金属加工 ものづくり基礎知識

アルミの溶接はなぜ難しい?材質・方法の選び方と設計時の注意点

アルミは溶接できますが、鉄鋼と同じ感覚で材質や継手を決めると、溶接割れや変形だけでなく、溶接後の強度が設計上の想定を下回るおそれがあります。

機械部品の設計では、「溶接できるか」と「完成品に必要な性能を満たせるか」を分けて考えることが大切です。この記事では、アルミ溶接が難しい理由から、材質・工法の選び方などを解説します。3D CADデータをアップロードするだけで溶接箇所を自動で判定、価格・出荷日をすぐに確認できる「meviy(メビー)」の板金溶接加工についてもご紹介します。

アルミの溶接はなぜ難しいと言われるのか

アルミ溶接では、表面の酸化皮膜と、熱が伝わりやすい性質への対処が欠かせません。さらに、割れやすさや溶接後の強度は合金の種類によっても変わります。「アルミだから難しい」とひとくくりにせず、原因を分けて考えましょう。

酸化皮膜が接合を妨げる

アルミの表面には、空気中で自然に酸化皮膜ができます。この皮膜は母材より溶けにくく、溶接部に残ると、接合する金属同士が十分に溶け合わない融合不良などにつながります。施工前には油分・水分・汚れを取り除き、酸化皮膜を適切に処理する必要があります。

アルミの交流TIG溶接では、溶接中に皮膜を除去するクリーニング作用も利用します。ただし、この作用があるからといって、施工前の清掃を省けるわけではありません。

熱が広がりやすく、薄板では溶け落ちにも注意が必要

アルミは熱を伝えやすいため、溶接を始めた直後は接合部から熱が周囲へ逃げ、溶融池をつくりにくい場合があります。溶融池とは、溶接熱で母材などが液体になった部分です。一方、部材が温まった後も加熱しすぎると、薄板では溶け落ちや変形が問題になります。

設計者は溶接電流を一律に決めるよりも、板厚や継手形状、完成後に必要な寸法精度を明確にし、加工先が施工条件を検討できるようにすることが重要です。

割れとブローホールは原因を分けて考える

溶接割れには、合金と溶加材の組み合わせや継手の条件が関係します。溶加材とは、接合部に加える金属材料のことです。一方、ブローホールと呼ばれる溶接金属中の気孔には、母材や溶加材に付いた水分・油分、溶接部を保護するシールドガスの状態などが関係します。材質の選定と、施工前の清掃・保管は、別々の対策として確認しましょう。

アルミなら何でも溶接できる?材質ごとの注意点

「アルミ」という指定だけでは、溶接性も完成品の強度も判断できません。合金の種類に加え、必要に応じて質別も確認します。質別とは、加工硬化や熱処理などによる材料の状態を示す区分です。次の表は一般的なアーク溶接を検討する際の目安です。

材質 溶接を検討する際のポイント
A5052 板金部品の候補。溶加材の選定と、加工硬化材における熱影響部の強度に注意する。
A5083 溶接構造に用いられる材質。必要な継手強度を踏まえて溶加材を選ぶ。
A6061・A6063 溶接可能。ただし、熱処理材では溶接後の熱影響部の強度を確認する。
A2017・A7075 一般的なアーク溶接を前提とする構造への採用は慎重に判断する。

2000系・7000系にも溶接に用いられる材質はあるため、系列全体を「溶接不可」とは言えません。また、表の「溶接可能」は、接合後も母材と同じ強度が得られるという意味ではありません。

A5052は板金溶接の有力候補。ただし条件確認は必要

A5052は耐食性や成形性を備え、曲げと溶接を組み合わせる板金部品で検討しやすい材質です。ただし、溶接性がよいことと、どのような条件でも問題なく接合できることは別です。溶加材を使わない溶接を無条件に適用できるわけではなく、継手と施工条件に応じて溶加材を選定する必要があります。

また、加工硬化によって強度を高めたA5052では、溶接熱を受けた部分の強度低下を考慮します。溶接前の母材の強度値を、そのまま完成品の設計に用いないようにしましょう。材質自体の特徴はA5052の特性と加工設計のポイントでも解説しています。

A6061・A6063は溶接後の強度で判断する

A6061やA6063も溶接に用いられます。ただし、A6061-T6のように熱処理で強度を高めた材質では、溶接部の周囲にできる熱影響部の強度低下が重要です。熱影響部とは、溶けてはいないものの、溶接熱によって性質が変わった部分を指します。

荷重を受けるフレームなどでは、溶接前の母材強度だけで断面や継手を決めず、溶接後の状態に適用できる材料特性や設計基準を確認します。

A2017・A7075は接合方法から検討する

A2017などの2000系を、通常の溶接構造材として安易に選ぶことは避けましょう。材質・質別・必要な強度によって判断が変わるため、採用する場合は加工先と個別に検討します。

A7075は、一般的なアーク溶接による荷重支持構造には適しません。高強度という理由だけで材質を先に決めず、ボルトやリベットによる締結なども含めて構造を考えることが大切です。

アルミの溶接方法はどう選ぶ?

