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導電性の基礎と材料別比較|金属・導電性樹脂・ゴムの抵抗値と使い分け

「樹脂部品で静電気対策をしたいが、どの材料を選べばよいかわからない」「コストと導電性能のバランスに悩んでいる」などの悩みを抱えている方もいるでしょう。本記事では、導電性の基礎知識から金属・樹脂・ゴムの抵抗値比較、設計時の使い分けのポイントまでを解説し、適切な材料選定の基準や、信頼性向上・コストダウンのヒントを示します。日々材料選定を行う設計・開発担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

導電性とは

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導電性とは、一言で言えば「物質が電気を通す性質」です。

物質内部には電子が存在しており、電圧をかけたときにその電子がどれだけ自由に移動できるかで「導電性の高さ」が決まります。一般的に、導電性が高い材料は以下のような製品や用途で活用されています。

  • 電気接点・配線:コネクタ、端子、バスバー(銅、金など)
  • 電磁波シールド:精密機器の筐体、ノイズ対策カバー(アルミニウム、導電性樹脂など)
  • 静電気対策(ESD):半導体製造装置の部品、搬送トレイ、防爆エリアの床材(導電性ゴム、カーボン入り樹脂など)

導電性の定義

導電性は、物質がいかに電気を通しやすいかを示す性質です。この性質を表す物理量である導電率の単位は「S/m(ジーメンス毎メートル)」で、数字が大きいほど電気が流れやすいことを意味します。

また、実務上の評価ではその逆数である「電気抵抗(電気の流れにくさ)」も用いられます。材料そのものの導電性能を比較する際は、形状(長さや太さ)に依存しない固有の物性値として以下の2つが定義されます。

  • 体積抵抗率
    材料内部の電気の流れにくさを示します。単位は「Ω・cm(オーム・センチメートル)」や「Ω・m」が使われます。数値が低いほど導電性が高くなります。
  • 表面抵抗率
    材料表面の電気の流れにくさを示します。シート状やフィルム状の材料評価によく使われます。単位は「Ω/sq(オーム・パー・スクエア)」あるいは「Ω/□」と表記されます。

帯電性との違い

導電性と混同されやすい用語に帯電性がありますが、これらは視点が異なります。導電性が電気を流す能力を指すのに対し、帯電性は静電気が物質に留まりやすいか(蓄積しやすいか)を表す指標です。

一般的に、導電性が高い材料は、発生した静電気を瞬時に外部へ逃がすことができるため、「帯電しにくい」という性質を持ちます。逆に、プラスチックのように導電性が低い材料は、静電気が逃げ場を失って表面に蓄積するため「帯電しやすい」といえるのです。

図1 導電性と帯電性の違い_左:→帯電しやすい_帯電性:高い/導電性:低い|右:→帯電しにくい_帯電性:低い/導電性:高い

図1 導電性と帯電性の違い

物体が導電性を持つ(電気を流す)理由

物質が電気を通すかどうかは、物質内部で「電荷(電子やイオン)」を運ぶ担い手が自由に動けるかで決まります。ここでは、金属と樹脂が導電性を持つ理由について見ていきましょう。

金属

金属が高い導電性を持つ理由は、その原子構造にあります。金属内部では、原子核の束縛を離れた「自由電子」が動き回れる状態で存在しています。ここに電圧をかけると、自由電子が一斉に移動して電流が発生するため、電気をよく通すのです。

銅やアルミニウムなどの金属種によって導電率が異なるのは、この自由電子の密度や移動しやすさが物質ごとに異なるためです。

樹脂

通常、樹脂は電子が固定されているため電気を通さない「絶縁体」です。しかし、カーボンや金属粉などの導電性充填材(フィラー)を添加することで、導電性を持たせることが可能です。

樹脂内部でフィラー同士が接触し、電気の通り道となる経路(導電パス)が形成されるため、電気が流れるようになります。配合量を調整することで、帯電防止レベルから導電レベルまで抵抗値を制御できます。

図2 樹脂に導電性フィラーを添加し、導電パスを形成する過程_左:樹脂単体では電子は固定され、電気を通さない。|中央:導電性フィラーを添加すると電子移動の可能性が生じるが、接触不足で導電性は不十分。|右:フィラー同士が接触し、電子の通り道(導電パス)が形成され、電気が流れるようになる

図2 樹脂に導電性フィラーを添加し、導電パスを形成する過程

材料別の導電性ランキング

主な材料の導電性の傾向を、概ね高い順にまとめると次のとおりです。

図3 材質別の導電性ランキング(金属系、樹脂・ゴム系)

