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パンチングメタルとは?特徴や種類、規格などを紹介

パンチングメタルは、穴がたくさんあいている金属の板で、家電、自動車や建築物、機械などさまざまな用途で使われています。
身近な例としては、パソコンの吸気口のように丸い穴がきれいに並んでいるパンチングメタルをイメージしやすいでしょう。ですが、用途に応じてさまざまな形状の穴をあけたものがあります。
本記事では、パンチングメタルの種類や特徴、規格や使用事例などを紹介します。

パンチングメタルとは?特徴や種類、規格などを紹介

パンチングメタルとは?

パンチングメタルとは、金型を使って穴あけ加工を施した金属の板です。穴をあけると軽量化できたり、通気性がアップして熱を逃がす効果を得られたりするほか、防音効果もあります。さらに、穴をあけて文字や絵を表現するなど、デザイン性アップにも活用できます。

パンチングメタルは、金属の板を「ダイ」といわれる金型で受けて、「パンチ」で打ち抜く加工方法で作られます。レーザー加工などと比べて加工時間が短いです。また、穴の寸法精度が高く、ばらつきも少ないです。
汎用の金型を使えば初期費用を抑えることが可能です。
逆に、複雑な穴形状のパンチングメタルを作成したい場合は、専用の金型でも加工できます。

パンチングメタルの材質

パンチングメタルのおもな材質は鉄、スチール、ステンレスアルミですが、他の材質で加工できる場合もあります。 スチールは建物の内装など、ステンレスは換気扇の吸気口、アルミは家電製品の廃熱口などに使用されます。

パンチングメタルは、材質、穴の開け方、板の大きさ、開口率などを変えることで、さまざまな用途に使うことができます。

パンチングメタルの種類

パンチングメタルは穴の形状、穴の配列によってさまざまな種類があります。また、パンチングメタルの材質によっても特徴があります。おもなパンチングメタルの種類を紹介します。

穴の形と種類

「丸穴」は、丸い穴があいているパンチングメタルで最も多く用いられています。「角穴」は正方形の穴で、「長角穴」は長方形のパンチングメタルです。長方形の角にRがついているパンチングメタルは、「長丸穴」といいます。
他には、ひし形の「菱穴」や、丸穴と十字型の穴が交互にあけられた「〇十」といわれるパンチングメタルもあります。

穴の配列

最も一般的な配列は正三角形の頂点に沿って穴を開ける「60°千鳥(ろくじゅうどちどり)」です。
他には、直角二等辺三角形をベースにした「45°千鳥(よんじゅうごどちどり)」や、縦、横ともにずらさずに並べた「並列」も一般的です。
斜めに並べた「ヘリンボン」「長孔綾抜き」、亀の甲羅のような「亀甲」といったパンチングメタルもあります。

おもな鋼板の材質

パンチングメタルの材質は、鉄スチールやステンレス、アルミが多いです。
ステンレスだと、SUS304やSUS430などが用いられます。錆びにくい材質なので、屋外でも使用できます。
鉄は、冷間圧延鋼板のSPCCや電気亜鉛メッキ鋼板のSECC、溶融亜鉛メッキ鋼板のSGCCや酸洗鋼板のSPHCなどが使われます。比較的安価で加工性も優れています。
アルミは軽量で加工しやすく、熱が伝わりやすいです。A1050やA1100、A5052などが使われます。

