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溶融亜鉛メッキの設計ガイド|仕組み・JIS H 8641の膜厚記号・空気抜き穴まで機械設計者向けに解説

屋外に置く架台や水しぶきを浴びるカバーなど、「とにかく長く錆びないようにしたい」部品でよく使われる表面処理が、溶融亜鉛メッキです。

しかし、実際に図面で指示する際、「古い図面の『HDZ 55』はいまも使えるのか」「穴やねじはそのままで問題ないか」「メッキ済みの鋼板ではダメなのか」と迷う場面も多いはずです。

この記事では、2021年改正のJIS H 8641に基づく「HDZT」記号の選び方や図面への書き方、設計段階で防ぐべきトラブルのポイントを解説します。

溶融亜鉛メッキ

溶融亜鉛メッキとは?溶けた亜鉛に浸してつくる、厚くて剥がれにくい皮膜

溶融亜鉛メッキは、鋼材を高温で溶かした亜鉛の浴に浸し、表面に亜鉛皮膜をつくる表面処理です。亜鉛の融点は約420℃で、メッキ浴は実務上450℃前後(おおむね420〜480℃の範囲)で管理されます。部品を浴に漬け込む様子から現場では「ドブ漬け」とも呼ばれ、図面などではHDG(Hot Dip Galvanizing)と略記されることもあります。

電気亜鉛メッキ(ユニクロメッキ等の下地)との最大の違いは「皮膜の厚さ」です。電気亜鉛メッキが2〜25μm程度なのに対し、溶融亜鉛メッキは数〜100μmを超えます。この圧倒的な厚さが長期間の防錆を可能にしています。

電気メッキを含むメッキ全般の種類は「メッキの目的や種類、加工工程についてご紹介」、ユニクロとの関係は「ユニクロメッキとは?特長・クロムメッキとの違い」で詳しく解説しています。

皮膜の正体は「合金層」と「亜鉛層」の重なり

溶融亜鉛メッキの皮膜は一枚岩ではなく、鉄と亜鉛が反応した合金層と、浴の純亜鉛が固まった層の重なりで構成されています。

溶融亜鉛メッキ皮膜の断面構造(模式図)

溶融亜鉛メッキ皮膜の断面構造(模式図)

  • δ1(デルタワン)層:素地に最も近い緻密な合金層。鉄を6〜11%ほど含み、粘り強いのが特徴
  • ζ(ツェータ)層:柱状の結晶が並ぶ合金層で、鉄を約6%含む。結晶どうしの結合が比較的弱く、メッキ後に過酷な加工を受けるとここから亀裂が入ることがある
  • η(イータ)層:最表面の純亜鉛に近い層。軟らかく、変形しても破れにくい

塗料が乗っているだけの塗装と異なり、鉄と亜鉛が金属結合しているため剥がれにくいのが強みです。一方で「ζ層がもろい」という特性を知っておくと、「メッキ後の曲げは避ける」という設計上のセオリーにも納得がいきます。

錆を防ぐ2つの仕組み:バリアと犠牲防食

防錆効果は、2つの作用で成り立っています。

1つ目は、亜鉛が鋼を覆って酸素や水分を遮断する「バリア(保護皮膜)作用」です。亜鉛表面の酸化膜は緻密で、それ自体が腐食の進行を遅らせる保護膜になります。

2つ目は、亜鉛が鉄より先に溶け出して素地を守る「犠牲防食作用」です。小さな傷で鉄が露出しても、周囲の亜鉛が肩代わりして腐食を防ぐため、塗膜の下へ錆が広がる塗装よりも悪化しにくい特徴があります。

犠牲防食のイメージ。露出した鉄の代わりに周囲の亜鉛が溶け出す

犠牲防食のイメージ。露出した鉄の代わりに周囲の亜鉛が溶け出す

ただし、亜鉛は酸にもアルカリにも溶ける両性金属です。耐食性を発揮するのはおおむねpH6〜12.5の範囲とされ、強い酸やアルカリの薬液、洗浄液、クーラントがかかる環境には不向きな点に注意してください。

