プロフェッショナル連載記事 開発現場でプロジェクトマネジメント力を極める

プロジェクト進行を円滑にし、信頼関係を築くコミュニケーションの方法

プロジェクトマネジメントを円滑に行うためには関係者と信頼関係を築く必要があり、信頼関係構築に向けてはコミュニケーションの量と質を確保することが重要です。前回の記事では、コミュニケーションの種類と組織間のコミュニケーションについて紹介しました。
一方で、多くの方にとってコミュニケーションという単語からイメージされるのは、個人間のコミュニケーションではないでしょうか?

そこで、この記事では前回紹介した組織間のコミュニケーションとあわせて取り組んで欲しい、個人間のコミュニケーションの重要性やメリット、考慮すべきポイントについて解説します。

プロジェクトを円滑に進めるために重要な個人間のコミュニケーション

社内、社外を問わず、難しいプロジェクトを適切に管理し、進めていくためには、頼りになる関係者とそうではない関係者がいます。エンジニアである私自身の経験において、頼りになる関係者にはどのような特徴があるかを考えてみると、仕事が早く正確なのは前提として、コミュニケーションに工夫があることが分かりました。
その工夫を実際に試してみると、自分自身が仕事を進めやすくなると共に、上司やざっくばらんに会話できる同僚、また一部の顧客からも「コミュニケーションがとりやすくなった」、「状況が分かるので安心して任せられる」「こういう進め方をしてくれてありがたい」といったコメントをもらえています。

私が実際に取り組んだコミュニケーションにおける工夫は、状況が複雑に入り組んでおり、短納期で難易度の高いプロジェクトほど大きな効果を発揮します。
これから紹介するコミュニケーションにおける工夫は、すぐに取り組めるものばかりです。試すことに大きなデメリットもないため、少しでも気になったら試してみてください。

個人間のコミュニケーションにおける3つの工夫

ここでは、個人間のコミュニケーションで重要だと実感した工夫を3つ紹介します。先述したように、個人間のコミュニケーションに気を付けておくことで、プロジェクトの管理やその他さまざまな仕事の進めやすさが大きく変わります。
精神的な負荷の軽減に繋がることもあるため、今回紹介するような工夫に取り組み、自身の周辺環境をいい状態に保っておきましょう。

工夫1:「早い」コミュニケーション

コミュニケーションを取る際には、「早い」タイミングでのコミュニケーションを重視するといいでしょう。タイミングが遅れれば遅れるほど、相手の期待値や不安感は大きくなり、連絡をする際のデメリットが大きくなります。
「早い」タイミングでは自身が納得できる回答を出せないと考える人も多いかもしれません。その場合には、速報で状況連絡をする中で、しっかりした回答をいつ出せるか連絡しておくことをおすすめします。
回答に時間をかけた上で、コミュニケーション相手の期待値に合わない回答しかできなかった場合には、顧客からの評価を大きく下げることに繋がります。

コミュニケーション相手の業務がスムーズに進む

社内・社外を問わず何かを依頼された場合・相談された場合には、設定された期日に対して余裕があったとしても、できるだけ早いタイミングでコミュニケーションを取ることが重要です。
多くの場合、依頼側は少し余裕を持った期日設定をしているため、ギリギリでの回答でも問題ありません。しかし、ギリギリのタイミングで突発的に、遅れに繋がる事象が生じないとは限りません。
早めに着手し、回答してあげれば、仮に突発事象が起きても影響を最小限に抑えられます。また、早めに着手した日程の分、回答した相手は余裕を持って仕事に取り組めるため、相手も早出しで仕事を進めてくれる可能性があります。
一緒にプロジェクトを進める上で、関係者の仕事がスムーズに進むことは自分自身にとっても大きなメリットです。保有しているタスクの中でうまく優先順位をつけながら、できるだけ相手の仕事を止めないことを意識するといいでしょう。

