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ステンレスとは?種類・特徴・用途・注意点まで徹底解説

ステンレス(SUS)は「さびにくい(Stain-less)金属」として広く知られていますが、実際には成分や熱処理の違いによって性質が大きく異なる複数の種類が存在します。機械部品の設計では、種類の選び方を誤ると、想定していた耐食性や強度が得られなかったり、加工時にトラブルが発生したりすることもあります。この記事では、ステンレスの基本的な仕組みから主な4つの種類、メリット・デメリット、購入前に確認しておきたい注意点まで、設計初心者の方にも分かりやすく、かつ実務で役立つレベルまで踏み込んで解説します。

ステンレス鋼(SUS)とは?種類や特徴と注意点

ステンレス鋼(SUS)とは

ステンレス鋼は、炭素含有量1.2%以下、クロム含有量10.5%以上を含む、腐食に対する耐性を持つ合金鋼です。一般的に「ステンレス」と略して呼ばれ、金属業界ではSUS(Steel Special Use Stainless)と表記されます。英語名の「Stainless steel」は、「さびにくい(Stainless)」が語源です。

JIS規格だけでも100種類以上が存在し、自動車部品や家電、産業機械、スプーンなどの食器類まで、非常に幅広い製品で使われています。

さびを防ぐ「不動態皮膜」の仕組み

ステンレスが「さびにくい」といわれる最大の理由は、表面にできる「不動態皮膜」という薄い酸化皮膜です。ステンレスに含まれるクロムは鉄よりも先に空気中の酸素と結びつき、表面に厚さ数nm程度の緻密な酸化クロムの膜を作ります。この膜が内部の鉄への酸素や水分の侵入を防ぐため、腐食が進みにくくなります。

さらに、この皮膜には「自己修復性」があり、傷がついて膜が壊れても、酸素がある環境であれば再び皮膜が形成されます。この仕組みのおかげで、ステンレスは長期間にわたってさびに強い状態を保てるのです。

耐食性・耐熱性・強度・意匠性の4つの特性

不動態皮膜による耐食性に加えて、ステンレスには次のような特性があります。

  • 耐熱性:500℃程度までは強度が大きく落ちにくい
  • 強度:一般的な鋼と比べて強度が高く、薄板でも機構部品として成立しやすい
  • 意匠性:金属光沢があり、研磨によって美観を高めやすい

ただし、これらの特性がどの程度発揮されるかは種類によって異なります。次の章で、代表的な4つの種類とその違いを見ていきましょう。

ステンレスの主な種類

ステンレスは、含まれる成分の比率や熱処理の違いによって、性質の異なる複数の種類に分類されます。ここでは代表的な4つの系統を紹介します。

オーステナイト系

オーステナイト系は、カーボン0.15%以下、クロム16〜20%、ニッケル8%以上を含むステンレスです。クロムとニッケルを多く含むため耐食性・耐熱性に優れ、非磁性であることが多いのも特徴です。焼入れしても硬化しない一方、加工硬化(曲げなどの加工によって硬くなる現象)は起こりやすい傾向があります。また、塩化物イオンに長時間さらされると応力腐食割れが発生する場合があります。

鋼種名は「SUS3**」で表され、SUS304やSUS316が代表例です。ステンレス全体の生産量の6割以上を占める、最も一般的な系統といえます。

フェライト系

フェライト系は、基本的にニッケルを含まず、硫黄を含むガスに対して腐食しにくい性質を持つステンレスです。オーステナイト系のような応力腐食割れは起こりにくい一方、一般的な鉄と同様に磁性を持ちます。耐食性はオーステナイト系にやや劣りますが、材料価格が安く、溶接性も悪くないため、建具や家庭用品などで広く使われています。

鋼種名は「SUS4**」で表され、SUS430が代表例です。

マルテンサイト系

マルテンサイト系は、カーボン0.1〜0.4%、クロム12〜18%を含むステンレスです。熱処理(焼入れ)によってマルテンサイト組織を形成し、硬度が高くなる点が最大の特徴です。一方で炭素含有量に対して耐食性はやや劣るため、表面に鉄粉などが付着すると「もらいさび」が発生することがあります。

硬さが求められる刃物やシャフト、タッピンねじなどの材料として多く使われます。鋼種名は「SUS4**」(SUS410、SUS403など)のように表されます。

二相系(オーステナイト・フェライト系)

二相系は、オーステナイト系とフェライト系の組織が混在するステンレスで、「デュプレックスステンレス」とも呼ばれます。両者の中間的な性質を持ちながら、海水環境での応力腐食割れへの耐性が高いという特徴があります。海水にさらされる復水器や熱交換器、化学プラント設備など、過酷な腐食環境で使用されることが多い、比較的専門性の高い材料です。