加工工程から見えてくる、設計に効く3つの事情

溶融亜鉛メッキは、前処理からメッキ、冷却までを「液に浸す」工程の連続で進めます。代表的な流れは次のとおりです。

溶融亜鉛メッキの代表的な工程

溶融亜鉛メッキの代表的な工程

工程 内容
脱脂 加温したアルカリ(苛性ソーダ)水溶液で油脂分を除去
酸洗 塩酸または硫酸の水溶液で、錆やスケール(黒皮などの酸化物)を除去
フラックス処理 塩化亜鉛アンモニウム水溶液に浸し、錆の再発を抑え、鉄と亜鉛の反応を促す膜をつくる
乾燥 亜鉛の飛散(スプラッシュ)を防ぐために水分を飛ばす
メッキ 溶融亜鉛の浴に浸す。材質や形状に合わせて条件を設定
冷却 温水で冷やし、合金層の成長を止める

 

この工程を設計者の目で読み解くと、図面に効いてくる事情が3つ浮かび上がります。

  1. 液が確実に入り、抜けなければならない

すべての液が部品内部へ行き渡り、引き上げ時にスムーズに排出される必要があります。密閉された中空部があると、残った水分が450℃前後の浴内で急激に膨張し、破裂事故を招く危険があります。

  1. 常温から450℃前後へ一気に加熱される

高温の浴に浸す瞬間、部材に大きな温度差が生じます。板厚差が極端な組み合わせや、曲げ・溶接の残留応力がある部材では、この熱衝撃がひずみや割れの引き金となります。

  1. 酸洗で水素が発生する

錆を落とす酸洗工程では水素が発生します。通常の鋼材では問題になりませんが、高張力鋼や調質鋼は水素の影響を強く受ける性質があるため、特殊な鋼種は業者への事前申告が欠かせません。

のちほど解説する「設計上のチェックポイント」は、ほぼすべてがこの3つに由来しています。

ほかの防錆手段とどう選び分けるか

防錆が目的なら、溶融亜鉛メッキ以外にも選択肢があります。特注部品でよく比較される手段を、設計者が気にする観点で並べました。

手段 皮膜の厚さ(目安) 切断面・穴の内面 寸法への影響 向いている部品
溶融亜鉛メッキ

(後メッキ)

35μm

(種類記号で指定)

全面に皮膜ができる 大きい

(はめあい・ねじは要配慮)

屋外の架台・フレーム、長期メンテナンスフリーにしたい部品
溶融亜鉛メッキ鋼板

(先メッキ)

材料規格の付着量による 皮膜なし

(素地が出る)

小さい 屋内〜半屋外のカバー、パネル、制御盤まわり
電気亜鉛メッキ+

クロメート

数μm〜25μm程度 全面に皮膜ができる 小さい 屋内装置のブラケット、ボルト類
塗装 塗装系により異なる 全面(つき回りに注意) 小〜中 色が必要な外装、補修前提の大型品
ステンレス材 皮膜なし(材料自体が耐食) — なし 衛生・薬液環境、美観が必要な部品

 

それぞれの詳しい比較は「防錆、耐食性に優れた金属・表面処理の選び方」や「いろいろある表面処理の種類と方法」も参考にしてください。

取り違えやすい「先メッキ」と「後メッキ」

溶融亜鉛メッキで最も誤解が起きやすいのが、「先メッキ」と「後メッキ」の区別です。

後メッキ(ドブ漬け)は、加工を終えた部品をまるごと浴に浸す方法です。一般に「溶融亜鉛メッキ」と言えばこちらを指し、穴の内側や切断面まで皮膜で覆われます。品質はJIS H 8641で規定されます。

一方、先メッキ(メッキ鋼板)は、メッキ処理済みの鋼板を仕入れて加工する方法です。後工程がないため納期とコストに優れますが、切断した端面や穴の内側には皮膜がなく鉄が露出します。

図面に「溶融亜鉛メッキ」とだけ書くと、加工側はどちらか迷います。後メッキならJIS H 8641と種類記号を、先メッキなら材料欄に鋼板規格を書くなど、明確に書き分けましょう。

