MCナイロン(モノマーキャストナイロン)とは、金型内でナイロン6のモノマーを直接重合させる「キャスト(注型)法」で成形した高性能ナイロン樹脂です。一般のナイロンに比べて機械的強度や耐摩耗性、耐熱性、化学的性質などにおいて優れています。金属に比べて軽量で取り扱いやすいため、金属部品の置き換え材料としても重宝されています。
今回の記事では、MCナイロンの概要、メリットやデメリット、ほかの樹脂との違いなどを解説します。

目次
MCナイロンとは
MCナイロン(モノマーキャストナイロン)は、ポリアミド樹脂の一種である6ナイロンの弱点を克服して、その性能を全体的に向上させた樹脂です。「青色のエンジニアリング・プラスチック」としても知られています。
MCナイロンの本質的な構造は、6ナイロンと同じです。では、なぜ性能に違いがあるのでしょうか。理由は製造方法の違いにあります。ポイントは、重合と成形のタイミングです。
一般的な6ナイロンは、成形前にすでに重合が完了しています。ペレット状にした6ナイロンを加熱してやわらかくし、射出成形や押出成形などで形をつくる方法が一般的です。
一方のMCナイロンは、金型内にモノマーを注入して重合させる「キャスト法」で製造されます。大気圧下で重合と成形をほぼ同時に進めるため、内部のひずみ(残留応力)を小さく抑えられ、厚肉・大型でも安定した物性が得られます。モノマーキャストナイロンという名前は、このキャスト法に由来するものです。
主な物性表(代表値の目安)
MCナイロンにはさまざまなグレードの製品が存在し、用途に応じて使い分けることができます。代表的なグレードとそれぞれの性質は次の通りです。
| 比重 | 約1.13〜1.16 |
| 引張強度 | 約90〜96MPa(MC901) |
| 連続使用温度 | 約120℃(耐熱グレード約150℃) |
| 荷重たわみ温度 | 約180〜215℃(メーカー・測定条件により異なる) |
| 吸水率 | 約0.6〜0.8%(23℃水中24時間、飽和時 寸法最大約2%増) |
MCナイロンの種類
MCナイロンには、基本グレードのMC901、耐候性を高めたMC801、自己潤滑性に優れたMC703HL、帯電防止(導電)グレードのMC501CD R2など、添加成分や配合により特性が異なる多様な種類があります。このほか、MC901と性能が同等で無着色のMC900NC、高強度・耐熱のMC602STもあります。用途に応じて最適なグレードを選択することが重要です。
また、ナイロンには吸水性があり、寸法が増加するため、寸法増加性を考慮に入れた設計を行う必要があります。
ここでは、MCナイロンの代表的なグレードとその特徴について解説します。
※MCナイロンは、三菱ケミカルアドバンスドマテリアルズ株式会社の登録商標です。
MC901
基本グレードです。一般の6ナイロンに比べて機械的強度や耐摩耗性、耐熱性、化学的性質などに優れた樹脂です。
特に高荷重下で、耐摩耗性を発揮します。薬品性、絶縁性、加工性にも優れています。連続使用温度は約120℃、引張強度は約96MPaで、自己潤滑性も備えています。色は青色です。
MC801
MC901に特殊グラファイトを加えて耐候性や耐摩耗性、すべり性能を向上させた製品で、屋外での使用に適しています。色はメタルブラックまたは暗灰色です。
MC703HL
MC901に特殊潤滑剤を加え、自己潤滑性・耐摩耗性に優れる摺動グレードです。
動摩擦係数と静摩擦係数が共に低く、スティックスリップ現象の抑制に効果があります。
浸漬後に充てん剤が脱落する恐れがあるため、油脂食品関連の用途には使用できません。
特殊添加剤によってザラザラした手触りをしています。材料は紫色で、識別が容易です。
MC501CD R2
特殊なカーボンを配合し、帯電防止(導電)性をもたせたグレードです。体積固有抵抗はグレード(R2/R6/R9など)により異なるため、使用時はメーカーの物性表で確認してください。
ただし、発熱体や接点、端子等の電気部品としては使用できません。色は黒色です。