ステンレス4種の特徴比較

系統 代表鋼種 耐食性 耐熱性 硬さ・耐摩耗性 磁性 コスト傾向
オーステナイト系 SUS304、SUS316 高い 高い 標準 なし※1 中〜やや高
フェライト系 SUS430 中程度 中〜高

※2

標準 あり 低い
マルテンサイト系 SUS410、SUS420J2 やや低い 中程度 高い あり 中程度
二相系 SUS329J系 など 非常に高い 低い(常温〜中温用) ※3 高い あり 高い
※1 曲げや絞りなどの強い力を加える冷間加工を行うと、内部の組織が変化して微弱な磁性を持つようになり、磁石に吸着することがある
※2 熱疲労には強いが、高温強度は並
※3 オーステナイト相とフェライト相の2つの組織でバランスを保っているため、300℃以上の高温に長時間さらされると脆化(割れやすくなる現象)が起きやすく、組織が不安定になる。

ステンレスの用途

その高い耐食性から、ステンレス鋼は様々な用途で使用されています。
オーステナイト系ステンレス鋼は、全ステンレス生産量の60%以上を占める最も一般的な種類です。代表的な鋼種としてSUS304があり、以下のように幅広い分野で使用されています。

  • 家庭用品:食器、調理器具、流し台
  • 建築用:外装材、手すり、建具
  • 自動車部品:マフラー、装飾部品
  • 産業機器:化学工業設備、食品製造設備、合成繊維製造装置
  • エネルギー関連:原子力発電設備、LNGプラント

オーステナイト系ステンレス鋼は、延性と靭性に優れ、深絞りや曲げ加工などの冷間加工性が良好です。また溶接性も高く、耐食性にも優れているため、様々な製品形状に加工されます。製品形状は薄板が最も多く、その他に厚板、棒材、管材、線材、鋳物などがあります。

一方、フェライト系ステンレス鋼はオーステナイト系に比べると耐食性はやや劣りますが、直接水がかかるシンクや調理台の天板などを除く業務用厨房設備や、建築内装の壁面・装飾、家具などに適しています。

また、マルテンサイト系ステンレス鋼は硬さが求められる用途に向いており、具体的には刃物や機械構造用部品(シャフトやボルトなど)で広く利用されています。

用途・目的で選ぶ|おすすめのステンレスの種類

実際に機械部品でステンレスを選定する際は、「何を重視したいか」から逆算して種類を決めると失敗しにくくなります。

耐食性重視なら:オーステナイト系

水や薬液、湿度の高い環境で使う部品、食品・医療関連の設備部品など、耐食性を最優先したい場合はオーステナイト系(SUS304、SUS316)が第一候補です。特にSUS316は、モリブデンの添加によりSUS304よりも塩化物環境への耐食性が高く、海水に近い環境でも選ばれます。

コスト重視なら:フェライト系

耐食性がそこまで厳しく求められない一般的な機構部品やカバー類で、コストを抑えたい場合はフェライト系(SUS430)が有力です。ニッケルを含まないため、オーステナイト系よりも材料費を抑えやすい傾向があります。

硬さ・耐摩耗性重視なら:マルテンサイト系

摩耗や衝撃を受ける刃物、シャフト、ピンなど、硬度そのものが機能に直結する部品にはマルテンサイト系が適しています。焼入れによって硬度を高められる点が大きな強みです。

海水・化学薬品環境なら:二相系

海水ポンプや化学プラントの部品など、過酷な腐食環境での長期使用が前提となる場合は二相系が候補になります。ただし材料費・加工費ともに高くなりやすいため、本当に必要な性能かどうかを見極めたうえで選定することが重要です。

ステンレス鋼(SUS)のメリット

錆びなどに強い

鉄は酸素が結合して酸化すると錆びになります。
ステンレス鋼は、クロムを含んでいるため鉄よりも早くクロムが酸化して薄い皮膜を作ります。この皮膜は不動態皮膜といい、錆びの発生を防ぐことができます。
何かとぶつかったりして傷がつき皮膜が破壊された場合にも、瞬時に再生するので錆びません。
他には、耐候性もあり、汚染空気に強いという特徴があります。

熱に強い

ステンレス鋼は熱に強く、500℃までは引っ張り強度が大きく落ちません。しかしながら、500℃を超えると機械的強度が落ちます。特に、マルテンサイト系とフェライト系は大きく強度が落ちます。
また、ステンレス鋼は熱伝導率が低いです。そのため、飲み物を保温するために水筒に使われます。

剛性が高い

ステンレス鋼は炭素を加えているため、一般的には鉄より強度が高いです。ただし、熱処理(焼入れ)の有無や構成元素によって多少異なります。機械部品の設計では、強度が必要な箇所にはステンレス鋼を用いる場合もあります。