板金部品では「先メッキ材」も有力な選択肢

板金部品では、この先メッキ材を選ぶやり方がよく使われます。

例えばメビーの板金加工(3D)では、溶融亜鉛メッキ鋼板を母材として手軽に選べます(表示名:SPCC(溶融亜鉛メッキ鋼板))。

電気亜鉛メッキ鋼板(SECC)よりメッキが厚く、高い耐食性が得られます。後処理が不要なため、標準3日目、最短1日目の出荷に対応しています。「切断面にはメッキがない」という前提を理解して使い分ければ、コストダウンに繋がる非常に現実的な選択肢です。鋼板の種類については「圧延鋼板とは?SPHCとSPCCの違い」もあわせてどうぞ。

JIS H 8641:2021の種類記号「HDZT」と膜厚の選び方

2021年改正で「付着量」から「膜厚」へ

溶融亜鉛メッキの品質を定めるJIS H 8641は、2021年に改正されました。最大の変更点は、皮膜の規定が「付着量(g/m²)」から「膜厚(μm)」に変わった点です。

これは国際規格ISO 1461:2009との整合を図るためです。旧規格の「1種」「2種」区分は廃止され、7種類に整理されました。記号も「HDZ」から「HDZT」に変わり、試験方法はJIS H 0401に集約されました。

 

種類の記号 膜厚 適用例(参考) 旧規格の記号

(付着量)

HDZT 35 35μm以上 厚さ5mm以下の素材、直径12mm以上のボルト・ナット、厚さ2.3mmを超える座金などで、遠心分離で亜鉛をたれ切りするもの、または機能上薄い膜厚が求められるもの HDZ A

(250g/m²以上)

HDZT 42 42μm以上 厚さ5mmを超える素材で、遠心分離でたれ切りするもの、または機能上薄い膜厚が求められるもの HDZ B

(300g/m²以上)

HDZT 49 49μm以上 厚さ1mm以上の素材、直径12mm以上のボルト・ナット、厚さ2.3mmを超える座金 HDZ 35

(350g/m²以上)

HDZT 56 56μm以上 厚さ2mm以上の素材 HDZ 40

(400g/m²以上)

HDZT 63 63μm以上 厚さ3mm以上の素材 HDZ 45

(450g/m²以上)

HDZT 70 70μm以上 厚さ5mm以上の素材 HDZ 50

(500g/m²以上)

HDZT 77 77μm以上 厚さ6mm以上の素材 HDZ 55

(550g/m²以上)

出典:一般社団法人 日本溶融亜鉛鍍金協会「溶融亜鉛めっきの規格」掲載のJIS H 8641表1・表2および解説表1をもとに編集部で作成。適用例の厚さ・直径は公称寸法。規定の詳細はJIS本体をご確認ください。

旧記号「HDZ 55」の図面を引き継ぐときの落とし穴

古い図面の記号を新記号へ読み替える際は、数字の見た目に注意が必要です。

旧記号「HDZ 55」は付着量550g/m²以上を意味し、新記号では「HDZT 77」に相当します。「55に近いから」と安易にHDZT 56を選ぶと、狙った皮膜より2割以上も薄くなってしまいます。換算には皮膜密度7.2g/cm³が使われ、1μmは約7.2g/m²に相当します。必ず対比表で確認してください。

膜厚は「板厚」と「使用環境」で決める

皮膜の厚さは鉄と亜鉛の反応時間に左右されます。熱容量の小さい薄板には厚い皮膜がつきにくいため、まずは表の適用例を参考に「板厚」から選べる範囲を絞り込みます。

そのうえで、使用環境から必要な寿命を見積もります。日本溶融亜鉛鍍金協会は、大気中での耐用年数の目安として次の考え方を示しています。

耐用年数の目安(大気中)