図3 材質別の導電性ランキング(金属系、樹脂・ゴム系)

表1 材質別の導電性まとめ(金属系)

順位 材料名 導電率(×10⁶・S/m) 体積抵抗率(×10-8Ω・m)
1 43.5~62.5 1.6~2.3
2 アルミニウム 32.3~33.3 3.0~3.1
3 モリブデン 17.9~19.2 5.2~5.6
4 タングステン 18.2 5.5
5 9.8~10.0 10
6 チタン 0.59~2.34 42.7~169.5
7 ステンレス 1.4 71.4

 

表2 材質別の導電性まとめ(樹脂・ゴム)

順位 材料名 導電率(S/m) 体積抵抗率(Ω・m)
1 カーボン(CNT) 10 10
2 シリコーンゴム
(導電性シリコーンゴム)
10-1 10-2
3 MCナイロン
(導電グレードMCナイロン)
10-4 1×104
4 PEEK
(導電性PEEK)
10-3 102
5 EPDM 10-6 106
6 ポリエチレン <10-16 >1016

※値は一般的な目安であり、合金の種類や材質、温度によって変動します。

金属は基本的に電気を通しやすい一方、樹脂やゴムは導電性グレードであっても抵抗値が高くなる傾向があり、主に静電気対策(ESD)や電磁波シールド用途で選定されます。

金属

金属は電気を通しやすい材料ですが、種類によって導電性能には差があります。代表的な金属の用途や特徴は以下のとおりです。

銀に次いで高い導電性と熱伝導性を持つ金属です。電気抵抗によるロスを最小限に抑えられるため、バスバー、コネクタ端子、配線材など、電気を流す機能部品には欠かせません。重く強度は控えめですが、電気的・熱的性能が要求される部位では、他の金属に代えがたい重要素材です。

アルミニウム

銅に次ぐ優れた導電性と、銅の約3分の1という軽さを兼ね備えた材料です。放熱性や加工性にも優れるため、電子機器のヒートシンクや導電用アース板、軽量化が求められる筐体などに広く利用されます。コストパフォーマンスが良く、電気的特性と機械的特性のバランスに優れた金属です。

ただし、耐食性を高めるアルマイト処理は「絶縁被膜」を形成するため、通電が必要な箇所には不向きです。接点部分にはアルマイトを施さないマスキング指定や、導電性を維持できる表面処理を選ぶ必要があります。

※絶縁被膜=電気を通さない(絶縁性を持つ)薄い膜のこと

安価で強度があり、機械装置のフレームやベースとして最も一般的です。導電性は銅には劣りますが、一般的な筐体アースとしては十分機能します。ただし錆びやすいため、通常は塗装やメッキが必要です。通電させる場合は、接点部分の塗膜除去や導電性メッキの選定が不可欠です。

チタン

「軽量・高強度・高耐食」という優れた機械的性質を持ちますが、導電性は金属の中で低い部類に入ります。電気を流す目的よりも、航空宇宙や医療分野など、過酷な環境下で強度と軽さが優先される構造材として採用されます。アース接続には接触面積を広くとる等の配慮が必要です。

ステンレス

鉄や銅に比べて電気抵抗が高く、大電流を流す用途には不向きですが、静電気を逃がす程度の導電性は十分に備えています。最大の特徴は優れた耐食性と強度です。錆びを嫌うクリーンな環境での静電気対策カバーや、シールド性を兼ねた外装部品として、半導体製造装置などで重宝されます。

導電性樹脂

通常の樹脂は絶縁体ですが、カーボンや金属粉などの導電性フィラーを添加することで導電機能を持たせたものです。以下に代表的な導電性樹脂の特徴を解説します。

カーボン

樹脂に導電性を持たせるための最も代表的な添加剤の総称です。カーボンブラックや炭素繊維などを配合することで、樹脂内部に導電経路を形成します。比較的安価に導電化できますが、素材の色が黒になる点や、使用環境によっては微細なカーボン粉の脱落に注意が必要です。

MCナイロン

機械的強度と耐摩耗性に優れた代表的なエンジニアリングプラスチックです。導電性グレードは、電子部品の搬送トレイ、治具、ローラーなど、静電気によるデバイス破壊やホコリの付着を防ぎたい用途で多用されます。金属部品に比べて軽量で、接触するワーク(製品)を傷つけにくいのも大きな利点です。

