表面処理 金属加工

メッキの目的や種類、加工工程についてご紹介

メッキとは表面処理の一種で、金属や樹脂の表面に、素材とは異なった種類の金属の薄い膜を成形する方法です。漢字では「鍍金」と書き「めっき」や「メッキ」だけでなく「ときん」と書かれることもあります。今回はメッキの種類と方法について紹介します。

めっき目的や種類、加工工程についてご紹介

メッキとは?

メッキは、基材となる工作物の表面を薄い金属の皮膜で覆う表面加工です。メッキの目的は大きく分けて3つあります。

  • 装飾性の向上
    光沢のある表面や高級感のある色合いなど、見た目の美しさのために行われるメッキです。代表的なものに金メッキがあります。
  • 耐食性の向上
    鉄など、工業製品に多く用いられる素材は錆びやすいものもあります。そのため、腐食しにくい金属で表面をおおい、錆びないようにするために行うメッキです。亜鉛メッキなどが代表的です。
  • 機能性の向上
    メッキにより、装飾性や耐食性以外にもさまざまな機能が追加できます。例えばはんだぬれ性という、はんだの馴染みをよくするメッキでは、ニッケルメッキや、銅とスズの合金によるメッキなどを施します。他にも、摺動性を向上させたり、導電性を向上させたりするメッキなどがあります。

メッキの種類

メッキの種類は多岐にわたります。
*記載されている数値は参考値です。

名称 ビッカース
硬さ
(HV)
層厚さ
(μm)
処理できる
材質
使用例 目的・特長 備考
亜鉛メッキ 3~20 鉄鋼 薄板
ワイヤ
  • 防錆、低価格
  • 外観が良くない
クロメートメッキ 1~2 鉄鋼 板金部分
ボルト、ナット
  • 防錆、低価格
  • 量産品に適する
  • 美観は落ちるがニッケルメッキの代替
ユニクロメッキ 1~2 鉄鋼
三価クロメート 1~2 鉄鋼 ボルト、ナット
  • 防錆、低価格
  • 六価クロムを含有しない
ニッケルメッキ 鉄鋼

黄銅
  • 耐食性向上、装飾
  • 大気中ではクロムメッキの方が耐食性大
  • 必要に応じ、銅の下地メッキをする
  • 深い凹みは不可
1号メッキ 500 5~20
  • 3号メッキより外観は良好
  • 素材→バフ→メッキ→バフ
3号メッキ
  • 素材→メッキ
梨地メッキ
  • 耐疲労性
  • 小キズが目立たない
  • 素材→梨地処理→メッキ
無電解
ニッケルメッキ
500 指定可能 鉄鋼
ステンレス

アルミ合金
ガラス
プラスチック
ニッケルメッキ
ができない部品
メッキ後硬化処
理を施す部品
  • 膜厚管理が容易
  • 耐食性、耐摩耗性大
  • 非金属の導体化可能
  • メッキ後の熱処理で
    硬化可能
クロムメッキ 鉄鋼

黄銅
  • 光沢ある外観
  • 耐食性良好
  • クロムメッキ同士の摺動は焼付きやすい
  • 必要に応じ、ニッケルの下地メッキをする
  • 深い凹みは不可
1号メッキ 500 5~20
  • 3号メッキより外観良好
  • 素材→バフ→メッキ→バフ
3号メッキ
  • 素材→メッキ
梨地メッキ
  • 耐疲労性
  • 小キズが目立たない
  • 素材→梨地処理→メッキ
硬質クロムメッキ 1000 10~30 シャフト
摺動部品
  • 耐摩耗性優秀
  • 他のクロムメッキより高価
  • 素材→メッキ(3号メッキ)
四三酸化鉄皮膜
(黒染め)
鉄鋼 ボルト
ナット
計測器
  • 塗装下地
  • 外観(光沢あり)
  • タフトライドより錆びやすい
  • 四三酸化鉄(黒色)を生成させる
低温黒色
クロムメッキ
1~2 鉄鋼

ステンレス
精度を必要とするもの
  • 長期の防錆力
  • 黒色では最も耐食性に優れる
  • 超薄膜
  • 低温下処理のため素材への熱による影響がなく、プラスチックゴム等との結合部品もそのまま加工できる
アルマイト 白色 3~5 アルミ合金
  • 防食性、耐摩耗性
  • 電気伝導性がない
  • 耐熱性
  • 表面に堅い酸化皮膜を生成させ、酸化皮膜の細孔を利用して着色する着色アルマイトがある
黒色 5~10