耐用年数(年)= 亜鉛付着量(g/m²)÷ 腐食速度(g/m²/年)× 0.9

例:HDZT 56(約400g/m²)を都市・工業地帯(腐食速度 8.0g/m²/年)で使う場合 → 400 ÷ 8.0 × 0.9 = 約45年

同じ部品を海岸地帯(腐食速度 19.6g/m²/年)で使う場合 → 400 ÷ 19.6 × 0.9 = 約18年

※腐食速度は国内の暴露試験に基づく平均値で、実際の環境や部位(雨だまり、結露、塩分の付着など)によって大きく変わります。あくまで種類を選ぶ際の目安としてお使いください。

同じ記号でも、海岸沿いでは寿命が半分以下になります。「どこに、何年置くか」を事前に確認し、適切な種類記号を選びましょう。

溶融亜鉛メッキの図面指示の方法

基本は「処理名+規格番号+種類記号」の3点セット

図面で指示するときは、表題欄か注記に、処理名・規格番号・種類記号の3つをそろえて書くのが基本です。

溶融亜鉛メッキ_図面への指示例

溶融亜鉛メッキ_図面への指示例

指示の書き方の例

表面処理:溶融亜鉛メッキ JIS H 8641 HDZT 56

※社内規格や取引先ごとの図面指定ルールがある場合は、その書式に従います。

必要に応じて追記する内容:処理範囲(全面/指定部以外)、寸法がメッキ前・メッキ後のどちらを示すか、メッキ後の追加工(タップ立て直しなど)の有無

※溶融亜鉛メッキは皮膜が厚く膜厚のバラつきも生じるため、メッキ前・後のどちらの寸法かを指定するのが推奨

記号だけを書いて規格番号を省くと、受け取った側が旧規格のHDZと混同するおそれがあります。古い図面の改訂時は、規格番号ごと書き直しましょう。

一部だけメッキしたくない「不メッキ」の指示

溶接予定の箇所や摩擦接合面など、メッキを付けたくない箇所がある場合は図面で明示します。

JIS B 0001(機械製図)では、特殊加工の範囲は「太い一点鎖線」で示すと定められています。該当面の外側に線を引き、寸法と「不メッキ」の注記を添えます。

不メッキ範囲の指示例(太い一点鎖線で範囲を示す)

不メッキ範囲の指示例(太い一点鎖線で範囲を示す)

不メッキは耐熱塗料でマスキングする方法が一般的ですが、メッキ後に塗料を削る手間がかかることも多く、細かい指定は事前の業者相談をおすすめします。

ねじ・はめあい部は「皮膜の厚さ」を寸法として扱う

溶融亜鉛メッキの皮膜は非常に厚くなります。HDZT 56なら片側で56μm以上、穴の直径で見れば皮膜2枚分、0.11mm以上も小さくなる計算です。

皮膜の厚さ(t)の分だけ穴径が小さくなる

皮膜の厚さ(t)の分だけ穴径が小さくなる

はめあい公差を指示した穴は、メッキ前の加工寸法を大きく補正しておくか、メッキ後に仕上げ加工するかを決めておく必要があります。

ねじはさらに厄介で、谷に亜鉛がたまり相手のねじが入りません。メッキ用ナットはあらかじめ大きめにねじを切る(オーバータップ)のが通例で、M8・M10で約0.7mmのオーバータップが必要だった実験例もあります。

溶接ナットがある部品は、「めねじ部はメッキ後タップ立て直しのこと」のように注記し、現場でのミスを防ぎましょう。

設計段階で決めておきたい9つのチェックポイント

溶融亜鉛メッキは、「脱脂→酸洗→フラックス処理→メッキ浴へ浸漬→冷却」という工程をすべて“液に浸して”行います。また、常温から450℃前後の浴へ一気に浸すため、急激な熱変化を伴います。

これらの加工工程(液・熱・水素)から生じる事情を踏まえ、図面を描く段階で手当てしておきたい9つのポイントを整理します。最初の3つは、後から修正しようとすると構造変更になりがちな重要項目です。

1. 中空部・袋部には空気抜き穴と亜鉛の流出入穴を

角パイプの枠や箱形の部品は、中に液が入らず、入っても抜けません。内部に閉じ込められた空気や水分が浴内で急激に膨張し、水蒸気爆発による破裂事故を起こす危険があります。また、亜鉛の通り道がないとメッキ不良の原因になります。

