金属・樹脂の材料

アルミニウムとは?素材の特徴や使用上の注意点について詳しく解説

アルミニウムは、非鉄金属の中で最も一般的な材料です。鉄系の金属材料にはない特徴が多くあり、幅広く用いられています。製品設計をする際には材料の特徴をよく理解し、適切な材種、加工法、熱処理などを選ぶことが必要です。今回は、アルミニウムの性質と種類について解説していきます。

アルミニウムとは。特徴や使用する時の注意点について解説します。

アルミニウムの特徴

アルミニウムの特徴

アルミニウムには次のような優れた特徴があります。

軽い

アルミニウムの比重は2.7程度であり、鋼材の約3分の1です。その軽さを生かして、輸送機器(航空機や人工衛星、新幹線など)や建築材料、モバイル家電(スマートフォンなど)をはじめ、幅広い分野で利用されています。

強い

純アルミニウムに他の金属を加えて合金化することで、比強度(密度あたりの引っ張り強度)を高くできます。中でも、亜鉛とマグネシウムを添加後に熱処理した7000番系の合金は特に強度が優れており、代表的なA7075(超々ジュラルミン)は航空機の部品にも利用されています。

錆びにくい

アルミニウムは酸素と反応しやすく、その表面には非常に緻密な酸化皮膜が形成されています。この酸化皮膜が保護層として働き、腐食を防ぐのです。アルミニウムは高い耐食性を生かして、海洋開発や船舶、建築などの分野で利用されています。浜風にさらされる場所で30年間使用しても問題が生じなかった、という報告もあります。

加工しやすい

アルミニウムはさまざまな方法で加工できます。延びがよく塑性加工に向いていますし、融点が低く湯流れがいいため鋳造にも適しています。切削加工もしやすく、溶接も可能です。多くの加工法が使えるため、薄肉形状(アルミホイルなど)から複雑形状まで、さまざまな形に加工できます。

熱をよく伝える

アルミニウムの熱伝導率は、鉄の約3倍です。熱を伝えやすいため、自動車のラジエータや、各種熱交換器、電子機器の放熱器などに使用されています。

電気をよく伝える

アルミニウムは、同じ重さの銅と比較して2倍の電流を流します。アルミニウムには軽さもあり、送電線材料として使えば鉄塔の間隔を広くできてコスト削減が可能なため、最近では送電線を銅線からアルミ線に置き換える動きも出てきています。

再生しやすい

長期間使用しても劣化しにくく、融点も低いため、使用後の製品を溶かして容易にリサイクルできます。新品を作る場合のわずか3%のエネルギーでリサイクルできるにもかかわらず、リサイクル品の質は新品とほぼ変わりません。

磁気を帯びない

アルミニウムは非磁性体であり、周囲に磁場が存在しても影響を受けません。そのため、パラボラアンテナや医療機器、船の磁気コンパス、超伝導関連製品などに利用されています。金や銀、銅といった他の非磁性体より安価な点もメリットです。

低温に強い

液体窒素(-196℃)や液体酸素(-183℃)などの極低温下でも強度の低下が見られず、かえって強度が増加する性質があります。このため、低温プラントやLNG(液化天然ガス)タンク、宇宙開発、バイオテクノロジー分野などで活用されています。

熱や光を反射する

アルミニウムには、赤外線や紫外線、電磁波などを反射する性質があります。純度を高めたり、鏡面加工を施したりすれば、反射率はさらに上昇します。これらの性質を生かして、暖房の反射板や宇宙服、ポリゴンミラーなどに活用されています。

見た目が美しい

アルミニウムは素地の状態でも美しい材料ですが、アルマイト処理などの表面処理を施せば、見た目をより美しくできます。さらに、電解着色により多彩な色を付けることも可能です。デザイン性が高いため、建築外装や包装材などに使用されています。

毒性がない

アルミニウムは食品類と反応しません。体内に取り込まれても99%以上は排出されますし、土壌への害もありません。そのため、食品や薬品の包装容器、人体に触れる医療機器などによく利用されます。

アルミニウムを使用する際の注意点

アルミニウムの注意点

多くの優れた特徴を持ったアルミニウムですが、注意点もあります。

鉄鋼材料と比較すると、強度がやや低い

アルミニウムは比強度に優れていますが、やはり鉄鋼材料に比べると強度が低くなります。飛行機の翼のように、やわらかくしなる構造物には向いていますが、歯車のように強度を求める部品には向いていません。