アルミはアーク溶接できます。代表的なTIG溶接とMIG溶接は、どちらもアーク溶接の一種です。ただし、工法名だけで仕上がりや変形の大小は決まりません。板厚、継手形状、溶接長、外観、数量などから選びます。

TIG溶接:溶融池を見ながら調整したいとき

TIG溶接は、タングステン電極と母材の間にアークを発生させ、必要に応じて別の溶加材を加える方法です。薄板や小型部品、外観を管理したい箇所で候補になります。一方、手動施工では速度が遅くなりやすく、条件によっては熱による変形が大きくなることもあります。「TIGなら必ず低ひずみ」とは判断できません。詳しくはTIG溶接のしくみと特徴をご覧ください。

MIG溶接:長い溶接線や施工能率を重視するとき

MIG溶接は、不活性ガスで溶接部を保護しながら、電極を兼ねるワイヤを連続供給します。作業者がトーチを操作する場合は半自動溶接です。長い溶接線などで施工能率を確保しやすい一方、アルミワイヤは軟らかく、安定した送給には材質に合った設備・条件が必要です。工法の違いは半自動溶接の基礎知識も参考にしてください。

レーザー溶接:継手の隙間と要求品質を確認する

レーザー溶接は熱を狭い範囲に集中させやすく、熱影響の低減が期待できます。ただし、部材間の隙間を埋めたり、肉盛りしたりする用途には適していません。「レーザーなら必ず変形しない」と考えず、継手の合わせ精度や必要な溶け込みを確認します。

溶接棒・溶接ワイヤはどう選ぶ?

溶加材は、母材と同じ系列から選べばよいとは限りません。A5052にも複数の候補があり、選定では割れにくさ、必要強度、耐食性、アルマイト後の外観などを考慮します。設計者は完成品に求める性能を明確にし、具体的な溶加材は材料メーカーの適合資料と加工先の施工条件を照合して決めましょう。

図面・3Dモデルを出す前に確認したいこと

溶接できる材質でも、トーチが接合部に届かない形状では製作が難しくなります。また、溶接前の部材が寸法どおりでも、溶接後の収縮によって取付穴の位置や面の平面度が変わる場合があります。設計段階で、次の点を整理しておきましょう。

  • 接合する位置と範囲:どの継手を、どちら側から、連続または断続で溶接するか。
  • 工具が入る空間:トーチに加え、必要な仕上げ工具も届くか。
  • 完成品で必要な寸法:取付穴、基準面、相手部品との合わせ面のうち、溶接後に管理すべき箇所はどこか。
  • 必要な性能:荷重や振動、気密・水密、外観、検査の要否をどう伝えるか。

溶接長を短くすると熱による変形を抑えられる場合がありますが、気密・水密が必要な箇所を安易に断続溶接へ変更することはできません。一方、連続溶接を指定するだけで、漏れがないことが保証されるわけでもありません。漏れを許容できない部品では、使用条件に応じて許容漏れ量や確認方法を加工先と取り決めます。図面での指示方法は溶接記号の一覧・見方・書き方も参考にしてください。

アルミと鉄は溶接できる?

アルミと鉄を一般的なアーク溶接でそのまま接合することは困難です。両者は溶ける温度などの性質が異なり、接合界面にもろい金属間化合物ができやすいためです。ただし、専用の異材接合技術まで含めて「接合できない」わけではありません。

機械部品では、まずボルトやリベットによる締結を検討するのが実務的です。用途によっては接着剤や専用の異材接合技術も候補になります。締結を選ぶ場合も、湿気のある環境ではアルミと鉄の接触による電食に注意し、必要に応じて絶縁を検討します。

アルミの板金溶接加工の見積もりはメビーへ

板金溶接加工部品を手間なく手配したいときには、ミスミの「meviy(メビー)」をご活用ください。3D CADデータをアップロードすると溶接箇所が自動判定され、対応する形状・条件では価格と出荷日を確認できます。

メビーでは、アルミニウムの材質として、A5052に対応しています。対応範囲の詳細は 板金溶接部品の見積もり をご覧ください。

3Dデータをアップロードして見積もり

まとめ

アルミの溶接では、酸化皮膜と熱への対処に加え、材質と質別に応じた溶接後の強度を確認することが重要です。完成品に必要な性能を明確にし、継手と製作条件を検討したうえで見積もりに進みましょう。