穴は、浸すときに亜鉛が下から入り空気が上から抜けるよう、端部近くの対角位置に設けるのが基本です。

角パイプ枠の空気抜き穴・亜鉛流出入穴の配置イメージ

角パイプ枠の空気抜き穴・亜鉛流出入穴の配置イメージ

必要な穴の大きさや数は寸法や吊り下げ方で変わるため、図面を早めに業者へ見せて相談しましょう。

また、板金部品のように吊り下げて処理する場合は「吊り穴」も必要です。例えばメビーの板金加工では、四隅や端面近くにφ4〜5.2mm程度の通し穴を設け、長手420mm以上または8kg超の部品では2か所以上設ける目安が示されています。

2. 溶接は全周・連続で。断続溶接は錆汁のもと

溶接を断続溶接(ピッチ溶接)にすると、すき間から酸洗液などがしみ込みます。メッキ後に内部からにじみ出し、赤い錆汁となって外観や性能を損ねます。溶接構造物では、全周を溶接して(シール溶接)すき間を閉じるのが原則です。

板を重ねて溶接する場合も、重なり部分の面積は400cm²以下が目安とされます。広い重ね合わせ面は、空気膨張や温度ムラで変形しやすく、溶接に亀裂が入るおそれがあるためです。

3. 板厚差と非対称な形状がひずみを生む

浸す瞬間の急加熱と冷却で、部材の中に大きな温度差が生まれます。薄い板と厚い板が混在すると、温まり方・冷え方の差が変形として残ります。組み合わせる板厚の比は「2.5以下」に抑えるのが一つの目安です。

左右対称な形状にする、突合せ溶接は両面から同条件で行う、といった工夫がひずみの抑制に効きます。複雑な溶接構造物のねじれはメッキ後に矯正するのが極めて困難です。平面度が厳しく求められる場合は、先メッキ材の採用なども検討しましょう。

4. 冷間曲げは板厚の3倍以上のRを目安に

冷間で強く曲げた部分は、残留応力とメッキ浴の熱が重なり割れを起こすことがあります。米国規格ASTM A143に基づき、冷間曲げ半径が「板厚の3倍以上」であれば、通常は性質が大きく変わらないとされています。曲げRの基本は「曲げ加工とは?種類・仕組み・設計上の注意点」も参考にしてください。

反対に、メッキした後の曲げは避けるのが無難です。皮膜のζ層などはもろく、きつい曲げ加工を行うと亀裂が生じます。

5. 高張力鋼・調質鋼は事前に申告する

一般的な鋼材であれば機械的性質が大きく変わることはありませんが、引張強さの高い高張力鋼や焼入れ焼戻しをした調質鋼は、酸洗で発生する水素ガスの影響(水素脆化)を受けやすいとされます。

材質情報は業者が工程(酸洗を軽くする等)を決める重要な手がかりです。特殊な鋼種を使う場合は事前に申告しましょう。熱処理品に組み合わせる場合は、熱処理温度(焼戻し温度)との兼ね合いも確認してください。

6. 鋼材の成分で「やけ」や厚膜が起きる

同じ条件でメッキしても、鋼材に含まれるケイ素(Si)などの量で仕上がりが変わります。特定の範囲を外れると反応が激しくなり、灰色でつやのない「やけ」や異常に厚い皮膜が生じやすくなります。

やけは見た目が違うだけで耐食性への影響はほとんどありません。外観部品として使う場合は、色ムラが出うることを関係者で共有しておくとトラブルを避けられます。代表的な鋼材の成分については「炭素鋼とは?特徴や種類・用途を解説」でも触れています。

7. 異なる材料・表面状態を一体でメッキしない

黒皮付きの材料と磨き材、厚さの極端に違う材料などを溶接で一体化した部品は、適した前処理やメッキ条件が異なるため均一な仕上がりを得にくくなります。

また、メッキ後にステンレス部品と接触させると、電位差により接触部付近で亜鉛の腐食が進みやすくなります。絶縁ワッシャを挟むなどの配慮が必要です。

8. メッキ後の溶接・切断は「補修」までをセットで考える

メッキ済みの部材を溶接すると、亜鉛が蒸発して白い煙が出ます。大量に吸い込むと「金属熱」を起こすため、局所排気が欠かせません。溶接部の亜鉛を除去してから溶接するのが基本です。