条件によっては腐食が発生する

錆びにくいアルミニウムですが、塩気が多い環境や異種金属との接触により腐食する場合があります。そのため、腐食を避ける場合には、アルマイト処理を行ったりします。

線膨張係数が大きい

アルミニウムの線膨張係数は鉄系材料の2倍近くあります。そのため、大きな熱応力が発生し、加熱と冷却が繰り返される部品では、熱疲労による破損が発生する可能性があります。

疲労限がない

鉄系材料の場合、一般的に金属疲労が起こらない下限の応力である疲労限があります。つまり疲労限以下の変動負荷しか発生しない設計にすれば、理論上永久的に使用できます。しかしアルミニウムではこの疲労限がないため、設計時には使用中に発生する変動応力とSN線図などを比較し、想定される製品寿命で亀裂進展が起きても強度上問題がないか確認が必要です。

溶接が難しい

アルミニウム表面に形成された酸化被膜の融点は約2000℃と高いため、溶接前に酸化皮膜を取り除く必要があります。また、アルミニウムは熱伝導率が高く融点が低いため、溶接時の熱が母材にすばやく伝わり、母材に抜け落ちが生じる恐れがあります。これを防ぐには、溶接トーチを動かす速度を徐々に変えなければいけません。このように、アルミニウムの溶接は難しいため、外注する場合は実績のある業者に依頼しましょう。

アルミニウムの代表的な種類

アルミニウムの代表的な種類と特徴

純粋なアルミニウムは強度が低いため、通常は他の金属を添加して合金にします。アルミニウムに鉄や亜鉛、マグネシウム、銅などを加えることで、さまざまな種類の合金を作製できます。
産業用のアルミニウム材は、最終製品の用途などに応じて展伸用合金と鋳物用合金に大別されます。展伸用合金とは、塑性変形を利用して加工するための材料です。一方で鋳物用合金は、名前の通り、鋳造に使われるアルミニウムになります。

展伸用合金

  • A1050
    A1050は純アルミニウム系として代表的な材種です。強度は低いですが加工性・耐食性に優れ装飾品や送電線などに使われます。
  • A2017
    A2017はジュラルミンとよばれる材種です。耐食性は低いですが高い強度が得られるため、航空機や自動車、機械部品などに使用されています。
  • A2024
    A2024は超ジュラルミンとよばれる材種です。A2017よりも高い強度が得られます。
  • A5052
    A5052は耐食性・加工性・溶接性に優れ、最も流通量の多いアルミニウム合金です。フレーム材や板金部品などに使用されています。
  • A6061
    A6061は耐食性に優れたアルミニウム合金です。T6処理という熱処理によって、さらに高い耐食性を持つようになります。
  • A6063
    A6063は耐食性、表面処理性に優れ、押出製品に最も使用されているアルミニウム合金です。アルミサッシや電材などに使用されています。
  • A7075
    A7075は超々ジュラルミンとよばれる材種で、アルミニウム合金中最大の強度が得られます。戦前、日本が世界に先駆けて開発したことで零戦に使用され、その優れた性能に大きく貢献しました。現在でも航空機用材料の代表として広く用いられています。

鋳物用合金

  • AC2B
    AC2Bは鋳造性に優れ一般的なアルミニウム鋳造合金として使用されます。エンジンのシリンダヘッドやバルブボディなどに使用されています。
  • AC4C
    AC4Cは鋳造性に加え耐食性、機械的性質にも優れた合金です。ミッションケースやコンプレッサケーシングなどに使用されています。
  • ACD10
    ACD10はダイカストに適した材料で鋳造性・切削性・機械的性質に優れ、広く使われています。エンジンのシリンダブロックなどに使用されています。

アルミニウムと各種金属との違い

以下の表では、アルミニウムと他の金属材料の特徴を比較しています。
アルミニウムは比重が小さく、耐食性や加工性に優れるなど多くの優れた性質を示す使いやすい材料であることが分かるでしょう。

アルミニウム ステンレス
(A5052) (SS400) (SUS304) (C1100)
融点(℃) 649 1580 1400~1450 1083
比重 2.7 7.9 7.9 8.9
強度 ×
耐食性 ×
加工性
熱伝導性
電気伝導性
磁性 なし あり なし(大きな力で変形させると磁性が現れる) なし
低温耐性 × ◎(オーステナイト系ステンレス以外は低温耐性なし)
安全性
溶接性 ×

まとめ

アルミニウムは強度や軽量性、加工性や見た目の美しさなど、多くの優れた特徴を持った材料です。特にその高い比強度によるメリットは大きく、今後も幅広い製品に使われ続けるでしょう。しかし、利点だけではなく注意点もあります。アルミニウム材の特徴や他の金属材料との違いをよく理解し、効果的に使ってみてください。