※MCナイロンは、三菱ケミカルアドバンスドマテリアルズ株式会社の登録商標です。
メビーのMCナイロンの加工事例
メビーでは、MCナイロンを選択できます。MCナイロンでは他のグレード・色も用意しています。ぜひご利用ください。

| 品名 | ベースプレート | ローラー |
| 材質 | MCナイロン(スタンダード・アイボリー) | MCナイロン(スタンダード・青) |
| サイズ | W75mm×D75mm×H20mm | ø55×L60mm |
| 出荷日 | 6日目 | 6日目 |
| 参考価格 | 8,829円 | 15,019 円 |
| 写真 | ![]() |
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| 詳細 | https://jp.meviy.misumi-ec.com/help/ja/technical_info/mpb_shape-material/3423/ | https://jp.meviy.misumi-ec.com/help/ja/technical_info/tup_shape-material/12589/ |
※表中は2025年1月時点の情報
MCナイロンの色とグレード
MCナイロンというと青いイメージが強いですが、実はMCナイロンの元々の色はアイボリー(ナチュラルホワイト)です。青いものは着色された色なのです。
MCナイロンはいくつかのグレードがあり、グレードによって色が分けられています。メーカーによって多少の差はありますが、おおよそ次のような色分けで取り扱われています。
- 青:一般グレード(MC901など)
- 白:一般グレード(MC900NCなど)
- 茶:耐熱性グレード(MC602など)
- 黒:耐候性、導電性など(MC501CD R2/R6など)
- 紫、灰、緑:摺動性グレード(MC703など)
青と白には一般グレードを割り当てているメーカーがほとんどです。流通量は青の方が多く、白の方が少なくなっています。どちらも一般グレードなので、色以外の性質の差はありません。
茶色には耐熱性グレードを割り当てているケースが多いです。
黒は、耐候性や導電性、帯電防止など複数のグレードが割り当てられているケースが多いです。そのため黒のMCナイロンについては、どのグレードなのかを丁寧に確認する必要があります。
一方で、摺動性グレードについては、メーカーによって異なる色を割り当てているケースが多いです。紫や灰色、緑などの色があるようです。
MCナイロンの色とグレードの関係は、あくまで傾向であり、複数のメーカーをまたぐ共通の規格として決まっているわけではありません。そのため、材料を購入しようとしているメーカーのカタログなどで確認するようにしましょう。
MCナイロンの特徴
ここでは、MCナイロンのうち最もよく使用される基本グレード「MC901」のメリットとデメリットを解説します。
MCナイロンのメリット
耐衝撃性や耐摩耗性が高い
MCナイロンの耐衝撃性は、常温ではあまり高くありませんが、温度が上昇するにつれて向上します。また、摩擦に対してもきわめて強い材料であり、軸受けやギヤといった摩耗しやすい箇所にもよく使用されています。なおナイロンは吸湿により可塑化し、靱性(衝撃への粘り)が高まる傾向がありますが、これは剛性・寸法安定性とトレードオフの関係にあります。
有機溶剤やアルカリ性薬剤、油脂などに強い
MCナイロンの耐薬品性は、一般のナイロン6とほぼ同じです。有機溶剤やアルカリ性薬剤、油脂などに強いことが知られています。
耐熱性が高い
MCナイロンは耐熱性が高く、120℃の高温でも連続して使用できます。耐熱グレードのなかには、150℃で使用できる製品もあります。このほか、荷重たわみ温度が高い点も特徴です。
軽量で取り扱いやすい
MCナイロンの比重は約1.13〜1.16で、鉄の約1/7・アルミの約1/2程度であるため、軽量でかんたんに取り扱えます。軽さと強度を両立している点は大きな強みで、自動車をはじめ軽量化が進む分野でもよく使用されています。
