとなります。 - サイズ公差だけで見た最良条件:
軸の直径が最小、穴の直径が最大のとき。はめあいの関係は「最大隙間」となります。

図3-2 サイズ公差だけの関係を表した線図
2)動的公差線図の作成(縦軸の位置の決定)
続いて幾何特性の崩れを縦軸にして線図に書き加えるために縦軸の位置を決めます。
サイズのマージン分を2等分した位置にある直径30.00mmが中央値になり、そこに縦軸を設定します(図3-3)。

図3-3 縦軸の位置の決定
3)動的公差線図の作成(幾何公差の関係を見える化)
2部品それぞれのマージン0.1mmを直角度の数値として使い縦軸に展開し四角い面の領域を作成します(図3-4)。

図3-4 サイズのマージン分を幾何特性に振り分け
4)動的公差線図の作成(最大実体公差の適用)
最大実体公差方式の特徴を列記します。
- 最大実体寸法でできたとき、幾何特性の公差値を必ず守る。
- 最大実体寸法から離れた分だけサイズ寸法の隙間マージンが増えるので、そのマージン分を幾何公差にボーナス公差として追加することで幾何公差を緩和させることが出来る。
上記の考えを線図に加えたもの(緑色の三角領域)が最大実体公差方式を適用したボーナス部分となり、動的公差線図が完成します(図3-5)。

図3-5 最大実体公差を適用した動的公差線図
3. 動的公差線図を確認するときの注意点
動的公差線図を作成するうえで、穴と軸の最大実体公差方式を表す三角形(緑色の部分)の斜面からの延長線の先端部は必ず2部品の実効寸法である中間位置で一致するようにすれば最適設計されていると判断できます(図3-6)。

図3-6 動的公差線図の斜線部の一致
動的公差線図を書いたときに穴と軸の最大実体公差方式を表す三角形の斜面からの延長線の先端部が交差していると2つの部品は互いに干渉して挿入できない場合があることを意味します(図3-7)。

図3-7 動的公差線図の斜線部の交差
同様に動的公差線図を書いたときに穴と軸の最大実体公差方式を表す三角形の斜面からの延長線の先端部が離れていると、2部品は問題なく挿入することができますが、限界を狙った設計になっていないことを意味します(図3-8)。

図3-8 動的公差線図の斜線部の離れ
4. まとめ
頭の中でサイズ公差と幾何公差を組み合わせて考えても構いませんが、ちょっとした計算ミスや勘違いによってはめあい部が干渉して組めない、あるいは限界設計になっていないことがあり得ます。
動的公差線図を書いて技術資料として保存しておけば、立派な設計検討書になり、不具合が生じた場合に検証することができます。面倒がらずに動的公差線図をCADデータ上のどこかに書いて保存しておくことをお勧めします。
次回は、最大実体公差方式を適用できる幾何特性のうち、形状偏差の事例について解説します。