清潔である

ステンレスは錆びにくいため、塗装やメッキを行わなくても、水を多く使う場所でも清潔に利用できます。食品工場の規格にも準じる材料なので、家庭で身近な流し台にも使用されています。食品の生産設備、化学プラントなどの特殊用途にも対応できる材料です。
さらにバフ研磨を行うことで表面の凹凸をなくし、汚れ(コンタミ)が付着しにくくなります。

ステンレス鋼(SUS)のデメリット

靭性(ねばり)がある設計者感覚で表現すると、ステンレスは靱性がある粘っこい材料だといえます。そのため外力をかけても変形から破壊まで、長く耐えられます。

摩擦係数が高い

ステンレスは他の金属と摺動する場合に滑りにくい性質を持っています。鋼板同士の場合に比べ、鋼板とステンレスでは約2倍の摺動抵抗になります。そのため、バネの付勢力が不足して機構が成立しない場合があります。

加工硬化の性質を持つ

ステンレスで板金部品を試作する場合、曲げ加工を行うとかなり硬くなります。原因は加工硬化ですが、その指標であるn値が鋼板の約2倍で特に注意が必要となります。そのため再加工性はなく一発勝負で加工する必要があります。

放熱性に劣る

ステンレス鋼は熱伝導率が低く熱が移動しづらいです。そのため、放熱性が求められる駆動部周辺などではステンレス鋼ではなくアルミを使う場合が多いでしょう。
また、ステンレス鋼を切削加工する時に、工具先端の熱が逃げにくく工具の寿命が短くなるというデメリットもあります。
また薄肉の切削加工品や薄板を溶接する場合には、逃げずに残った熱の影響で反りが発生する可能性もあります。

設計者が考えるステンレス鋼(SUS)の特徴

設計者(特に機構設計)としての感覚でステンレスを話すと、『困った時のSUS』と『くせもののSUS』という特徴が思い浮かびます。
『ステンレスの長所』の例として強度が高い事が挙げられます。具体的には板金部品の板厚をどうしても1mm以下にする必要がある場合に通常の鋼板だと手で簡単に変形してしまいますが、ステンレスでは機構部品として十分な強度を持ちますので0.6mmの板厚の部品も成立してしまいます。しかしSUSを利用して痛い思いをする場合も多く、ステンレスは使いにくいというイメージもあり利用方法で悩まされます。

ステンレス鋼(SUS)の注意点

ステンレス鋼の噛み込み現象

ステンレスで最も注意が必要なことは、噛み込み(焼き付き)現象です。
SUSのネジなどは現象が顕著に現れ、電動ドライバーで締め込むと雄ねじと、雌ネジが密着して2度と緩まなくなってしまいますので、メンテナンスでネジが外せず致命的になります。最悪の場合、関連部品を全て交換する必要があります。

摩擦係数が高い 熱伝導率が低い 熱膨張率が高い
摩擦熱が発生 摩擦熱が逃げない ネジが密着する

噛み込み現象の回避方法

SUSネジの場合はコーティングすることで噛み込みを低減できます。また締め付けトルクを適切に管理する事や、電動ドライバーを使わない事でも低減できます。

絶対に錆びないというわけではない

ステンレス鋼は錆びないことが特徴ですが、条件によっては錆びる場合もあります。
強い酸やアルカリにさらされたり、湿度が高いと腐食したりします。また、鉄成分が不動態皮膜の上に付着して錆びたように見える、もらい錆びが発生する場合もあります。
他には、不動態皮膜を傷つけてしまい再生する前に酸化してしまう場合もあります。

ステンレス加工の見積もりはメビーへ

メビーは3D CADで設計した機械部品のデータをアップロードするだけで即時見積もりと加工、最短1日出荷を可能にした機械部品調達のAIプラットフォームです。

メビーではステンレスの部品加工に対応しています。3Dデータをアップロードするだけで、1分で価格と出荷日の確認ができますので、ぜひご活用ください。

加工事例 

 

写真 
サービス名  板金加工  切削丸物 
材質  SUS316(2B) SUS304 
サイズ  W45×D30×H42.2 Ø80×L40 
板厚  3.0mm   
出荷日  3日目  8日目
参考価格  3,702円  13,487 

※表中は20262月時点の情報

ステンレスの対応材質についてはこちら
板金加工の対応材質
板金溶接加工の対応材質
切削加工(角物)の対応材質
切削加工(丸物)の対応材質

まとめ

ステンレス鋼はさまざまな機械部品や家庭用品、建設用品などで使われています。最大の特徴は錆びない点です。また、強度が高く熱伝導率が低いという特徴もあります。
一方、摺動性が悪かったり、曲げ加工時に硬化してしまったりするなど設計や加工に注意が必要です。
メリット、デメリットをよく理解して使用しましょう。ステンレス鋼は広く使われており、試作品や量産品どちらにも適した材料です。

メビーでは、今回ご紹介したステンレスの加工に対応しています!ぜひお見積もりください。

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