MCナイロンのデメリット
吸水性および吸湿性が高く、寸法精度が低い
MCナイロンは水分を吸収しやすいため、水中や高湿な環境では寸法が増加してしまいます。MCナイロン製の部品を別の部品と組み合わせる際に、寸法が変化したため「はめ合い部分がうまく入らなくなる」事例もあるようです。MCナイロン製の部品を設計する際には、保管中や設置後の寸法変化も忘れずに考慮しましょう。
食品衛生法に適合させるには、沸騰水に1.5時間浸漬する必要がある
MCナイロン中には、残留モノマーや添加剤といった不純物が残っている可能性があります。このため食品衛生法に適合させるには、沸とう水での煮沸処理が必要です(スタンダード・摺動・高強度グレードは約1.5時間、導電グレードは約2時間、導電性グレード(MC501CD R2・R6)は2時間以上の浸漬が必要)。
強酸に弱い
MCナイロンは有機溶剤やアルカリ性薬剤、油脂などに強い一方で、強酸には弱い点が特徴です。特に、有機酸よりも無機酸に弱いとされます。常温かつ低濃度であっても、無機酸との使用はおすすめできません。
MCナイロンの用途
MCナイロンは、強度や耐摩耗性、耐熱性、化学的性質の高さなどを生かして、さまざまな用途に活用されています。以下に例を示します。
- ベアリング
- 軸受け
- ライナー
- 歯車
- 車輪
- シーブ
- スプリング
- ビス
- パイプ
また、製品グレードによっては避けるべき用途があります。たとえば、摺動性を高めた「MC703HL」は油脂食品にかかわる用途には使用できません。導電性を向上させた「MC501CDR2」「MC501CDR6」「MC501CDR9」などは、電機部品としての使用を避ける必要があります。目的とする用途に応じて、使用するグレードを選択しましょう。
MCナイロンとPOM(ジュラコン)の違い
MCナイロンとよく比較される材料に、POMがあります。
POMはホルムアルデヒドやエチレンオキシドをモノマーとするエンジニアリング・プラスチックで、ホルムアルデヒドのみが重合したホモポリマーと、エチレンオキシドを10モル%程度含んだコポリマーの2タイプがあります。MCナイロンと同じく、歯車やビス、軸受けなどに使用される樹脂です。
以下で、コポリマータイプのPOMである「ジュラコン」とMCナイロンの性質を比較してみましょう。
※ジュラコンは、ポリプラスチックス株式会社の登録商標です。
吸水性と耐衝撃性
ナイロンは吸湿により可塑化し、靱性(耐衝撃性)が高まる傾向があります(剛性・寸法安定性とはトレードオフ)。MCナイロンはPOMと比べて吸水性がきわめて高いため、衝撃に対してより柔軟に対応できます。
一方で、長期的な寸法安定性は吸水性が低いPOMの方が優れています。高い精度が要求される部品には、MCナイロンよりもPOMを使用する方がいいでしょう。
連続使用温度
連続使用温度は、MCナイロンが120℃程度(グレードによっては150℃程度まで使用可能)、POM(ジュラコン)は約100℃前後(タイプにより約85〜105℃)です。MCナイロンの方が熱に強く、より高温での用途に適しています。
耐薬品性
MCナイロンとPOMの耐薬品性は似ています。どちらも有機溶剤に強く、強酸には弱い点が共通の特徴です。
まとめ
MCナイロンは、6ナイロンの性能を全体的に向上させた樹脂です。基本的な構造は6ナイロンと同じですが、モノマーキャスト法で製造するため、ひずみが少なく高性能な樹脂となります。
耐衝撃性や耐摩耗性が高い点、有機溶剤に強い点、熱に強い点などは、MCナイロンのメリットです。一方で、吸水性が高くて寸法が変化しやすい、強酸に弱いといったデメリットもあります。
MCナイロンには基本グレードのほか、添加剤を加えて特定の性質(耐候性や耐衝撃性など)を向上させたグレードの製品も存在します。目的の用途に応じたグレードを選択しましょう。
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