PEEK

高レベルの耐熱性、耐薬品性、強度を誇るスーパーエンジニアリングプラスチックです。導電性PEEKは、半導体製造装置やウェハキャリアなど、高温や薬液洗浄を伴う過酷な環境下で、かつ厳密な静電気対策が求められる重要部品に採用されます。高性能ですが、材料コストは高価です。

ポリエチレン

導電性超高分子量ポリエチレンは、一般的なポリエチレンよりも耐摩耗性と滑り特性に優れ、かつ電気を逃がせるため、粉体の搬送シュートやガイドレールなどに適しています。静電気による粉末の付着詰まりや、粉塵爆発のリスク低減に効果を発揮します。

導電性ゴム

ゴム材料に導電性カーボンや金属粉を配合し、弾力性と導電性を両立させた素材です。パッキンや電磁波シールドとして使用されます。

シリコーンゴム

耐熱・耐寒性に優れ、広い温度範囲で安定したゴム弾性を維持します。導電性シリコーンゴムは、電子機器の防水パッキン兼電磁波シールド材(EMIガスケット)としてケースの合わせ面に挟み込むほか、静電気対策が必要な耐熱クッション材としても利用されます。柔軟性が高く、密着性に優れているのが特徴です。

EPDM

耐候性、耐オゾン性、耐水性に極めて優れたゴム素材です。紫外線や雨風にさらされても劣化しにくいため、屋外機器のシール材やパッキンとして重宝されます。導電性グレードを選定することで、屋外環境においても静電気の蓄積を防止しつつ、長期にわたって防水・防塵性能を維持することが可能です。

導電性を向上させる表面処理

メッキ

メッキは基材の表面に金、銀、銅、ニッケルなどの金属皮膜を形成する処理です。絶縁体や導電性の低い金属であっても、表面を良導体で覆うことで電気抵抗を下げられます。

特に接点部品では、接触抵抗の低減だけでなく、耐食性や耐摩耗性の向上、ハンダ付け性の確保など、複合的な機能付与を目的に広く利用されます。コストと性能のバランスに応じ、ニッケルや錫、高機能な金メッキなどが使い分けられます。

導電性コーティング

導電性コーティングは、銀、銅、ニッケル、カーボンなどの導電性フィラーを含む塗料を、スプレー等で塗布する方法です。メッキ処理が難しい樹脂筐体の内側や、複雑な形状の部品に対して、比較的容易に導電性を付与できます。

主に電子機器のケース内部に塗布することで、電磁波ノイズを遮断する「電磁波シールド(EMI対策)」として多用されます。後加工で部分的に導電化したい場合にも適しています。

イオン注入

イオン注入は、真空中で加速させたイオンを材料表面に打ち込み、表層の原子配列や組成を改質する技術です。コーティングやメッキのように「上に膜を乗せる」のではなく、素材内部に導電層を形成するため、皮膜剥離のリスクがありません。

寸法変化をほとんど伴わずに導電性を持たせることができるため、半導体関連の超精密部品や、表面の平滑性を維持したい特殊な用途に適しています。

導電性の測定方法

導電性を正しく評価するには、材料の形状や想定される抵抗値のレンジに応じた適切な測定方法を選ぶ必要があります。評価基準はJIS規格(JIS K 7194、JIS K 6911など)やASTM規格によって定められており、測定器や環境(温度・湿度)によっても数値が変動するため注意が必要です。

体積抵抗率と表面抵抗率の計算式

導電性の指標には、材料内部の抵抗を示す「体積抵抗率」と、表面の抵抗を示す「表面抵抗率」があります。それぞれの基本的な算出の考え方は以下のとおりです。

体積抵抗率

体積抵抗率は、単位断面積、単位長さあたりの電気抵抗値です。材料固有の電気の通しにくさを表します。

  • 記号:ρV(ロー・ブイ)
  • 単位:Ω⋅cm (オーム・センチメートル)、Ω⋅m(オーム・メートル)
  • 計算式:ρV=R×S/L(R:測定された抵抗値[Ω]、S:断面積、L:長さ)

表面抵抗率

表面抵抗率は、材料表面の単位正方形あたりの電気抵抗値です。シート材や塗膜の評価に用いられます。

  • 記号:ρS(ロー・エス)
  • 単位:Ω/sq(オーム・スクエア)
  • 計算式:ρs=R×W/L(R:測定された抵抗値[Ω]、W:電極幅、L:電極間距離)