周囲からの信頼の確保・優先順位が向上する

返信が遅い場合、相手は自分がした連絡を確認できているのかどうかわからず、心配する場合があります。また、進めたい仕事に必要な情報を回答としてもらう必要がある場合、返信が遅いことで仕事に着手できず、不満が溜まる場合もあります。
特に、プロジェクトを管理する立場のような、多くのメンバーとコミュニケーションを取らなければならないポジションの人は不満が溜まりやすくなるため、関係するメンバーは注意が必要です。
早いタイミングでの返信は、相手に不安を与えることを防止し、相手から自分に対してのネガティブな印象を予防できます。反対に、早いタイミングで情報を共有できれば、相手は状況を確認でき、安心して仕事を進められるでしょう。

工夫2:相手の状況を考慮した情報の提供

コミュニケーションを取る際には、自分自身の状況や都合を優先するだけでなく、相手の状況を考慮することが重要です。
当たり前だと思う人もいるかもしれませんが、意識して仕事に取り組んでみると、実はできていない人が多いことが分かると思います。相手のことを考えて対応をした結果、自分にとっても望ましい状況になることも多くあるため、意識的に取り組むことが重要です。

自身の仕事を進めるために相手に動いてもらう

自分の仕事を先に進めるために、コミュニケーション相手に、相手の組織内でうまく動いてもらう必要がある機会は少なくないでしょう。例えば、提案内容に対する相手先社内での合意を取ってもらう場合などは、相手側の担当者に味方になってもらう必要があります。
相手が組織内で動きやすくなるためにはどのような情報が必要なのかを整理し、社内で合意を得るための武器となる情報を提供することが重要です。
コミュニケーション相手も、組織内で動きやすくしてもらえたという印象を持つため、それ以降の仕事でもうまく協力関係を築けるでしょう。

頼られることで状況をコントロールしやすくなる

継続して、適切な武器を渡し続けていると、コミュニケーション相手から頼られる機会が増えてきます。特に忙しいときには、頼られると面倒に感じることもありますが、これは自分にとっても仕事を進めやすい状況です。
方向性が定まっていない場合に頼ってもらえれば、自身の意見を通しやすくなるため、状況を自身が進めたい方向にコントロールできます。その結果、難しい状況を避け、仕事を進めやすくすることが可能です。
忙しくても、もし対応できる余裕が少しでもあるのであれば、積極的に協力することで大きなメリットに繋がる可能性があります。

工夫3:業務に直結しない内容の会話

限られた時間の中では、議論すべき内容を絞り込んでコミュニケーションを取ることが重要です。例えば、大きなプロジェクトを管理するための定例会などが挙げられます。
一方で、少しでも余裕がある状態で遅れが大きくなければ、全体の場ではなく個人間などの小さい規模で、業務に直結しないコミュニケーションを取ることも効果的です。

情報共有や意見交換がスムーズにできる

初めての人と会議をする場合などは、冒頭でアイスブレイクを行うことでコミュニケーションが活性化しやすいということが広く知られています。
同様に、一度でも業務とは直結しない会話をしたことがある人とは、親近感から連絡を取る際のハードルが下がり、議論が活性化しやすいです。情報共有や意見交換がスムーズにできることは、仕事を管理する上で大きなメリットといえます。
ただし、業務に直結しない会話を好まない人もいるので、まずは軽い会話で様子を見ることが重要です。雑談ばかりして、機嫌を損ねてしまうことのないように、十分気をつけましょう。

相手の記憶に残り、必要な情報を提供してもらいやすくなる

業務以外の会話をすることで、相手の記憶に自分のことが残りやすくなります。突発的な状況で情報共有が必要になった場合に、記憶に残っていることで思い出してもらいやすく、情報共有の漏れが起きにくくなるでしょう。
業務に取り組む上で、取捨選択は必要ですが情報を多く持っていること自体が大きなメリットといえます。必要な情報を漏れなく把握し、さまざまな情報を判断の根拠とすることで、判断を間違いにくい状況を構築できます。

まとめ

2記事にわたり、プロジェクトを円滑に進めるためのコミュニケーションについて紹介してきました。コミュニケーションについて注意をすることは、効果的なプロジェクトマネジメントを実現し、さらに周囲との関係性構築にも繋がります。
特に、今回の記事で紹介したような「個人間のコミュニケーションの工夫」については、すぐに取り組めるものが多くあります。いい成果に繋がる可能性が高いと考えているので、まずは一度試してみてください。