皮膜を失った部分は、高濃度亜鉛末塗料(ジンクリッチペイント)で補修するのが確実です。強度部材の接合なら、「メッキ後はボルト接合」とするほうが品質も安定します。

9. 塗装を重ねるなら塗料選びが肝心

溶融亜鉛メッキはそのまま使うのが基本ですが、上から塗装することもあります。適切に組み合わせると、メッキ単独と塗装単独の耐用年数を足した値の1.6〜2.3倍が期待できるという報告もあります。

ただし亜鉛は活性な金属で、鉄と同じ感覚で塗ると塗膜が剥がれることがあります。油性系は避け、エポキシ系などを下塗りに選ぶのが一般的です。塗料の性質は「アルキド樹脂の特徴と用途」でも解説しています。

溶融亜鉛メッキに関するよくある質問

  1. 溶融亜鉛メッキとユニクロ(電気亜鉛メッキ)は、どちらが錆びにくいですか?

一般に溶融亜鉛メッキのほうが皮膜がはるかに厚く、屋外で長期間使う用途に向いています。ユニクロなどの電気亜鉛メッキは皮膜が薄く寸法への影響が小さいため、屋内装置の部品やボルト類に向いています。必要な寿命と寸法精度の両面から選びましょう。

  1. 溶融亜鉛メッキに色をつけることはできますか?

皮膜そのものを真鍮のように着色する方法は、現状では一般的ではありません。色が必要な場合は、亜鉛メッキ面に適した塗料で上塗りするのが現実的で、耐久性の面でも有利です。

  1. 溶融亜鉛メッキをした部品を後から溶接できますか?

可能ですが、亜鉛の蒸発による煙への対策と、溶接部まわりの皮膜補修が必要です。溶接部の亜鉛を除去してから溶接し、高濃度亜鉛末塗料で補修するのが基本です。強度部材なら、メッキ後はボルト接合とする設計も検討してください。

  1. 旧記号のHDZ 55は、いまも図面に書いてよいですか?

JIS H 8641は2021年に改正され、現行の種類記号はHDZTです。HDZ 55は付着量550g/m²以上を意味し、膜厚ではHDZT 77に相当します。取引先の規格で旧記号が指定されている場合を除き、現行記号に書き改めるのがおすすめです。

  1. 溶融亜鉛メッキ鋼板を使えば、後からメッキしなくても同じ耐食性が得られますか?

平らな面については高い耐食性が得られますが、切断面や穴の内側、溶接部には皮膜がありません。端面の錆を許容できない部品や、屋外で常に濡れる部品では、加工後に浸す溶融亜鉛メッキ(後メッキ)を選ぶほうが確実です。

まとめ

溶融亜鉛メッキは、圧倒的な厚さと犠牲防食の二段構えで、鋼材を長期にわたって錆から守る表面処理です。一方で、「液に浸す」「一気に加熱する」「酸で洗う」という加工工程の性質上、穴あけ、溶接方法、板厚の組み合わせ、ねじの寸法に至るまで、設計段階での配慮が欠かせません。

図面を指示する際は、処理名・JIS H 8641・HDZT記号の3点をそろえ、旧記号(HDZ)を引き継ぐときは「付着量から新記号へ正しく読み替える」ことが重要です。

そして、「本当に後メッキ(ドブ漬け)が必要か」「メッキ鋼板(先メッキ)で十分ではないか」を環境から逆算して判断することが、トラブルを防ぎコストを最適化する近道となります。

板金部品において「メッキ鋼板」の活用を検討される場合は、メビーの板金加工でSPCC(溶融亜鉛メッキ鋼板)を手軽に選択できます。3D CADデータをアップロードするだけで、見積もりから出荷日の確認までスムーズに行えますので、設計・調達の効率化にぜひご活用ください。

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