パンチングメタルの規格

パンチングメタルにはJIS規格のような統一された規格が存在しません。穴の形状や大きさ、ピッチ寸法などは各メーカー独自の規格に基づいています。
丸穴のパンチングメタルで穴径や並び方が同じように見えても、ピッチの寸法が微妙にメーカーごとに違っている場合があります。
パンチングメタルの穴形状やピッチに規格はありませんが、サイズは各鋼板の定尺品があります。
例えば、SUS304であれば1000×2000㎜といったように素材のサイズがJIS規格で決まっています。市場に流通している量が多いため、同じサイズのパンチングメタルが製作される場合もあります。
一方で、定尺品を切断して顧客が要望するサイズのパンチングメタルを作ることもできます。
パンチングメタルを調達するときは希望する形状や配列、サイズなどの細かい条件を各メーカーに問い合わせて仕様を整合していくことが大切です。
しかし、所定の大きさに切断しようとした場合、切断面に穴部分がかかっていると、エッジが残留しやすく、使用者が手を切るなどの危険があります。そのため、材料寸法に対し、穴を開ける部分の余白を設けるなどのアレンジを相談する方法もあります。

※ミスミでは枠付きのパンチングメタルも販売しています。

パンチングメタルの用途と使用事例

パンチングメタルのおもな使用事例について解説します。

建物の内外装材

建物の内外装にパンチングメタルが使われています。意識して見ないと気づきにくいですが、例えばアパートやマンションのバルコニーに穴のあいたパンチングメタルが外装として使われています。
他には、フェンス、目隠し、ソーラーパネルを固定する部材などにパンチングメタルが使われます。
内装なら天井や壁面のパネル、間仕切り、照明器具やいすの背もたれ、各種インテリアなどに使われています。

自動車の部品

自動車の内部の部品には、パンチングメタルがたくさん使われています。例えば、エアフィルターやオイルフィルター、排気マフラー、スピーカーカバーなどです。
パンチングメタルに求める機能は放熱であったり軽量化、防塵、防音などさまざまで、それぞれ適した形状に設計されています。

家電製品の部品

家電製品は、外装や、内部の部品などにさまざまなパンチングメタルが使われています。
例えば、コンロの換気扇についているレンジフードフィルターはイメージしやすい人も多いでしょう。金属の板で作られており、細かな穴によってホコリやゴミが換気扇に付着しないようにしています。
他には、ストーブグリルやラジエーターグリル、モーターカバーなどがパンチングメタルで作られています。

選別機

パンチングメタルは穀物や種子、鉱物などをふるい分ける機械部品としても使われています。
穴の大きさを調整することで、大粒用、小粒用などと使い分けることができます。
例えば、大豆などの豆の大きさを選別するために、パンチングメタルの穴の径を調節して大きい豆と小さい豆に分けます。
他には、石炭や砂、砂利などを選別する際にもパンチングメタルを活用できます。

プラントのストレーナー

ストレーナーとは、流体が通る配管の中に設置されている部品で、ゴミなどを取り除く役割があります。
ストレーナーは精油や製粉、パルプなどの不純物を取り除くために取り付けられます。圧力損失とゴミを取り除く機能を両立させるために、パンチングメタルの穴形状やピッチを工夫する必要があります。

建設物の付帯設備

パンチングメタルは、工事現場用の防音パネルや建物の保温パネルなどにも使われます。また、トンネル内の喚起用ジェットファンなどにも使われています。

その他

データセンターなどでは、サーバーを置くラックのカバーとしてパンチングメタルが使われています。内部を簡単にさわれないようにしつつ、通気性を上げて冷却しやすくしています。丸穴や長丸穴、長角穴などのパンチングメタルが使われます。
他には、デザイン用途として、モニュメントや看板、グラフィックパンチングとしても使われています。文字部や絵のみに穴をあけて浮き上がらせます。また、逆に文字部だけ穴をあけずに表現することもできます。

まとめ

パンチングメタルは、プレスで金属性の板に穴を開けたもので、工業製品だけでなく、建築用、看板などさまざまな用途で使われます。
特にJISなどで規格が決められているわけではなく、各メーカー毎に仕様が決められています。また、専用の金型を作成すれば、穴の形状やピッチなどをカスタマイズ可能です。
材質や形状、ピッチなどはメーカーによって扱うことができるパンチングメタルが異なるので、事前に仕様の整合をすることが大切です。