ものづくり基礎知識 金属・樹脂の材料

アルミA6061とは?その特徴や類似素材との違いを解説

A6061は6000番台のアルミニウム合金で、工業製品や建材、家具などに使われる代表的な素材です。一般の家庭でもさまざまな製品を見ることができます。
アルミニウム合金は含有されている物質が違っていたり、強度や耐食性など特性の違いがあったりすることからいくつかの種類があります。アルミニウム合金であればどの素材を使ってもいいというわけではなく、それぞれに特徴があり、用途に応じて最適な素材を選択することが大切です。
今回の記事では、A6061のメリットやデメリット、用途や他のアルミ素材との違いについて解説します。

アルミA6061とは?その特徴や類似素材との違いを解説

A6061とは?

アルミニウム合金は1000番台から8000番台の規格があります。A6061はアルミニウム合金の6000番台で、マグネシウムとシリコンを含んだ素材です。
6000番台の材料として、A6063もまた有名で、押し出し材としてよく使われています。

A6061は優れた耐食性を持っています。一方で、他のアルミと比べても強度があまり高くありません。
そのため強度や硬度をあげるために、熱処理を実施する場合があります。

A6061は、丸棒や板材として多く流通しています。丸棒であれば切削加工などを行ったり、板材であれば抜き加工や曲げ加工を行なったりもします。
耐食性に優れているため、自動車関連の部品などによく使われています。
一方で溶接に適していない素材なので、締結方法には注意が必要です。一般的には、ネジやボルト、リベットなどで締結します。溶接を全くしないというわけではありませんが、強度を出しづらいためあまり使われないでしょう。

A6061の特徴

A6061の特徴をメリットとデメリットに分けて解説します。

A6061のメリット

耐食性に優れている

おもなメリットは耐食性に優れている点です。錆びたり腐食したりしにくいため使用環境が過酷であっても使うことができます。
アルミは酸素と結合しやすいため、表面に酸化被膜を形成します。この皮膜が腐食を防ぐ役割をもちますが、A6061はマグネシウムが添加されているため、この性質がさらに強化され、より優れた耐食性を持っているのです。

T6処理によって高強度にできる

熱処理をしていないと強度が低い素材です。しかしながら、T6処理によってA2017やA2024などの2000番台のアルミニウム合金に次ぐ強度を持ちます。

T6処理とは、代表的なアルミニウムの熱処理法です。溶体化処理をした後に焼入れをし、時効化処理によって強度を上げます。溶体化と時効化処理では温度が異なるので2台の炉を使います。
T6処理によってA6061内の銅とマグネシウムを析出させ、強度を上げることができます。
熱処理をしていないA6061の引張り強さは125N/mm^2程度ですが、T6処理をすると310N/mm^2程度に向上します。

鍛造性に優れる

鍛造とは、熱した金属に圧力を加えて金型の形に成型する加工です。A6061はアルミ合金の中でも鍛造しやすい素材です。
自動車の部品で衝撃や強度が加わるような構造部品などに使われます。切削と違い、大量生産に向いています。

A6061のデメリット

T6処理をしないと強度が低い

T6処理をしなければ、A6061はアルミニウム合金の中では強度が低い素材です。あまり強度を必要としない部品に使うなど、用途に向いているかどうか考慮しなければなりません。
また、T6処理をするためには熱をかける炉などの設備が必要です。したがって、設備導入のためのコストがかかります。さらに、熱処理の工程が増えるのでその分、加工コストもあがることになります。

溶接性が劣る

A6061は溶接継手強度が低く、溶接した部位に高い強度を求めることができません。したがって、溶接の用途で用いる場合はA5052などを用います。他の部品と締結する場合は、ネジやボルト、リベットなどを用いる必要があります。その分スペースが必要となるため、設計をする際には考慮に入れておかなければなりません。

表面が傷つきやすい

一般的にアルミニウムは軟らかい材料なので、表面に傷がつきやすいです。例えば、何か他のものとぶつけたり、保管棚や箱から取り出すときに擦ってしまって傷つけたりします。A6061の硬さは30HB程度であり、汎用アルミニウム合金のA5052の47HBと比べても少し劣っています。そのため傷で表面の酸化被膜が破壊されると腐食が進みやすくなります。

A6061の用途

A6061は用途の幅が広く、家具など家庭でも見かける素材です。そのおもな用途を紹介します。

建材、機械材料、陸上構造物

A6061はアルミニウム合金の中でも比較的耐食性に優れているため、建材や陸上構造物など屋外に設置される部品としてよく使われます。

船舶、車両部品

A6061は船舶や車両部品にも使われています。耐食性に優れているため、腐食に強い素材を必要とする海の塩水にさらされやすい船舶や、雨風にさらされる車両用の部品はと相性がいい素材です。

配管

A6061は配管の素材としても使われます。

A6061と他のアルミニウム素材との違い

アルミニウム合金には、さまざまな種類があります。アルミニウム合金は1000番台から8000番台まであり、それぞれに特徴があります。

A2017とA6061の違い

A2017はA6061と同じように溶接性が低いので、締結はネジやボルト、リベットなどを使う必要があります。

A6061はT6処理をすることによって強度を高くできますが、A2017はさらに高い強度です。したがって、強度が必要で耐食性が必要ない場合はA2017を使うことをおすすめします。
一方で、ある程度の強度が必要で、さらに耐食性も求める場合はA6061のT6処理が適しています。

A5052とA6061の違い

A5052はA6061に比べて耐食性に劣っています。ですが、A5052もアルミニウム合金の中では耐食性が高いほうです。
強度に関しては、A6061のT6処理のほうが優れていて、A5052は劣っています。

A6061に対してA5052が優れている点は溶接性です。A6061は溶接継手の強度が低いので、溶接が必要な部品にはA5052を使います。
強度、耐食性を優先する場合はA6061、そこそこの強度と溶接が必要な場合にはA5052が適しています。

A6063とA6061の違い

A6063はA6061に比べて、強度は低いですが押し出し加工性、耐食性や表面処理性に優れています。
パイプやアングル、角棒などはA6063にしかありません。

まとめ

A6061は耐食性に優れており、熱処理によって強度を高くできるアルミニウム合金です。一方で溶接性に劣っているというデメリットもあります。
どの特性を必要とするかによって、適切なアルミニウム合金が変わってきます。A6061や他の素材の特徴を理解して、適切な素材を選択するようにしましょう。