代表的な測定手法

導電性を測定する場合に、主に金属や、抵抗値が低い(導電性が高い)材料の測定に用いられるのが4端子法です。4本の針状電極を直線上に並べ、外側の2本で電流を流し、内側の2本で電圧を測定します。この方法の最大のメリットは、測定リード線や接触抵抗の影響を排除できるため、微小な抵抗値を高精度に測定できる点です。

一方で、主に絶縁体や、抵抗値が高い静電気対策材料の測定に用いられるのが、二重リング法です。主電極の周りをガード電極(リング状)で囲む構造をとり、表面を流れる漏れ電流を分離することで、「体積抵抗」と「表面抵抗」を区別して正確に測ることができます。

材料選定で注意すべきポイント

導電性を踏まえた材料選定時の主な注意点を、以下の3つの観点から整理します。

導電性・シールド性能の要件

まず、用途に対し過不足のない抵抗値かを確認します。静電気対策なら適度な抵抗、シールドなら低抵抗が求められますが、カタログ値だけでなく「接触抵抗」のバラつきにも注意が必要です。

表面の酸化被膜や粗さ、導電テープの粘着剤組成によって、実際の抵抗値は大きく変動します。実使用時の接触状態や経年変化を考慮し、十分なマージンを持たせた材料選定を行うことが、市場トラブル回避の第一歩です。

環境・信頼性の考慮

長期的な性能維持には環境耐性の確認が不可欠です。金属部品では、異種金属接触腐食(電食)による導電不良を防ぐため、電位差の考慮や絶縁対策が求められます。

また、導電性樹脂やゴムは、熱膨張や経年劣化で内部の導電経路が寸断され、抵抗値が上昇するリスクがあります。使用環境の温度・湿度、振動条件に対し、導電性が維持できる材料であるか、寿命評価を含めた慎重な選定が重要です。

適用プロセス・設計上の留意点

製造特性が導電性に与える影響も考慮します。繊維系フィラーを含む樹脂では、成形時の流れ方向によって導電率が変わる「異方性」が生じるため、ゲート位置等の検討が必要です。

また、一般に導電性フィラーが増えるほど材料は硬く脆くなり、衝撃強度が低下します。スナップフィットなど柔軟性が必要な箇所では破損リスクが高まるため、導電性と機械的強度のトレードオフを見極める必要があります。

メビーの部品加工事例

meviy(メビー)では、導電性が求められる金属部品や、静電気対策が必要な樹脂部品の加工にも幅広く対応しています。主な加工事例は以下のとおりです。

 

写真 メビーの部品加工事例|板金加工_C1020(無酸素銅) メビーの部品加工事例|切削角物_MCナイロン(スタンダード・青) メビーの部品加工事例|切削丸物_C3604-LCd(真鍮・黄銅)
サービス 板金加工 切削角物 切削丸物
材質・表面処理 C1020(無酸素銅)・なし MCナイロン(スタンダード・青)・なし C3604-LCd(真鍮・黄銅)・なし
サイズ W250 ×D100 ×H31.5(板厚1.5㎜) W35 × D35 × H6 Ø60×L40
出荷日 4日目 6日目 11日目
参考価格 5,005円 3,654円 14,118円

※表中は2025年12月時点の情報

まとめ

導電性は、製品の静電気対策や電磁波シールドを実現するために不可欠な特性です。この記事で押さえておきたいポイントは次のとおりです。

導電性とは?

  • 電気を流す能力を示す性質。単位は導電率(S/m)、逆数が抵抗率(Ω・m)。
  • 導電率が高いほど電気が流れやすく、抵抗率が低いほど導電性が高い。

導電性と帯電性の違い

  • 導電性:電気を流す能力
  • 帯電性:静電気が溜まりやすい性質

→ 導電性が高い材料は帯電しにくい。

材料別の特徴

  • 金属(銅・アルミ):高導電性、電気接点や配線に最適
  • 樹脂・ゴム(導電グレード):静電気対策やシールド用途に活用

導電性は桁違いに差があるため、用途に応じた選定が重要。

 

導電性を高める方法

  • 表面処理(メッキ・導電性コーティング・イオン注入)で抵抗値を低減

接触抵抗や酸化皮膜の影響も考慮すること。

材料選定の注意点

  • 必要な抵抗値を満たすか確認
  • 環境耐性(腐食・劣化)や加工性も評価

導電性と機械的強度のバランスを見極める。

測定と評価

  • JISやASTM規格に基づいた測定方法を選択

体積抵抗率と表面抵抗率の違いを理解して評価する。

 

導電性を正しく理解し、用途に最適な材料を選定することが、設計品質の向上につながります。

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