メッキは処理方法により大きく3つに分けられるので、次章からそれぞれ解説します。

電気メッキと種類

電気メッキと種類

電気メッキは、メッキの中でも最も種類が多く一般的な方法で、装飾性や防錆性、耐摩耗性や電気伝導性をもたせるために行われます。金属イオンを含む溶液の中に被膜にしたい金属と、メッキを施したい金属を入れ、被膜にしたい方の金属にはマイナス、メッキを施したい金属にはプラスの電極をつないで直流電流を流します。すると溶液中で還元反応が発生し、プラス側の金属の表面にメッキしたい金属が析出されます。
析出される金属の量は電流密度によって変わるため、部品の形状によってメッキの厚さが不均一になります。具体的には、出っ張った場所ではメッキが厚く、ひっこんだ部分では薄いメッキになります。電気メッキは、流す電流と時間によりメッキの厚さが変えられるので、メッキする部品ごとに、目的に合ったメッキの厚さを見つける必要があります。
主な電気メッキには次のようなものがあります。

  • 金メッキ
    金は美しい光沢をもつ金属ですが、価格が高いのが特徴です。そのため製品の表面のみを金で包み、装飾性を高めるために金メッキが行われます。金は見た目が美しいだけでなく、化学的に安定しているため耐食性に優れており、防錆目的や、電気伝導性の向上のためにも使われています。
  • 銀メッキ
    銀も金と同様に装飾性に優れている金属です。しかし酸化しやすい性質を持っているため、銀メッキ後には変色を防止する処理が必要になります。電気伝導性が高いため、精密機器のコネクター部分の表面処理などに使用されます。
  • 亜鉛メッキ
    防錆メッキとして最も一般的に行われる加工法です。鉄の部品に亜鉛メッキを施すと、鉄に対する自己犠牲作用により鉄の腐食を防止します。亜鉛メッキの後にはユニクロメッキや三価クロメート処理が施され、亜鉛のメッキ層を保護します。
  • クロムメッキ
    装飾メッキに光沢を持たせる目的で行われるのがクロムメッキです。また耐摩耗性が高く、耐食性に優れていることから工業用として機械部品にも用いられます。

無電解メッキと種類

無電解メッキ加工

無電解メッキとは、電気を使用しないメッキ方法です。メッキ被膜にした金属のイオンを含んだ溶液中に、メッキをしたい製品を浸し、金属イオンを還元させて被膜にします。電気を使用しないため樹脂などの不導体にもメッキを施すことができます。またこのときに表面に成形された金属の被膜が電気を通すため、不導体の製品に無電解メッキを施して導電性を持たせ、電気メッキの前処理とするケースもあります。

無電解メッキではニッケルメッキが一般的です。

  • 無電解ニッケルメッキ
    これは別名カニゼンともよばれるメッキ方法です。電解ニッケルメッキよりも被膜の厚さが安定していますが、メッキ浴の温度が比較的高く、注意が必要です。無電解ニッケルメッキは耐摩耗性や防錆性に優れています。

その他のメッキ

電解メッキ、無電解メッキのほかに、化成処理(フェルマイト)や陽極酸化処理(アルマイト)、溶融亜鉛メッキなどがあります。

  • 化成処理(フェルマイト)
    黒い表面を得たい場合などに化成処理が使用されます。黒染めともよばれ、四三酸化鉄皮膜を作ります。被膜の厚さが薄く一定しており、寸法公差の厳しい部品にも施すことができます。
  • 陽極酸化処理(アルマイト)
    アルミ材の表面を強制的に酸化させて皮膜を得る方法を、陽極酸化処理と呼びます。硬度が高く、耐食性に優れています。
  • 溶融亜鉛メッキ
    加熱し、溶かしたメッキの中に部品を漬け込んで、表面に被膜を得る方法が溶融亜鉛メッキです。ワイヤーや構造物などに用いられています。溶かした亜鉛の中に漬けるため、熱の影響が大きくなります。

まとめ

メッキとは、金属や樹脂の表面に他の種類の金属の被膜を成形する方法です。装飾性の向上や、防錆性、耐久性など、さまざまな目的に合わせたメッキ処理が行われます。メッキの方法には、電気を使う電解メッキの他に、溶液中で金属を析出させる無電解メッキなどが主に用いられています。

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